千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第200号
配信日時:2021/10/01 08:30
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  千葉県立中央博物館 分館海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第200号
                          2021年10月1日発行

                 千葉県立中央博物館 分館海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
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 ようやく秋らしい気候となってきました。
 海の博物館は、新型コロナウイルス感染防止対策を講じた上で通常どおり開
館しています。
 入館時には体温計測、手指消毒、来館者情報記入等にご協力ください。
また展示室では間隔を空けてご観覧ください

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│目次
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★メールマガジンが200号
★展示室から-新たに発見された新種のノリを展示中-
★巡回展-九十九里浜の自然誌-開催中
★研究員ノート アゴハゼとドロメ
         -海の博物館前の磯で見られるそっくりな魚-
★海の博物館周辺の情報

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│★メールマガジンが200号
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 海の博物館から毎月みな様にお届けするメールマガジン『海からのたより』
が、今号で200号目となりました。
 2005年(平成16年)3月に第1号が発信されてからおよそ16年半になります。
 これからも皆様に喜んでいただけるような記事づくりを目指しながら、引き
続きお届けして参ります。


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│★展示室から-新たに発見された新種のノリを展示中-
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 海の博物館研究員により発見された新種のノリを展示中です。
常設展示室の一角には、このほど千葉県で発見された新種のセンジュアマノリ
の実物標本が展示されています。
 その名前の由来は…。どうぞ展示室で実物をご覧ください。

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│★巡回展-九十九里浜の自然誌-開催中
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 期間:10月24日(日)まで

 県立中央博物館巡回展として、「九十九里浜のなりたち」「九十九里浜の植
物」「九十九里浜の鳥類」「九十九里浜の貝類」など九十九里浜の自然観察に
役立つ情報を8枚のパネルにより紹介しています。
 期間中にぜひご覧ください。
 

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│★研究員ノート  アゴハゼとドロメ
          -海の博物館前の磯で見られるそっくりな魚-
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 海の博物館の前にある海には広い磯があり、大潮の時に潮がひくと岸から
200 m以上先まで歩いていくことができます。われわれ海の博物館の研究員は
この磯で生物相調査や生態調査を継続的に行っていて、それらの調査によって
明らかになったことをベースにして、一般向けの観察会や学校団体向けの実習
などを行っています。しかしながら、新型コロナウィルス感染症対策のため、
今年度の観察会は定員の削減、時間の短縮、観察道具の貸出見合わせなど、さ
まざまな制限のある中での開催となってしまいました。また、観察会のタイト
ルも「海の生きもの観察ツアー」という統一した名称で実施しました。

 タイトルは同じでも、観察会の進め方や紹介する磯の生きものは、研究員の
専門分野によって若干異なっています。私の場合、専門は魚類生態学ですので、
磯で見られる魚やその暮らしを中心に紹介することがよくあります。観察会の
初めの方では、磯に出てすぐの場所にできる潮だまりをのぞいて、その中にい
る魚の紹介を行っています。その場所で、いつもほぼ確実に見られる魚のひと
つがアゴハゼです。アゴハゼは全長約8cm程度の小型のハゼの仲間で、北海道
から九州にかけて岩礁性の潮だまりでごく普通に見られます。典型的な体色は
灰褐色ですが、周りの環境に溶け込むように変化します。このため、アゴハゼ
が潮だまりにたくさんいても、よく目を凝らして探さないと見落としてしまう
かもしれません。

 南房総ではアゴハゼは1月から5月にかけて繁殖していることが知られていま
す。オスは潮間帯の転石の下で営巣して、そこへメスを誘って石の表面に卵を
産ませていきます。卵は長径約5 mm、短径約1.2 mmの楕円形で、およそ500粒
の卵が粘着性のある糸で石の表面にびっしりと産み付けられます。
生まれたアゴハゼの子供は、春先から初夏にかけて磯の潮間帯で大量に出現し
ます。ふ化してから全長20 mmくらいまでの子供は浮遊生活をしており、水面
近くを数十~数百匹の群れで泳いているのがよく見られます。こうしたアゴハ
ゼを捕まえるのは非常に簡単で、たも網でひとすくいすれば一度にたくさん入
ります。ただし、アゴハゼの子供は非常に細い体をしているので、網の目が細
かくないと全て抜け出してしまうかもしれません。すくったアゴハゼを容器に
移して間近に観察すると、まだ体がほとんど透明であることがわかります。
 全長20 mmを超える頃になると、浮遊生活をおくっていた子供は次第に海底
での生活に移行していきます。この現象を、着底といいます。着底した子供の
体色は次第に黒っぽくなり、全長35 mm位に成長すると透明な部分はほぼなく
なってしまいます。着底した子供では色素胞が発達して、周りの環境に合わせ
て体色や模様を変えられるようになるのです。

 さて、海の博物館の前の磯には、アゴハゼにそっくりなハゼが生息していま
す。それは、ドロメです。かつてはアゴハゼがドロメの未成魚と考えられてい
た時代もあったほどです。岸からすぐの場所にできる潮だまりで見られるのは
ほとんどアゴハゼですが、もう少し沖の方にできる潮だまりにはドロメも混じ
っています。これら2種は非常によく似ていて見分けるのが難しそうですが、
以下の点に着目すると比較的容易に区別がつきます。

 まず、着底前の浮遊生活を行っている子供の場合、尾びれの付け根付近に黒
い斑紋がありますが、ドロメではその斑紋が黄色く縁取られているのが特徴で
す。着底した後の個体では、ドロメの尾びれの後縁は白っぽく縁取られている
こと、アゴハゼの胸ひれや尾びれには黒い点列が見られることなどで区別する
ことが可能です。とは言え、磯で見つけて即座にアゴハゼかドロメか区別する
には多少慣れが必要で、外見だけではどちらか判断に悩むこともよくあります。
磯に出て、似た魚を見分けていくのも磯観察の楽しみの一つになるかもしれま
せん。海の生きものをより詳しく観察するために、当館から発行している小図
鑑「磯の魚を観察しよう」のPDFファイルを以下のページからダウンロードで
きますので、参考にして下さい。
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/UMIHAKU/contents/1521849666827/simple
/note9.pdf

(主任上席研究員 川瀬裕司)

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│★海の博物館周辺の情報
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【観光情報】

・かつうら海中公園海中展望塔
  海の博物館の真ん前にあります。水深8mの海中展望室から季節ごとの魚や
 海底の様子を楽しむことができます。
  詳しくは勝浦海中展望塔のホームページをご覧ください。
   http://www.katsuura.org/index.php 

・勝浦朝市は通常どおり(6時半頃~11時頃・水曜休み)開催されています。
  詳しくは勝浦市観光協会のホームページをご覧ください。
   https://www.katsuura-kankou.net/asaichitop/

【施設情報】

  勝浦海中公園無料休憩所は、施設取り壊しのため利用できません。

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今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうござ
いました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
    http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU
お問い合わせはこちらへ umihaku@chiba-muse.or.jp
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