千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第206号
配信日時:2022/04/01 08:30
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  千葉県立中央博物館 分館海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第206号
                          2022年4月1日発行

                 千葉県立中央博物館 分館海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
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  海の博物館は、新型コロナウイルス感染防止対策を講じた上で通常どおり
 開館しています。
  入館時には体温計測、手指消毒、来館者情報記入等にご協力ください。
 また展示室では間隔を空けてご観覧ください

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│目次
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★4月・5月の主催行事のご案内
★研究員ノート -春の鵜原理想郷散策-
★海の博物館周辺の情報

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│★4月・5月の主催行事のご案内
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【展覧会】
 ●令和3年度マリンサイエンスギャラリー「千葉県エビ・カニ大集合!」  
 房総半島の丘陵地帯から外房の深海まで、千葉県にはさまざまなエビやカニ
 (十脚甲殻類)が生息しています。その顔ぶれは、私たちの食卓に上るクル
 マエビや子供のころに遊び相手となったサワガニなどの親しみのある種類ば
 かりでなく、千葉県の海で発見された学術的価値の高い希少種など、多岐に
 わたります。この展示では、本県に分布するエビやカニの多様性をとおして
 みなさまに千葉県の自然の豊かさをお伝えします。
 ・会期:開催中~5月8日(日)


【観察会】
  研究員の解説を聞きながら、自然の中で生きものをじっくりと観察する行事です。
 保険料としてお一人様50円が必要です。
 荒天等の事情により、中止または日程や内容が変更となる場合があります。

 ●「鵜原理想郷 春の花散歩」  講師 海の博物館研究員
 鵜原理想郷の遊歩道をゆっくり散策しながら、季節の花を楽しみます。
 ・日時:4/24(日)10:00~12:00 
 ・対象:小学生以上(小学生は保護者同伴)
 ・定員:15名

 ●「海の生きもの観察ツアー」  講師 海の博物館研究員
 研究員の案内で海の博物館の前の海岸で、磯の生きものを観察します。
 ・日時:4/30(土)10:00~11:00
     5/15(日) 9:30~10:30 
 ・対象:小学生以上(小学生は保護者同伴)
 ・定員:15名

 ●「ウミウシを観察しよう」  講師 海の博物館研究員
 潮の引いた磯でウミウシを採取し観察します
 ・日時:5月1日(日)10:00~12:00
 ・対象:小学校高学年以上(小学生は保護者同伴)
 ・定員:15名

 ●「親子で磯の生きものを探そう」  講師 海の博物館研究員
 潮の引いた磯でさまざまな海の生きものを観察・採集して、浜辺にミニ水族館をつくります。
 ・日時:5/21(土)13:00~15:30
 ・対象:小学生と保護者
 ・定員:15名


【講座】
 研究員がスライドやビデオ等を使って、海の生きものや自然を紹介する行事です。 

 ●「イソギンチャクを分類する」  講師 海の博物館研究員
 イソギンチャクの分類について、実際にどのように研究されていくのかを紹介します。
 ・日時:5/22(日)13:00~15:00
 ・対象:高校生以上
 ・定員:8名
  


≪参加方法≫
 行事ごとに、以下を明記の上、開催日2週間前必着で、海の博物館あてに
ハガキ・FAX・電子メールのいずれかでお申し込み下さい。
  定員を越えた場合は抽選となります。抽選結果はご連絡いたします。
   ※博物館ロビー受付でもお申し込みいただけます。

・記入事項(希望者全員の情報を記入)
  1.氏  名
  2.住  所(郵便番号も)
  3.電話番号
  4.年  令
  5.ご希望の行事名と日時

≪お申し込み・お問い合わせ先≫
  千葉県立中央博物館分館海の博物館
   〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
   電話 0470-76-1133  FAX 0470-76-1821
   電子メール umihaku@chiba-muse.or.jp

※新型コロナウイルスの感染状況によっては、中止となる場合があります。

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│★研究員ノート  -春の鵜原理想郷散策-
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 今日から新年度です。令和4年度も海の博物館をよろしくお願いいたします。
3月から4月にかけては年度末・年度初めということでとても忙しい時期では
ありますが、そんなときこそ自然の中で心と体をリフレッシュしたいものです。

 海の博物館の前に広がる磯は春の磯観察シーズンを迎えています。メルマガ
182号(2020.4.1)の研究員ノートでは「磯観察シーズンの到来」と題して、
磯観察のすすめについてお話ししました。新型コロナウイルスの感染状況がな
かなか収束に向かわないなか、潮風が優しく吹く春の磯での活動であれば感染
の心配は低下するのではないでしょうか。

 博物館近くの鵜原理想郷も春の花シーズンを迎えています。今号では、博物
館ほど近くに広がる景勝地「鵜原理想郷」散策について、その来歴と併せてお
伝えしようと思います。

 鵜原理想郷。その名称だけでも十分に興味が湧くところですが、命名の由来
やその歴史をひもといてみると、命名者がこの地に託した壮大な夢の一方、そ
の結末の儚さが見えてきます。

 鵜原理想郷の名は、大正から昭和初期にかけてこの地域で大規模に進められ
たリゾート開発に由来します。中心となったのは熊本生まれの青年・後藤杉久
(1889-1937)です。彼は夷隅郡青海村(現勝浦市)鵜原地区に蓄魚場を設置して、
魚介類を東京に出荷する事業を始めました。1920 (大正9) 年、後藤31歳の頃
です。

