千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
『海からのたより』第216号
配信日時:2023/02/01 08:30
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第216号
                           2023年2月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
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 海の博物館は、新型コロナウイルス感染防止対策を講じた上で開館していま
す。入館時には、引き続き体温計測、手指消毒等にご協力ください。また展示
室では間隔を空けてご観覧ください。

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│目次
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★2月、3月の主催行事のご案内
★研究員ノート -本牧あたりの昔のカニの話-
★海の博物館周辺の情報

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│★2月、3月の主催行事のご案内
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【展覧会】
●令和4年度マリンサイエンスギャラリー「房総の魚―名魚・珍魚・ふつうの
魚―」
 房総半島周辺で見られる「名魚」(水揚げされる代表的な魚、美味しい魚)、
「珍魚」(滅多に見られない魚、変わった形の魚、不思議な生活をおくる魚)、
「ふつうの魚」(現時点でふつうに見られる魚)を標本や映像で紹介するとと
もに、人とのかかわりや環境の変化について考えます。
・会期:2023/2/23(木・祝)~2023/5/7(日)

【観察会】
  研究員の解説を聞きながら、自然の中で生きものをじっくりと観察します。
 保険料としてお一人様50円が必要です。
 荒天等の事情により、中止または日程や内容が変更となる場合があります。

●「海藻を観察しよう」  講師 菊地則雄
 海の博物館前の磯で海藻を探して観察します。
 ・日時:3/12(日) 12:00~14:00
 ・対象:小学生以上
 ・定員:15名

【講座】
 研究員がスライドやビデオ等を使って、海の生きものや自然を紹介する行事
です。 

●「房総の魚」  講師 川瀬裕司
 開催中の企画展示「房総の魚」の展示解説を行うとともに、スライドで内容
を詳しく解説します。
 ・日時:3/19(日) 13:00~14:30
 ・対象:中学生以上
 ・定員:15名
  
≪参加方法≫
 行事ごとに、以下を明記の上、開催日2週間前必着で、海の博物館あてに
ハガキ・FAX・電子メールのいずれかでお申し込み下さい。
  定員を越えた場合は抽選となります。抽選結果はご連絡いたします。
   ※博物館ロビー受付でもお申し込みいただけます。

・記入事項(希望者全員の情報を記入)
  1.氏  名
  2.住  所(郵便番号も)
  3.電話番号
  4.年  令
  5.ご希望の行事名と日時

≪お申し込み・お問い合わせ先≫
  千葉県立中央博物館分館海の博物館
   〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
   電話 0470-76-1133  FAX 0470-76-1821
   電子メール umihaku@chiba-muse.or.jp

※野外で行われる観察会は、保険料としてお一人50円が必要です。
※荒天等の事情により、中止または日程や内容が変更となる場合があります。
※新型コロナウイルスの感染状況によっては、中止となる場合があります。

