千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第205号
配信日時:2022/03/01 08:30
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  千葉県立中央博物館 分館海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第205号
                          2022年3月1日発行

                 千葉県立中央博物館 分館海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
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  海の博物館は、新型コロナウイルス感染防止対策を講じた上で通常どおり
 開館しています。
  入館時には体温計測、手指消毒、来館者情報記入等にご協力ください。
 また展示室では間隔を空けてご観覧ください

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│目次
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★3月の主催行事のご案内
★研究員ノート -史料渉猟のおもしろさ-
★海の博物館周辺の情報

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│★3月の主催行事のご案内
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【展覧会】
 ●令和3年度マリンサイエンスギャラリー「千葉県エビ・カニ大集合!」  
 房総半島の丘陵地帯から外房の深海まで、千葉県にはさまざまなエビやカニ
 (十脚甲殻類)が生息しています。その顔ぶれは、私たちの食卓に上るクル
 マエビや子供のころに遊び相手となったサワガニなどの親しみのある種類ば
 かりでなく、千葉県の海で発見された学術的価値の高い希少種など、多岐に
 わたります。この展示では、本県に分布するエビやカニの多様性をとおして
 みなさまに千葉県の自然の豊かさをお伝えします。
 ・会期:開催中~5月8日(日)


【講座】
 研究員がスライドやビデオ等を使って、海の生き物や自然を紹介する行事
 です。
 
 ●「勝浦の甲殻類」    講師 海の博物館研究員
 開催中のマリンサイエンスギャラリー「千葉県エビ・カニ大集合!」に関
 連した講座です。
 房総丘陵から勝浦海底谷まで、これまでに勝浦の川と海から収集された甲殻
 類について紹介します。
 ・開催日時:3/12(土)13:30~14:30
 ・対象:中学生以上
 ・定員:8名
   ※申込期限を過ぎていますが、定員になり次第受付を締め切ります


≪講座参加方法≫
 行事ごとに、以下を明記の上、開催日2週間前必着で、海の博物館あてに
ハガキ・FAX・電子メールのいずれかでお申し込み下さい。
  定員を越えた場合は抽選となります。抽選結果はご連絡いたします。
   ※博物館ロビー受付でもお申し込みいただけます。

・記入事項(希望者全員の情報を記入)
  1.氏  名
  2.住  所(郵便番号も)
  3.電話番号
  4.年  令
  5.ご希望の行事名と日時

≪お申し込み・お問い合わせ先≫
  千葉県立中央博物館分館海の博物館
   〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
   電話 0470-76-1133  FAX 0470-76-1821
   電子メール umihaku@chiba-muse.or.jp

※新型コロナウイルスの感染状況によっては、中止となる場合があります。

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│★研究員ノート  -史料渉猟のおもしろさ-
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 2022年の1月16日に日付が変わって間もなくの深夜、千葉県内海辺の多くの
市町村では、防災無線から突然のサイレンと津波注意報のお知らせが鳴り響き
ました。東北や九州地方の一部ではさらに上のレベルである津波警報も発令さ
れました。それまで地震の揺れなども感じていなかったことから誤報ではない
かと思われた方もいたかもしれません。その原因は、遥か南に7800キロ離れた
南半球のトンガ王国の海底火山フンガトンガ・フンガハアパイでの大規模な噴
火によるものでした。

 我が国の災害史をひもとくと、火山噴火による津波として知られているのは
九州島原半島の普賢岳噴火による山体崩落に伴う津波があります。寛政4年(17
92)4月、普賢岳が噴火し火山性地震が頻発しました。この地震により隣接する
眉山(まゆやま)の山体が崩壊して有明海に大量になだれ込み、大きな津波が
発生しました。津波は島原だけでなくおよそ20キロ離れた対岸の熊本にも及び、
両岸で15000人を超す犠牲者(宇佐美2003)を出しました。海に落ち込んだ眉
山の山体の一部は、現在でも九十九島(つくもじま)として島原の海に点在し、
背後の眉山には山体が大きくえぐられたように崩落の痕跡を見ることができま
す。この災害は「島原大変肥後迷惑」と言われます。

 またトンガの噴火では、各地で気圧が一時的に上がったとの報告があり、日
本でも2ヘクトパスカル上がりこれが津波を引き起こした要因といわれます。
これは爆発的噴火によって空気が周囲に押しやられる空振と呼ぶ現象です。昭
和61年(1986)11月の伊豆大島三原山の噴火の際に、津波こそ起こりませんでし
たが、千葉県の南部地域ではうっすらと火山灰が降下する中、空振により窓ガ
ラスなどがカタカタと鳴っていたことを思い出します。


