千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第203号
配信日時:2022/01/01 08:30
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  千葉県立中央博物館 分館海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第203号
                          2022年1月1日発行

                 千葉県立中央博物館 分館海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
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 新年あけましておめでとうございます。

  海の博物館は、新型コロナウイルス感染防止対策を講じた上で1月5日(水)
 から通常どおり開館しています。
  入館時には体温計測、手指消毒、来館者情報記入等にご協力ください。
 また展示室では間隔を空けてご観覧ください

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│目次
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★年始の開館
★1月から3月の主催行事のご案内
★研究員ノート -ヨウサイイソギンチャクの再発見と再記載の意義-
★海の博物館周辺の情報

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│★年始の開館
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 年始の開館:1月5日(水)から通常開館
   ※有料駐車場は、年末年始も営業しています

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│★1月から3月の主催行事のご案内
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            ※1月は海の博物館が主催する行事はありません
【展覧会】
 ●令和3年度マリンサイエンスギャラリー「千葉県エビ・カニ大集合!」    
 房総半島の丘陵地帯から外房の深海まで、千葉県にはさまざまなエビやカニ
 (十脚甲殻類)が生息しています。その顔ぶれは、私たちの食卓に上るクル
 マエビや子供のころに遊び相手となったサワガニなどの親しみのある種類ば
 かりでなく、千葉県の海で発見された学術的価値の高い希少種など、多岐に
 わたります。この展示では、本県に分布するエビやカニの多様性をとおして
 みなさまに千葉県の自然の豊かさをお伝えします。
 ・会期:2月26日(土)~5月8日(日)


【講座】
 研究員がスライドやビデオ等を使って、海の生き物や自然を紹介する行事
 です。
 
 ●「アサクサノリの話」  講師 海の博物館研究員
 古く江戸時代から養殖され、乾海苔の代名詞として有名でありながら、今や
 絶滅危惧種となっているアサクサノリという生きものについて紹介します。
 ・開催日時:2/26(土)13:30~15:00
 ・対象:中学生以上
 ・定員:8名

 ●「勝浦の甲殻類」    講師 海の博物館研究員
 2月26日(土)から始まるマリンサイエンスギャラリー「千葉県エビ・カニ
 大集合!」に関連した講座です。
 房総丘陵から勝浦海底谷まで、これまでに勝浦の川と海から収集された甲殻
 類について紹介します。
 ・開催日時:3/12(土)13:30~14:30
 ・対象:中学生以上
 ・定員:8名


≪講座参加方法≫
 行事ごとに、以下を明記の上、開催日2週間前必着で、海の博物館あてに
ハガキ・FAX・電子メールのいずれかでお申し込み下さい。
  定員を越えた場合は抽選となります。抽選結果はご連絡いたします。
   ※博物館ロビー受付でもお申し込みいただけます。

・記入事項(希望者全員の情報を記入)
  1.氏  名
  2.住  所(郵便番号も)
  3.電話番号
  4.年  令
  5.ご希望の行事名と日時

≪お申し込み・お問い合わせ先≫
  千葉県立中央博物館分館海の博物館
   〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
   電話 0470-76-1133  FAX 0470-76-1821
   電子メール umihaku@chiba-muse.or.jp


※新型コロナウイルスの感染状況によっては、中止となる場合があります。


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│★研究員ノート  -ヨウサイイソギンチャクの再発見と再記載の意義-
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 日本産のイソギンチャク類の分類学的研究はあまり進んでおらず、正式に論
文として公表されている種が70種程度、そのほか図鑑等で写真が紹介されてい
るものの、その正体が不確かなものが60種ほどいます。またおそらく未記載種
と思わるものを含めてこれから研究が進むとおそらく約200種類程度になると
考えています。ただし、これまでに報告されている種のうち、1800年代から19
00年代のはじめまでに新種として記載された種については、当時発表された論
文には外形のスケッチや写真がなかったり、詳しい形態形質が示されていなか
ったりして、これらの多くが現在、一体どの種を指すのかよくわからなくなっ
ています。このため、磯で採集したイソギンチャクが新種なのかそれとも古い
時代に報告された種に当てはまるのかという判断ができず、日本産のイソギン
チャク類相の解明を困難にしています。

