千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
『海からのたより』第212号
配信日時:2022/10/01 08:30
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第212号
                          2022年10月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
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 海の博物館は、新型コロナウイルス感染防止対策を講じた上で開館していま
す。入館時には、引き続き体温計測、手指消毒等にご協力ください。また展示
室では間隔を空けてご観覧ください。

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│目次
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★10月、11月の主催行事のご案内
★研究員ノート - ソゾという海藻 -
★海の博物館周辺の情報

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│★10月、11月の主催行事のご案内
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【展覧会】
●海のアート展 -真綿でつくるゆらゆらクラゲ-
 真綿で制作したクラゲ等の海の生きものの作品を主体として、作品の対象と
なった実際の生きものの解説パネルを展示し、海の生きものの魅力に迫ります。
また、真綿作品の制作方法も紹介し、生きものをじっくりと観察しながらその
形を再現する楽しさを伝えます。
・作品協力:熊田さやか(クラフト作家)
・会期:~2023/1/15(日)

≪お問い合わせ先≫
  千葉県立中央博物館分館海の博物館
   〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
   電話 0470-76-1133  FAX 0470-76-1821
   電子メール umihaku@chiba-muse.or.jp

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│★研究員ノート  - ソゾという海藻 -
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 海藻の中でも赤い色の仲間である紅藻類に、「ソゾ」というグループがあり
ます。「ソゾ」を知っているという方は、海藻研究者などを除けばごく稀では
ないかと思います。ただ、島根県沿岸では紅藻の「ユナ」という種類を「そ
ぞ」という名前で呼んで、食用にしている地域があるようです。ここで話題に
取り上げた「ソゾ」はユナのことではなく、紅藻フジマツモ科に属するソゾ類
のことです。昔は全てソゾ属という1グループでしたが、研究が進み、現在で
はソゾ属の他、いくつかの属に分かれています。「ソゾ」とはおかしな名前と
思われる方もいらっしゃるかと思います。ワカメとかノリとか、一般の人にも
わかる食用になるような海藻ではない海藻をまとめて「ソゾ」と呼んでいる地
域もあるとのことですが、なぜ「ソゾ」なのかははっきりとはわかっていませ
ん。
 このソゾ類は形態学的な特徴での区別がなかなか難しい仲間で、その分類は
未だに解決されていないことも多いようです。私は海藻の中でもノリの仲間が
専門で、ソゾ類については詳しくなかったのですが、北海道大学で長くソゾに
含まれている化学成分を研究されてきた鈴木稔先生が、退職後に勝浦市のお隣
の大多喜町に越してこられ、2015年9月に来館されたときにたまたまお話しし
たことをきっかけに、先生が海の博物館の共同研究員として房総半島のソゾの
化学成分をご研究され、私がそのサポートをすることになったのです。
 ソゾ類の中でもソゾ属の海藻は、海水中に高濃度で存在する塩化物イオン、
臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオンを
取り込んで多種多様な構造を有する化学物質(含ハロゲン有機化合物)を生合
成することで知られています。ソゾが作り出す含ハロゲン有機化合物は、種に
よって特有であるため、その藻体が持つ含ハロゲン有機化合物の種類を調べる
ことで種の同定を行うことができ、それがソゾ属の分類学的な研究の手法のひ
とつとなっています。鈴木先生によると、1965年に北海道産のウラソゾから含
臭素化合物が発見されたのを最初に、現在までに温帯から熱帯域に生育する世
界各地のソゾから約800の含ハロゲン有機化合物が見つかっており、海藻でこ
のように多くの含ハロゲン有機化合物を生合成しているグループはほとんどな
いとのこと。ソゾ属海藻は化学の世界では、とても面白い材料の一つだったの
です。
 房総半島からは12種のソゾ類の生育が報告されていましたが、それらが持つ
化合物についてはそれまでほとんど情報がない状態でした。2016年から鈴木先
生と私、それに、先生の教え子などの研究者による共同研究が始まりました。
勝浦を中心にソゾ類を採集して、それを教え子の研究者に送って化学分析をし
てもらうという作業を行ったところ、勝浦沿岸のソゾ属海藻から新たな含ハロ
ゲン有機化合物が3種類見つかりました。「勝浦だけで3種類も・・」と私はび
っくりしたのですが、ソゾではそれなりに良くあることらしく、改めてソゾの
化合物の多様性を認識しました。
 その後も研究が続いており、鈴木先生を中心に、千葉県を含め全国各地のソ
ゾ類の成分分析を行うとともに、ソゾ類の分類をより明確にするためDNA解析
を進めています。私も勝浦等房総半島で継続的なソゾ類の採集を行い、新たに
見つかった種を材料として提供する作業を進めています。
 ソゾが生産する化合物の中には、船底や漁網などに大量に付着して問題とな
るフジツボの着生を阻害したり、多くのがん細胞に対して多彩な薬理活性を示
したり、抗生物質の効かないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌などの多剤耐性菌
に対して抗菌作用を示すなど、種々の生物活性を発現するものが見つかってい
ます。ソゾ由来の化合物は、分類に寄与するだけなく、抗菌薬などに応用され
る可能性もあるのです。ソゾの成分が何かの病気の特効薬になる日が来るかも
と、ちょっぴり期待もしています。一般にはなじみの薄い「ソゾ」ですが、人
間生活にも大きく関係してくる可能性もある海藻です。自分の専門であるノリ
と一緒に、微力ながらソゾの研究にも取り組んで行けたらと思っています。
                     (主任上席研究員 菊地則雄)

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│★海の博物館周辺の情報
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【観光情報】

・かつうら海中公園海中展望塔
    海の博物館の真ん前にあります。水深8 mの海中展望室から季節ごとの魚
 や海底の様子を楽しむことができます。
   〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾174
   http://www.katsuura.org/index.php 

・エデン(eden)
    海の博物館前、レストラン、ショップと天然温泉スパを併設した複合施設。
  〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾272     0470-64-6370

・勝浦朝市は通常どおり(6時半頃~11時頃・水曜休み)開催されています。
  詳しくは勝浦市観光協会のホームページをご覧ください。
  〒299-5233 千葉県勝浦市浜勝浦319
   https://www.katsuura-kankou.net/asaichitop/

【施設情報】

・勝浦市郷土資料室
  勝浦市立図書館の中に開設されました。郷土の歴史や文化財などをそれ
 ぞれのテーマを設けて展示紹介しています。
  休室日:月曜日・祝日・年始(図書館の休館日と同じ)  
  問合せ先:勝浦市教育委員会生涯学習課生涯学習係
  〒299-5235 千葉県勝浦市出水1297     0470-73-6665

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今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうござ
いました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
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