千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第202号
配信日時:2021/12/01 08:30
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  千葉県立中央博物館 分館海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第202号
                          2021年12月1日発行

                 千葉県立中央博物館 分館海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
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  海の博物館は、新型コロナウイルス感染防止対策を講じた上で通常どおり
 開館しています。
  入館時には体温計測、手指消毒、来館者情報記入等にご協力ください。
 また展示室では間隔を空けてご観覧ください

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│目次
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★年末年始の開館・臨時休館
★令和3(2021)年度12月から3月の主催行事のご案内
★研究員ノート -房総から新種のノリを発見!-
★海の博物館周辺の情報

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│★年末年始の開館・臨時休館
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 年末の開館:12月26日(日)までは通常開館
 年始の開館:1月5日(水)から通常開館
 臨時休館:12月14日(火)・15日(水)は館内メンテナンスのため臨時休館
   ※有料駐車場は、年末年始も営業しています

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│★令和3(2021)年度12月から3月の主催行事のご案内
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            ※1月は海の博物館が主催する行事はありません

【講座】
 研究員がスライドやビデオ等を使って、海の生き物や自然を紹介する行事
 です。
 
 ●「海の博物館の魚類標本が出来るまで」  講師 海の博物館研究員
 海の博物館には約15,000点の魚類標本が収蔵されています。これらの標本が
 どのように収蔵され、標本として整理・保管されていくのかを紹介するとと
 もに、その活用のされ方や意義について解説します。
 ・開催日時:12/11(土)13:30~14:30
     ※申込期限を過ぎていますが、定員になり次第受付を締め切ります             
 ・対象:中学生以上
 ・定員:8名

 ●「アサクサノリの話」  講師 海の博物館研究員
 古く江戸時代から養殖され、乾海苔の代名詞として有名でありながら、今や
 絶滅危惧種となっているアサクサノリという生きものについて紹介します。
 ・開催日時:2/26(土)13:30~15:00
 ・対象:中学生以上
 ・定員:8名

 ●「勝浦の甲殻類」    講師 海の博物館研究員
 2月26日(土)から始まるマリンサイエンスギャラリー「千葉県エビ・カニ
 大集合!」に関連した講座です。
 房総丘陵から勝浦海底谷まで、これまでに勝浦の川と海から収集された甲殻
 類について紹介します。
 ・開催日時:3/12(土)13:30~14:30
 ・対象:中学生以上
 ・定員:8名


≪申込方法≫
 行事ごとに、以下を明記の上、開催日2週間前必着で、海の博物館あてに
ハガキ・FAX・電子メールのいずれかでお申し込み下さい。
  定員を越えた場合は抽選となります。抽選結果はご連絡いたします。
   ※博物館ロビー受付でもお申し込みいただけます。

・記入事項(希望者全員の情報を記入)
  1.氏  名
  2.住  所(郵便番号も)
  3.電話番号
  4.年  令
  5.ご希望の行事名と日時

≪お申し込み・お問い合わせ先≫
  千葉県立中央博物館分館海の博物館
   〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
   電話 0470-76-1133  FAX 0470-76-1821
   電子メール umihaku@chiba-muse.or.jp


※新型コロナウイルスの感染状況によっては、中止となる場合があります。


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│★研究員ノート  -房総から新種のノリを発見!-
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 本メールマガジン200号でも紹介されましたが、房総で発見されたノリの新
種の標本を展示中です。その名も「センジュアマノリ」。どのようなノリか、
その発見の経緯も含めて紹介します。

 私は、海藻の中でも四角く黒い「海苔」の原料となる紅藻のアマノリ類(以
下ノリ)を専門にしています。「名前が"ノリオ"だから・・」というのは、定
番にしている自己紹介の一節ですが、それはさておき、房総半島で見られるノ
リの種類や分布、その生活などについて調査・研究してきています。ノリは、
食用となる葉っぱみたいな体(葉状体)の他に、カビのような糸状の小さな体
(糸状体)になっている時期があり、この糸状体は、室内で何年も培養(飼育)
しておくことができます。そのため、海の博物館開館当時から、採集したノリ
から胞子をとって糸状体にし、それを培養し、生きたまま保存しておくという
作業を行っています。糸状体を用いてDNA解析を行うこともできますし、そこ
から胞子をとって、新たな葉状体を育てることもできますので、私自身だけで
なく、他の研究者にも糸状体を提供することで、多くの研究の材料として用い
られてきています。今回の新種センジュアマノリの発見では、培養している糸
状体がとても大きな役割を果たしました。

 今回の発見の端緒は、山口県下関市にある国立研究法人水産研究・教育機構
水産大学校の阿部真比古先生が、下関であるノリを採集したことにあります。
阿部先生がそのノリの葉状体の成長過程を調べたところ、普通ノリは1枚の葉っ
ぱのような葉状体に成長したら、そのまま成熟して枯れていくのですが、その
ノリでは1枚の細長い葉の根元のところから新たな芽が出て、その芽も1枚の細
長い葉に成長していきます。そして、その後も根元から次々と新たな芽が出て
きて、良く成長すると根元から10枚くらいの細長い葉の出た体になったのです。
阿部先生は、そのような成長過程を持つノリは他にあるのか?と疑問を持たれ
2015年に私に問い合わせてきました。私はすぐに、そのようなノリは他には知
られていない、だから新種である可能性が非常に高い、とお答えしました。さ
らに、DNAを調べても既知の種類とは一致しないとのことだったので、DNAで見
ても新種と判断できました。こうして、阿部先生と私の、そのノリ=センジュ
アマノリを新種として発表するための共同研究が始まったのです。なお、セン
ジュアマノリ(千手甘海苔)という名は、根元からたくさんの細長い葉が出て
いる様子が、さながら体からたくさんの手が出ているように見えることから名
付けたものです。