 このような問題を解決するため、私は科学研究費の助成を受けてこれまで新
種として発表された際に使用された標本をもう一度検討する作業を進めてきま
した。実際にこれらの標本が収められているスウェーデンやデンマーク、ドイ
ツ、イギリス、アメリカの計7つの博物館を訪れ、標本を観察するという作業
を行ってきたのです。いくつか見つからなかった標本もありましたが、概ね問
題のある種の標本は検討することができました。一方、古い標本ではDNAや詳
しい内部形態などの情報を得ることが困難なので、研究上その種に該当するで
あろう新たな標本を入手することが求められます。新たな標本は種の同一性を
できるだけ高くするため、初めて発見された場所から採集されることが望まし
く、深海から浅い海まで日本各地でイソギンチャクの採集をしてきました。こ
のような研究を通して、いくつかの種についてはこれまで明らかになっていな
かった詳細な形態形質やDNA情報を伴った再記載の論文を発表することができ
ました。

 そんなよくわからなくなってしまっていたイソギンチャクの一つがヨウサイ
イソギンチャクです。深海性のヨウサイイソギンチャクは、1914年、三浦半島
三崎沖の水深210 mでスウェーデン人研究者のSixten Bockによって2個体が採
集され、その後1940年に同じくスウェーデン人のイソギンチャク研究者Oskar
 Carlgrenによって新種として発表されました。発表が1940年と比較的新しい
のですが、この種は論文の追記の部分にメモのような状態で新種記載されてお
り、やはりどんなイソギンチャクなのか不明瞭になってしまっていたのです。
このなかまのイソギンチャクは通常のイソギンチャクとは異なり、触手がドア
ノブ状になった珍しい外観をしているため、見つかればおおよその検討がつけ
やすい種です。しかし、発見された場所周辺における度重なる調査によっても
なかなかヨウサイイソギンチャクと思われる標本が採集されることはありませ
んでした。そのような中、2014年2月19日にマリンバイオ共同推進機構によっ
て行われた沿岸生物合同調査において、初めて本種が発見された場所と同じ相
模湾三崎沖の海底で、ヨウサイイソギンチャクの特徴に一致するイソギンチャ
クを採集することができました。

 この標本を詳しく調べるとともに、スウェーデンのウプサラ大学進化博物館
に所蔵されているタイプ標本(新種として発表されたときに用いられた標本)
の調査結果も確認しました。両者を検討した結果、このイソギンチャクがヨウ
サイイソギンチャクであることがようやく確かめられました。これで今後、日
本でヨウサイイソギンチャクが採集されたときには自信を持って同定すること
ができます。また、DNA情報から、本種の分類が従来考えられていたものと上
科レベルで異なることがわかるなど、副次的な成果もありました。この結果を
まとめた論文は2021年6月に日本動物分類学会国際学術誌Species Diversity誌
オンライン版で公開されました。

 このように、過去に発表された種を整理してしっかりとその特徴を書き残し
ていくことは、今後の分類学的研究の土台となる重要な仕事です。不明瞭にな
ってしまった種の正体を解き明かす作業は新種を記載するより困難なことが少
なくありませんが、今後も地道に研究を続けていきたいと思っています。

                      (主任上席研究員 柳研介)

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│★海の博物館周辺の情報
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【観光情報】

・かつうら海中公園海中展望塔
  海の博物館の真ん前にあります。水深8mの海中展望室から季節ごとの魚や
 海底の様子を楽しむことができます。
  詳しくは勝浦海中展望塔のホームページをご覧ください。
   http://www.katsuura.org/index.php 

・勝浦朝市は通常どおり(6時半頃~11時頃・水曜休み)開催されています。
  なお1月1日(土)はお休みです。
  詳しくは勝浦市観光協会のホームページをご覧ください。
   https://www.katsuura-kankou.net/asaichitop/


【施設情報】

・勝浦市郷土資料室がオープン
  勝浦市立図書館の中に開設されました。郷土の歴史や文化財などをそれ
 ぞれのテーマを設けて展示紹介しています。
  休室日:月曜日・祝日・年始(図書館の休館日と同じ)  
  問合せ先:勝浦市教育委員会生涯学習課生涯学習係
       0470-73-6665
  
・勝浦海中公園無料休憩所
  施設取り壊しのため利用できません。

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今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうござ
いました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
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