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千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン
『海からのたより』 第218号
2023年4月1日発行
千葉県立中央博物館分館 海の博物館
http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
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海の博物館は、新型コロナウイルス感染防止対策を講じた上で開館していま
す。入館時には、引き続き体温計測、手指消毒等にご協力ください。また展示
室では間隔を空けてご観覧ください。
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│目次
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★4月、5月の主催行事のご案内
★研究員ノート -超深海の生物調査-
★海の博物館周辺の情報
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│★4月、5月の主催行事のご案内
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【展覧会】
●令和4年度マリンサイエンスギャラリー「房総の魚―名魚・珍魚・ふつうの
魚―」
房総半島周辺で見られる「名魚」(水揚げされる代表的な魚、美味しい魚)、
「珍魚」(滅多に見られない魚、変わった形の魚、不思議な生活をおくる魚)、
「ふつうの魚」(現時点でふつうに見られる魚)を標本や映像で紹介するとと
もに、人とのかかわりや環境の変化について考えます。
・会期:開催中~2023/5/7(日)
【海の体験コーナー】
海の生きものにちなんだ簡単な工作を行います。
・開催日:4/16(日)、30(日)、5/14(日)、28(日)
・メニュー:「海で見つけた材料でオリジナルオブジェを作ろう」
海で見つけた材料を使ってオリジナルオブジェを作ります。
・対象:3歳以上(小学生以下は保護者同伴)
・定員:各回6名(先着順)
・時間:①11:00~11:20 ②13:30~13:50
※事前申し込み不要。当日、受付にて参加希望を申し出てください。
・材料費:お一人様50円
【磯・いそ探検隊(フィールドトリップ)】
研究員の案内で、博物館の前の海岸を歩き、いろいろな磯の生きものを観察
します。磯観察初心者向けの行事です。
・日時:4/22(土) 11:00~12:00
5/5(金・祝)10:00~11:00
5/7(日)11:00~12:00
5/21(日)11:00~12:00
・対象:3歳以上(小学生以下は保護者同伴)
・定員:15名(先着順)
※事前申し込み不要。当日、受付にて参加希望を申し出てください。
・保険料:お一人様50円
【観察会】
研究員の解説を聞きながら、自然の中で生きものをじっくりと観察します。
荒天等の事情により、中止または日程や内容が変更となる場合があります。
●「鵜原理想郷 春の花散歩」 講師 松本光史
鵜原理想郷をゆっくりと散策しながら季節の花を楽しみます。
・日時:4/29(土・祝) 10:00~12:00
・対象:小学生以上(小学生は保護者同伴)
・定員:15名
・保険料:お一人様50円
●「ウミウシを観察しよう」 講師 立川浩之
潮の引いた磯でウミウシを採集して、それらを室内で観察します。
・日時:5/6(土) 10:00~15:00
・対象:小学生高学年以上(小学生は保護者同伴)
・定員:20名
・保険料:お一人様50円
≪参加方法≫
行事ごとに、以下を明記の上、開催日2週間前必着で、海の博物館あてに
ハガキ・FAX・電子メールのいずれかでお申し込み下さい。
定員を越えた場合は抽選となります。抽選結果はご連絡いたします。
※博物館入口横の受付でもお申し込みいただけます。
・記入事項(希望者全員の情報を記入)
1.氏 名
2.住 所(郵便番号も)
3.電話番号
4.年 令
5.ご希望の行事名と日時
≪お申し込み・お問い合わせ先≫
千葉県立中央博物館分館海の博物館
〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
電話 0470-76-1133 FAX 0470-76-1821
電子メール umihaku@chiba-muse.or.jp
※新型コロナウイルスの感染状況によっては、中止となる場合があります。
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│★研究員ノート -超深海の生物調査-
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昨年の9月30日から10月17日にかけて、超深海を中心とした底生生物の調査
をするため、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の白鳳丸(はくほうまる)に乗船
しました。この航海は令和4年度共同利用「北西太平洋の海溝域に生息する底
生生物の生物相と進化過程の網羅的解明」という研究テーマで採択されたもの
で、国内外の海洋生物の研究者25名が乗船しましたが、私はそのうちイソギン
チャク類の担当として参加しました。当初、一ヶ月超の予定の航海だったので
すが、原油価格の上昇等の影響により、航海日数が半分となり、残りの半分は
翌年に持ち越されることになりました。
さて、今回の調査航海の肝は、超深海の生物相を網羅的に調査できることで
す。超深海とは水深6,500 m 以深(6,000 m 以深とされることもあります)の
海域を指しますが、このような水深帯は海溝軸(海溝の底の部分)にしか存在
しません。深海への底生生物の進出は、浅いところから少しずつ深いところに
向かっていったと考えられており、その顔ぶれは深さに伴って少しずつ連続的
に変わっていきますが、超深海では出現する種が一変することから、それらが
どのようにして超深海に進出したのかということは学術的にも非常に興味深い
テーマです。しかし、超深海の生物相調査は非常に困難であることから、その
調査を行うことができる機会は極めて限られており、その生物相自体も解明さ
れているとは言い難い状況です。超深海に出現するイソギンチャク類はこれま