 ウップルイノリ(十六島海苔)という、冬の日本海側で岩海苔として採取さ
れる、有名なノリがあります。センジュアマノリは、根元から新たな芽が出て
くるという点を除くと、ウップルイノリととてもよく似ています。そこで、こ
れまで日本各地で採集して、ウップルイノリと同定したノリからとれた糸状体
のDNAを調べて、センジュアマノリと同じか違うかを調べました。私が培養し
ている糸状体の他、国立研究法人水産研究・教育機構 西海区水産研究所が所
蔵している糸状体等も調べたところ、千葉県太平洋側のいすみ市で2002年に採
集した「ウップルイノリ」と、銚子市で採集した「ウップルイノリ」が、セン
ジュアマノリと同じ、という結果が出ました。しかしその他の東北や北海道、
日本海側で採集された全ての「ウップルイノリ」はセンジュアマノリとは異な
っていました。こうして、なぜだかは不明ですが、下関と千葉県太平洋側のみ
でセンジュアマノリが生えていることが確認されました。千葉県のセンジュア
マノリは糸状体を培養しておいたことで、ウップルイノリではなくセンジュア
マノリだということがわかったのです。ノリを採集して、そこから糸状体を培
養し、それを保存しておくという地道な作業が今回の成果につながりました。

 考えてみると、2002年にいすみ市で採集した「ウップルイノリ」は、確かに
根元のところで2枚から3枚くらいの細長い葉がくっついた形をしているものが
あったと記憶していますが、当時、私は、それは「2つもしくは3つの胞子が隣
あって岩などにくっつき、それぞれの胞子が成長して、根元のところでくっつ
き合ったまま成長してできた2個体もしくは3個体のウップルイノリ」と勝手に
解釈し、わざわざ1枚1枚をバラバラにして、標本にしていたのです。まさかセ
ンジュアマノリのような成長過程を持つノリがあるとは当時思いもしませんで
したが、今から思えば、ノリの研究者として何と探究心のない行動だったのか
と赤面の思いです。ひとつ言い訳をさせてもらえば、センジュアマノリでも条
件によって2枚目以降の葉が育ってこない場合もあるようで、自生している場
所には、1枚葉の体も結構たくさん生えています。そのような体は既知の種類
であるウップルイノリと形態的には違いが見られませんので、ウップルイノリ
と信じて疑わなかったのです。

 その後、千葉県太平洋沿岸で調査を続けたところ、勝浦市から銚子市まで、
断続的にセンジュアマノリが生えていることが確認されました。中でもいすみ
市の海岸では、たくさんのセンジュアマノリが採集できました。一方、本当の
ウップルイノリは銚子市で見つかっただけで、それより南の地域では見つかり
ませんでした。また、山口県下関市では、2014年に採集されてから、センジュ
アマノリが出現しなくなってしまったとのことで、その後、葉状体が見つかっ
ていません。ということで、現在、センジュアマノリが確実に生えている場所
は、千葉県太平洋沿岸の勝浦市から銚子市の間のみとなっています。現在確認
される生育地が千葉県沿岸のみという、珍しいノリが見つかったことになりま
す。

 センジュアマノリは、いすみ市では地元の漁業者によって採取され、自家消
費されている地域があります。私はまだ食べたことがないので、ぜひ食べてみ
たいところですが、天然の岩海苔なので、香りが強く歯ごたえのあるノリでは
ないかと推測されます。また新種発表した後、早速、東京海洋大学のノリ養殖
を研究されている先生が培養実験をして、現在養殖されている種類のノリより
も高温に強い特性があることを明らかにしています。もしかしたら、将来、養
殖ノリとして使用できるかもしれません。現在、世界で千葉にしか確認されな
いセンジュアマノリ。千葉の特産物として利用されることを期待しています。

 現在、展示室でセンジュアマノリを展示中です。また、海の博物館ホームペ
ージでも紹介しています。ぜひご覧ください。

                                         (主任上席研究員 菊地則雄)

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│★海の博物館周辺の情報
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【観光情報】

・かつうら海中公園海中展望塔
  海の博物館の真ん前にあります。水深8mの海中展望室から季節ごとの魚や
 海底の様子を楽しむことができます。
  詳しくは勝浦海中展望塔のホームページをご覧ください。
   http://www.katsuura.org/index.php 

・勝浦朝市は通常どおり(6時半頃~11時頃・水曜休み)開催されています。
  詳しくは勝浦市観光協会のホームページをご覧ください。
   https://www.katsuura-kankou.net/asaichitop/


【施設情報】

・勝浦市郷土資料室がオープン
  勝浦市立図書館の中に開設されました。郷土の歴史や文化財などをそれ
 ぞれのテーマを設けて展示紹介しています。
  休室日:月曜日・祝日(図書館の休館日と同じ)  
  問合せ先:勝浦市教育委員会生涯学習課生涯学習係
       0470-73-6665
  
・勝浦海中公園無料休憩所
  施設取り壊しのため利用できません。

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今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうござ
いました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
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