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│★研究員ノート - 本牧あたりの昔のカニの話 -
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 2022年12月9日~22日まで、文部科学省科学研究助成に採択された研究『博
物館資料に基づく東京湾産十脚甲殻類相の推移と環境変遷』(課題番号19K011
46)の一環として、オーストリア共和国のウィーン自然史博物館で海洋生物の
標本調査をしてきました。海のないオーストリアの博物館で海洋生物の標本調
べをすることを不思議に思われるかもしれませんが、1869 (明治2) 年にわが
国と当時のオーストリア・ハンガリー帝国が条約締結をした後、数多くの海洋
生物の標本が日本からオーストリアに渡り、その多くがウィーン自然史博物館
に保管されているのです。
 私は今回、明治時代の東京湾、とりわけ横浜で採集されたエビやカニなどの
十脚甲殻類の標本を調べてきました。開国からしばらくの間、日本への出入り
口だった横浜では、海洋生物の調査のために来日した科学者ばかりでなく、横
浜に在住している外国商人やまったく別分野の「お雇い外国人」も含め、多く
の人々がエビやカニを採集し、それぞれの国に標本を持ち帰りました。当時の
「横浜」は今と比べて狭い範囲で、現在の中区と西区のあたりに限定されます。
また、外国人居留地のあった横浜では、幕末から明治にかけての街や海岸線を
写真に遺したカメラマンが少なくありません。このため、エビやカニが採集さ
れた当時の場所を絞り込みやすく、古写真によって当時の環境を想像しやすい
という要素が備わっていたため、横浜産にこだわったのです。
 今回調査した明治時代の横浜産エビ・カニ類は、エビ類で6種、カニ類で29
種の計35種でした。各種すべてを撮影し、全個体の雌雄を識別し、大きさを測
定しました(ひとつのロットに複数個体あった場合もあります)。また、古い
標本なので、最新の分類体系に即した同定のやり直しも必要に応じて行いまし
た。
 エビやカニはそれぞれの種類ごとに生息環境が異なります。岩礁を好むもの、
やや深い水深帯に生息するもの、干潟でしか見られないものなどです。自然豊
かな千葉県の沿岸で標本収集を続けてきたため、どのような環境にどういった
種類のエビ・カニが見られるのか、これでもかというほど観察してきました。
明治時代に採集されたこれらの標本から見えてきたことは、かつて元町や本牧
のあたりに河口干潟やヨシ原、岩礁潮間帯が形成されていたということです。
古写真だけではここまでのディティールはわかりませんでしたが、甲殻類の生
息域の特性から推測することができます。現在の横浜からは想像もできません
が、ヨシの根元を歩き回るアシハラガニや、波打ち際の転石をめくると簡単に
見つかるヒライソガニがかつての横浜に暮らしていたことを標本は物語ります。
また、魚市場で集められたと思われる横浜産標本から、東京湾内湾である横浜
地先でクルマエビやガザミなどの砂泥底を好む種類だけでなく、岩場に生息す
るイセエビも漁獲されていた可能性があると考えられました。本牧では海抜40
メートルの下末吉台地が海まで迫り、その崖下から続く海岸の沖には漁業に適
した「磯根」があるという、東京湾内湾では他に見られない環境でした。しか
し、現在では大規模な埋め立てにより、台地の崖は内陸に大きく後退してしま
い、かつての漁場はコンビナート地帯の下です。東京湾の反対側、千葉県の内
房沿岸ではこれらのエビやカニが生き残っている場所が少なくありません。大
規模な埋め立てがなされる前の本牧は、現在の富津市竹岡棚海岸と似たような
甲殻類の顔ぶれが見られる場所だったのではないか、と想像します。地域的に
姿を消してしまった横浜と、今でもエビ・カニのいる地域を比較することによ
って、生物の視点から持続可能な開発の限界が理解できるものと考えられます。
 自然史博物館の標本は、同じ博物館資料でも文化財に指定された工芸品や高
額で取引される美術品と異なり、いつでもどこでも手に入るイメージを持たれ
ています。しかし、ある日ある場所で採集した普通種の標本であっても、二度
とその時と場所に遡って標本を採集することはできません。標本とそのラベル
に記された情報から、50年、100年先の人たちにかつての自然の様子やそこに
暮らす人々の文化を伝えることができるのです(採集者名や採集方法、採集場
所の特徴も書き添えることが大切!)。自然史博物館の標本は生物学だけでな
く、社会科学でも重要な役割を担っていると考えることができます。
                      (主任上席研究員 奥野淳兒)

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│★海の博物館周辺の情報
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【観光情報】

・かつうら海中公園海中展望塔
    海の博物館の真ん前にあります。水深8 mの海中展望室から季節ごとの魚
 や海底の様子を楽しむことができます。
   〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾174
   http://www.katsuura.org/index.php 

・エデン(eden)
    海の博物館前、レストラン、ショップと天然温泉スパを併設した複合施設。
  〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾272     0470-64-6370

・勝浦朝市は通常どおり(6時半頃~11時頃・水曜休み)開催されています。
  詳しくは勝浦市観光協会のホームページをご覧ください。
  〒299-5233 千葉県勝浦市浜勝浦319
   https://www.katsuura-kankou.net/asaichitop/

【施設情報】

・勝浦市郷土資料室
  勝浦市立図書館の中に開設されました。郷土の歴史や文化財などをそれ
 ぞれのテーマを設けて展示紹介しています。
  休室日:月曜日・祝日・年始(図書館の休館日と同じ)  
  問合せ先:勝浦市教育委員会生涯学習課生涯学習係
  〒299-5235 千葉県勝浦市出水1297     0470-73-6665

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今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうござ
いました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
    http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
お問い合わせはこちらへ umihaku@chiba-muse.or.jp
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