千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第211号
配信日時:2022/09/01 08:30
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第211号
                          2022年9月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
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 海の博物館は、新型コロナウイルス感染防止対策を講じた上で開館していま
す。入館時には、引き続き体温計測、手指消毒等にご協力ください。また展示
室では間隔を空けてご観覧ください。

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│目次
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★9月、10月の主催行事のご案内
★研究員ノート - ヒメキンチャクガニ -
★海の博物館周辺の情報

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│★9月、10月の主催行事のご案内
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【展覧会】
 ●令和4年度収蔵資料展「九十九里浜の海の生きもの」
 房総半島の東岸に約60kmにわたって広がる九十九里浜は、日本でも有数の
規模を誇る砂浜海岸です。この展示では、九十九里浜に住む海の生きものに焦
点を当て、砂浜海岸にはどのような種類が住んでいるのか、砂浜の環境で生き
ていくために生きものたちはどのような生活をしているのかなどを紹介します。
・会期:7/16(土)~9/4(日)

【観察会】
  海の博物館周辺の自然の中で、研究員の解説を聞きながら、生きものをじっ
くりと観察します。
 
 ●「鵜原理想郷 秋の花散歩」  講師 斎木健一
 鵜原理想郷をゆっくりと散策しながら季節の花を楽しみます。
 ・日時:10/2(金) 10:00~12:00
 ・対象:小学生以上(小学生は保護者同伴)
 ・定員:15名

【海の生きもの観察ツアー】
 研究員の案内で海の博物館の前の磯を歩き、さまざまな海の生きものを観察
します。磯観察初心者向けのミニ観察会です。
 ・日時:9/10(土) 10:00~11:00
 ・対象:小学生以上(小学生は保護者同伴)
 ・定員:各回15名

≪参加方法≫
 行事ごとに、以下を明記の上、開催日2週間前必着で、海の博物館あてに
ハガキ・FAX・電子メールのいずれかでお申し込み下さい。
  定員を越えた場合は抽選となります。抽選結果はご連絡いたします。
   ※博物館ロビー受付でもお申し込みいただけます。

・記入事項(希望者全員の情報を記入)
  1.氏  名
  2.住  所(郵便番号も)
  3.電話番号
  4.年  令
  5.ご希望の行事名と日時

≪お申し込み・お問い合わせ先≫
  千葉県立中央博物館分館海の博物館
   〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
   電話 0470-76-1133  FAX 0470-76-1821
   電子メール umihaku@chiba-muse.or.jp

※野外で行われる観察会は、保険料としてお一人50円が必要です。
※荒天等の事情により、中止または日程や内容が変更となる場合があります。
※新型コロナウイルスの感染状況によっては、中止となる場合があります。

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│★研究員ノート  - ヒメキンチャクガニ -
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 6月末、館山市にある沖ノ島で無脊椎動物を担当する職員によるによる生物
相調査を実施しました。この際、潮間帯の岩の下から甲羅の幅が1cm程度の「
ヒメキンチャクガニ」が見つかりました。ヒメキンチャクガニが含まれるキン
チャクガニのなかまは、カニのハサミ(鉗脚)にイソギンチャクを挟んで保持
していることで知られており、本メールマガジンの2012年9月号では「ヒメキ
ンチャクガニ Lybia caestiferaの勝浦からの初記録と共生するイソギンチャ
クの謎」と題して、キンチャクガニ類のイソギンチャクとの共生関係や、勝浦
で初めて採集されたヒメキンチャクガニとカニに挟まれているイソギンチャク
について紹介しました。その際に飼育を試みたヒメキンチャクガニの保持して
いたイソギンチャクは、イソギンチャク単独で育てた結果、分裂を繰り返し20
個体くらいに増えたところで成長がとまり、飼育がおろそかだったこともあっ
たと思いますが、すべて死滅してしまいました。5㎜の大きさまでは育ったの
ですが、イソギンチャクの種類を判明するまでには至りませんでした。しかし、
その後、いくつかのヒメキンチャクガニを調べる機会があり、特に三浦半島産
のヒメキンチャクガニはイソギンチャク単独飼育の結果、カザリイソギンチャ
クの仲間を保持していることがわかりました。これまでの観察例から、ヒメキ
ンチャクガニはカザリイソギンチャクの仲間、ミナミウメボシイソギンチャク、
ヨロイイソギンチャクの仲間の3種に加え、正体のわからなかったイソギンチ
ャクの少なくとも計4種のイソギンチャクを利用していることが確かめられま
した。そして今回、沖ノ島で採集されたヒメキンチャクガニが保持していたイ
ソギンチャクは、これまでの観察例とは異なるイソギンチャクのようです。両
鉗脚に挟まれていたイソギンチャクはいずれも切れ端のようなかわいそうな姿
になっているので、現在カニから外したイソギンチャクを単独で飼育し、果た
してどのようなイソギンチャクに回復・成長するか、観察を続けています。
 また、今回見つかったヒメキンチャクガニは、ハサミに挟んだイソギンチャ
クのほか、グビジンイソギンチャクという種類のイソギンチャクを抱えていま
した。ヒメキンチャクガニはこのグビジンイソギンチャクの表面をブラシのよ
うな顎脚でこすり、粘液等を食べているように見えます。本来、グビジンイソ
ギンチャクは口盤を広げると20cm近くになるイソギンチャクであり、とてもヒ
メキンチャクガニが抱えられる大きさではありませんが、今回のヒメキンチャ
クガニが抱えていた個体は口盤径が1 cm程度の非常に小さな個体でした。これ
までカニから外して単独飼育したイソギンチャクも、はじめは生殖腺も発達も
せず形もいびつで小さな体でしたが、餌を食べて成長すると、そのサイズは保
持していたカニより大きくなりました。キンチャクガニ類を観察していると、
カニは保持しているイソギンチャクを常に顎脚で舐め取るような仕草をしてい
ます。カニは保持しているイソギンチャクをちぎったり食べたりして、成長し
ないようにキープしているのではないでしょうか。
 キンチャクガニの仲間とイソギンチャクの共生関係について、キンチャクガ
ニは敵からの防御にイソギンチャクを利用し、イソギンチャクは移動や餌をキ
ンチャクガニから得ている、というように双方に利益があるように説明されて
いることが多いのですが、私はイソギンチャクはカニに一方的に利用される「
被害者」である可能性が高いと推測しており、今回の観察例もその考えを補強
するものと思っています。
                    (主任上席研究員 柳 研介)

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│★海の博物館周辺の情報
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【観光情報】

・かつうら海中公園海中展望塔
    海の博物館の真ん前にあります。水深8mの海中展望室から季節ごとの魚や
 海底の様子を楽しむことができます。
   〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾174
   http://www.katsuura.org/index.php 

・エデン(eden)
    海の博物館前、レストラン、ショップと天然温泉スパを併設した複合施設。
  〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾272     0470-64-6370

・勝浦朝市は通常どおり(6時半頃~11時頃・水曜休み)開催されています。
  詳しくは勝浦市観光協会のホームページをご覧ください。
  〒299-5233 千葉県勝浦市浜勝浦319
   https://www.katsuura-kankou.net/asaichitop/

【施設情報】

・勝浦市郷土資料室
  勝浦市立図書館の中に開設されました。郷土の歴史や文化財などをそれ
 ぞれのテーマを設けて展示紹介しています。
  休室日:月曜日・祝日・年始(図書館の休館日と同じ)  
  問合せ先:勝浦市教育委員会生涯学習課生涯学習係
  〒299-5235 千葉県勝浦市出水1297     0470-73-6665

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今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうござ
いました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
    http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU
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