 彼は鵜原に通い始めた頃から鵜原湾の波静かで白砂の浜を絶好の海水浴場と
して、また周辺を避暑避寒の地と見定めていたようで、蓄魚場の経営が軌道に
乗り始めると別荘地開発に乗り出します。地元有力者だけでなく、中央の政官
界や財界を巻き込んで「鵜原理想郷土地合資会社」を設立、1922 (大正11) 年
から本格的に土地の買収を始めます。時の内務大臣や鉄道大臣の邸宅で後藤主
催の「宴会」を開催して当地を積極的にアピール。さらに1923 (大正12) 年4
月22日には鵜原理想郷の「大木台」と呼んだ高台(現在の「黄昏の丘」?)で空前
の規模の大園遊会を開催します。東京から現役の大臣や政官界、財界人、県内
の官公吏や名士たち600人以上、新橋・赤坂の芸者50人、地元の芸者20人など、
合計で700人以上を招いたとされます。

 その年の9月1日に関東大震災が発生しますが、翌1924 (大正13) 年から別荘
地の分譲が本格的に始まり、現役の鉄道大臣をはじめとして6人の大臣(経験
者)への分譲が成立します。地元民からは「大臣村」などの通称も生まれたそ
うです。また「鵜原理想郷付属の大運動場」の建設計画を模索するなど、開発
計画が広がりを見せます。

 ところが、開発が順調に進むかに思われた矢先1925 (大正14) 年から26(大
正15) 年にかけて後藤の後援者・協力者が次々に急逝。後藤自身が開発計画か
ら距離を置くようになっていったそうです。1927 (昭和2) 年には東京方面か
ら鵜原理想郷への交通手段となる「鵜原停車場」(現JR外房線鵜原駅)が開通
し、後藤自身も開通式典に出席する一方、1928 (昭和3) 年に静岡県熱海地方
に温泉旅館を開設、29 (昭和4) 年には長野県南部に「国際大運動場」と「温
泉郷」の建設候補地を検討するなど、新たな開発に手を染めていきます。

 肝心の鵜原理想郷では1930 (昭和5) 年ころからいくつかの別荘が建設され
始めますが、後藤自身はすでに東京に住まいを移しており、最終的には鵜原理
想郷の完成を見ることなく、1937 (昭和12) 年に他界します。開発工事は中断
し、土地開発会社も破産に追い込まれるなどして鵜原理想郷開発計画は幕切れ
を迎えることとなりました。

 当初の壮大な計画が、様々な要因があったとはいえ未完のまま放棄され「理
想郷」というロマンあふれる名称だけが残されたわけですが、逆説的に言えば
開発が中断されたおかげで当地の自然が良好な状態で維持されたわけです。開
発の過程で建設された手掘りのトンネルが今でも理想郷内の複数箇所に見られ
それらをつなぐことで動植物の観察と散策に最適な遊歩道として機能していま
す。季節の移ろいとともに様々な表情を見せる鵜原理想郷は、自然愛好家にと
って貴重な野外観察エリアとなりました。

 海の博物館では、定期的に理想郷の植物を中心にモニタリング調査を行って
います。また、その結果を展示室内のホワイトボードに掲示して、理想郷散策
のための情報提供としています。

 昨年の調査記録を見ると、3月15日にはオオイヌノフグリ、タンポポ、ノゲ
シ、オオジシバリなどの野草類、ヤブツバキ、ヤツデ、マルバグミ、ヒサカキ
、ハチジョウキブシなどの低木が花や実をつけていました。4月15日調査では
タンポポ、オオイヌノフグリ、ウラシマソウ、カタバミ、コケリンドウ、オニ
タビラコ、ハマダイコンなどの野草類が賑やかになり、花木ではヤマツツジ、
トベラの花が彩りを添えていました。

 先日(3/15)、モニタリングに行ったところ、遊歩道の下草が刈られていて歩
きやすいのですが、逆に野草もあまり見られなくて残念でした。そのような中
今回の調査では、野草類ではオオイヌノフグリ、タンポポ、ハマダイコン、ハ
マエンドウなどが、花木ではハチジョウキブシ、ヤツデ、ヤブツバキなどが見
られました。カワヅザクラは場所によって満開、オオシマザクラは花芽が大き
く膨らんでおり、季節の移ろいを感じることが出来ました。

 その日の天候によっては汗ばむほどの気温になることもある季節。その一方
海に突き出た岬では海風が体温を奪い、寒さを感じることもあるかも知れませ
ん。暑さ対策と同時に寒さ対策もお忘れ無く。
さあ、春の理想郷散策に出かけてみませんか。

※参考文献 坂井 昭, 1994, 鵜原理想郷の来歴,私家版;126pp
      林 礼二, 1967, 南房総の理想郷 鵜原海岸, 地理2(7);76-81
                  
                    (前主任上席研究員 吉田真照)

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│★海の博物館周辺の情報
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【観光情報】

・かつうら海中公園海中展望塔
  海の博物館の真ん前にあります。水深8mの海中展望室から季節ごとの魚や
 海底の様子を楽しむことができます。
  詳しくは勝浦海中展望塔のホームページをご覧ください。
   http://www.katsuura.org/index.php 

・勝浦朝市は通常どおり(6時半頃~11時頃・水曜休み)開催されています。
  詳しくは勝浦市観光協会のホームページをご覧ください。
   https://www.katsuura-kankou.net/asaichitop/


【施設情報】

・勝浦市郷土資料室
  勝浦市立図書館の中に開設されました。郷土の歴史や文化財などをそれ
 ぞれのテーマを設けて展示紹介しています。
  休室日:月曜日・祝日・年始(図書館の休館日と同じ)  
  問合せ先:勝浦市教育委員会生涯学習課生涯学習係
       0470-73-6665
  
・勝浦海中公園無料休憩所
  新たな施設への改修工事中のため利用できません。

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今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうござ
いました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
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