 今回のトンガと私たちの日本列島は、ともに環太平洋火山帯或いは環太平洋
造山帯と呼ばれる太平洋を取り囲むように広がる活発な帯状の火山活動域の中
に位置しています。我が国には111の活火山(気象庁2017)があり、これらの
火山は1万年前から各地で噴火を繰り返し、有史以降大きな災害をもたらした
ものもあります。

 その一つに、度重なる噴火で知られる浅間山があります。江戸時代の天明3
年(1783)8月、江戸まで響く大音響と溶岩や火山灰を放出する大噴火がおこり、
泥流も発生して麓の鎌原村(現群馬県嬬恋村)を丸のみにしてしまいました。
泥流は利根川を下り銚子から太平洋に流れ下ったといいます。また同じく江戸
時代の宝永4年(1707)11月の富士山噴火では富士山麓はもとより、江戸城下や
房総各地にまで火山灰降下がありました。因みに、最近噴火して太平洋側各地
の沿岸へ軽石漂着をもたらした、小笠原の福徳岡ノ場は海底火山であるため、
111か所の活火山には含まれていません。いずれにしても、この国に住む私た
ちは火山噴火とはまったく無縁とはいえません。また大小の地震も頻発してお
り、私たちは揺れる大地の上で暮らしていると言っても過言ではないのかもし
れません。加えて台風や豪雨などの気象災害も毎年のように被害をもたらして
います。

 歴史資料を調べていくとこうした自然現象による生活への影響が過去に何度
も起きていることが知られます。このほど、周辺の複数の市町村史編さんに伴
って作られた江戸時代中期から昭和初期までの文書目録を調べる機会がありま
した。合計47567点の目録中に、年号が分かる自然災害を記した文書が333点あ
りました。中には同じ災害について別々に記された文書もありましたが、その
多くは被害の報告であったり救済を求める内容でした。目録なので詳しい内容
までは分かりませんが、表題から判断すると、最も多かったのは暴風雨・暴風
・長雨や大雨、それによっておこる洪水で、合わせて144件でした。続いては
旱魃(かんばつ)の75件、冷夏の48件でした。これら文書の多くは被害に伴う
救済を求めるものでした。また地震は、元禄16年(1703)と安政2年(1855)、大
正12年(1923)に係る17件でした。元禄地震も被害と救済願いですが、安政江戸
地震では多くは江戸で被害にあった領主からの上納金要求で、大正関東地震で
は義捐金に関する文書でした。噴火は天明3年浅間山噴火と大正3年(1914)桜島
噴火の2件で、前者は噴火の様子を伝えるもので、後者は被災地への義捐金に
関するものでした。浅間山噴火は、その後に気象変動をもたらし、旱魃や冷夏
による凶作で天明の飢饉を引き起こしたといわれます。これについては今回の
調査でもうかがえるところです。今回のトンガでの大規模噴火も、今後の気象
がどうなるのか気になるところですね。

 歴史資料を調査しながら、さまざまな自然災害と出会い、当時の人々の思い
や生きざまに触れ、教訓を受けます。今後も、あちこちでこうした史料と巡り
会えればいいなと思います。  
                  
                    (主任上席研究員 本吉正宏)

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│★海の博物館周辺の情報
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【観光情報】

・かつうら海中公園海中展望塔
  海の博物館の真ん前にあります。水深8mの海中展望室から季節ごとの魚や
 海底の様子を楽しむことができます。
    3月3日(木)まで、園内のビジターセンターレクチャールームで「ちっちゃ
 いひな祭り」を開催します。応募で寄せられた手作りのかわいいひな人形が
 たくさん飾られます。
  詳しくは勝浦海中展望塔のホームページをご覧ください。
   http://www.katsuura.org/index.php 

・勝浦朝市は通常どおり(6時半頃~11時頃・水曜休み)開催されています。
  詳しくは勝浦市観光協会のホームページをご覧ください。
   https://www.katsuura-kankou.net/asaichitop/


【施設情報】

・勝浦市郷土資料室がオープン
  勝浦市立図書館の中に開設されました。郷土の歴史や文化財などをそれ
 ぞれのテーマを設けて展示紹介しています。
  休室日:月曜日・祝日・年始(図書館の休館日と同じ)  
  問合せ先:勝浦市教育委員会生涯学習課生涯学習係
       0470-73-6665
  
・勝浦海中公園無料休憩所
  新たな施設への改修工事中のため利用できません。

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今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうござ
いました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
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