で7種が知られていますが、これらのほとんどは超深海でしか見つからない種
類です。ちなみに、イソギンチャクの最深録は、1950~1952年にかけて実施さ
れたデンマークの調査船Galathea号による深海調査でフィリピン海溝10,160~
10,210 mで見つかったワタゾコイソギンチャク類の一種,Galatheanthemum ha
ddale Carlgren, 1956という種類です。そのほかの6種のうち5種もこの調査に
よって報告されている種類であり、それ以降はあまり研究が進んでいません。
日本周辺での情報はほとんどなく、何種類くらいのイソギンチャクが生息して
いるのかは未知といってもよい状況です。
今回の航海では、襟裳岬沖の襟裳海山によって分かたれる千島海溝と日本海
溝、それぞれの海溝軸をまたぐようにして水深2,000 m から7,400 m までの16
地点に加え、三陸沖の日本海溝の海溝軸7,600 m の1地点、計17地点での調査
を実施することができました。乗船前の新型コロナ対策として乗船前4日間の
完全隔離(ホテルに缶詰)と2度のPCR検査を経て、ようやく9月30日の朝に白
鳳丸に乗船し、観測機器の組み立てなどを行い、13時半にはじめの調査地であ
る襟裳沖へと出港しました。10月1日深夜に調査地点に到着し、10月2日深夜0
時に1点目の調査を開始しました。次の地点の調査開始時刻は朝の9時、その次
は午後2時、その次は夕方19時スタートと、いきなり怒涛の調査が始まります。
深海の生物相調査と聞くと、潜水艇等での調査を思い描くかと思いますが、そ
のような調査では大量のサンプルを採集することができないうえ、調査できる
回数も限られます。そのため、多くのサンプルを採集する必要がある場合、
ビームトロールと呼ばれる底曳網を使用するのが一般的です。網を曳くワイヤ
はおよそ秒速1 m で上げ下ろしするので、例えば6,000 m のワイヤを出すのに
6,000秒=100分かかります。ワイヤは水深より長く出すので、超深海で網を上
げ下ろしするには前後の作業も含め8時間近くかかることもあります。このた
め、調査をより多く実施するためには昼夜問わずの作業を続ける必要がありま
す。網が上がると研究者みんなで協力して、網に入った大量の泥(超深海の底
質はほぼ泥です)を掻き出し、その泥を丁寧に何段階にもわけてふるいにかけ
て、粒子のサイズごとにわけて船内でソーティング(生き物を探して選り分け
る)作業を行います。数百kgにもなる泥の中から顕微鏡を使って数mm程度の生
き物まで選り分けるので時間がかかるうえ、どれも貴重なサンプルなので集中
力も必要で、とても根気のいる作業が続きます。また、水温が2℃程度の超深
海から引き上げられてきた生き物はすぐに暑さで形が崩れていってしまうので、
保冷剤を入れて冷やしたり、人間ごと冷凍室に入って作業をしたりと、その扱
いも大変です。このため、調査中は寝る時間がほとんど取れない状況が続きま
すが、海が荒れると安全確保のため作業が中止され、場合によっては船を波浪
の弱い場所まで移動させたりするので、ぎっちり予定が詰まっていても計画通
りに進むことはほとんどありません。今回も海況の悪化で2度の作業中止があ
り、その間に休養をとったりデータの整理をしたりすることができました。
さて、肝心のイソギンチャクですが、今回11地点から87ロット160個体もの
イソギンチャクを採集することができました。このうち、超深海域からは少な
くとも6種類のイソギンチャクが見つかりました。従来日本周辺の超深海から
は2種(いずれも未記載種と考えられる)しか知られていなかったので、今回
の調査で一気に知見が増えました。これらのイソギンチャクの正確な種類につ
いては現在研究中ですが、多くは未記載種(発表すれば新種)であると考えら
れます。私はこれまで超深海の生物相調査に2回乗船した経験があるのですが、
それらは超深海に特化した調査ではなく調査地点も非常に限られていました。
また20年近く前の調査だったこともあり、DNA解析用の組織もほとんど得られ
ていませんでしたが、今回は多くの地点で状態の良い標本を得ることができ、
研究が大きく進展することが期待されます。これらの成果は近々に超深海を
テーマにした企画展示(マリンサイエンスギャラリー)を開催し、皆様にご紹
介したいと考えています。
(主任上席研究員 柳研介)
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│★海の博物館周辺の情報
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【観光情報】
・かつうら海中公園海中展望塔
海の博物館の真ん前にあります。水深8 mの海中展望室から季節ごとの魚
や海底の様子を楽しむことができます。
〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾174
http://www.katsuura.org/index.php
・エデン(eden)
海の博物館前、レストラン、ショップと天然温泉スパを併設した複合施設。
〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾272 0470-64-6370
・勝浦朝市は通常どおり(6時半頃~11時頃・水曜休み)開催されています。
詳しくは勝浦市観光協会のホームページをご覧ください。
〒299-5233 千葉県勝浦市浜勝浦319
https://www.katsuura-kankou.net/asaichitop/
【施設情報】
・勝浦市郷土資料室
勝浦市立図書館の中に開設されました。郷土の歴史や文化財などをそれ
ぞれのテーマを設けて展示紹介しています。
休室日:月曜日・祝日・年始(図書館の休館日と同じ)
問合せ先:勝浦市教育委員会生涯学習課生涯学習係
〒299-5235 千葉県勝浦市出水1297 0470-73-6665
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今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうござ
いました。
発行 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
お問い合わせはこちらへ umihaku@chiba-muse.or.jp
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