千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
『海からのたより』第226号
配信日時:2023/12/01 08:30
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第226号
                           2023年12月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
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│目次
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★12月、1月の主催行事のご案内
★研究員ノート -内房サンゴ調査-
★海の博物館周辺の情報

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│★12月、1月の主催行事のご案内
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【展覧会】
●秋の企画展示「海の生きものの古い図鑑-明治から昭和初期まで-」
 明治から太平洋戦争中に出版された海の生きものを掲載した図鑑や啓蒙書を
紹介します。これらの本をとおして、四方を海に囲まれるわが国の生きものを
扱った海洋教育の歴史に触れてみましょう。
・会期:10/21(土)~1/14(日)

☆当日申込制の行事(要入場料)
【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海の生きものにちなんだ簡単な工作を行います。

 メニュー:「海で見つけた材料でオリジナルオブジェを作ろう」
     海で見つけた材料を使ってオリジナルオブジェを作ります。
 ・開催日:12/10(日)、12/24(日)、1/6(土)、1/21(日)
 ・対象目安:3歳以上(小学生以下は保護者同伴)
 ・定員:各回6名
 ・時間:(1)11:00~11:20 (2)13:30~13:50
 ・材料費:お一人様50円

≪参加方法≫
 当日申込、先着順(入場者対象)。入場手続き後、受付にて参加申込をして
ください。
※体験メニューの内容は日によって変わります。詳細は、海の博物館までお問
 い合わせいただくか、ホームページをご覧ください。

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│★研究員ノート -内房サンゴ調査-
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 先日、内房の2箇所で行われたサンゴ調査に同行しました。
調査のお話に入る前に、「サンゴ」という言葉が指す生きものについて説明さ
せてください。「温暖化によってサンゴの白化が進んでいる」、「外国の漁船
がサンゴの密猟を行っている」、「開発の手からアオサンゴを守ろう」等、報
道等でこのようなフレーズを耳にしたことがあろうかと思います。しかし、こ
の3つの例で出てくる「サンゴ」は、それぞれ異なる分類群の生物です。本来
「サンゴ」とは、宝石として用いられるアカサンゴやモモイロサンゴなどの深
海に生息する「サンゴ科(Coralliidae)」のなかまに与えられた名前です。し
かし、一般的には「サンゴ」という名前はクラゲやイソギンチャクのなかまが
含まれる「刺胞動物(しほうどうぶつ)門」のうち、体に石灰質などからなる
硬い骨格を作るものに使用されています。このいわゆる「サンゴ」は一つの分
類群ではなく、以下のようにそれぞれ異なるグループに見られます。
【「サンゴ」と呼ばれる主な生きもの】
○刺胞動物門水母亜門ヒドロ虫綱花クラゲ目アナサンゴモドキ科
 アナサンゴモドキなど。暖かく浅い海に生息する。
○刺胞動物門水母亜門ヒドロ虫綱花クラゲ目サンゴモドキ科
 シロエノシマサンゴなど。やや深い海に生息するものが多い。
○刺胞動物門花虫亜門八放サンゴ綱硬八放サンゴ目アオサンゴ科
 +クダサンゴ科クダサンゴ
 アオサンゴなど。暖かく浅い海に生息する。
○刺胞動物門花虫亜門八放サンゴ綱硬八放サンゴ目サンゴ科
 アカサンゴなど。深海に生息し宝石として珍重される。
○刺胞動物門花虫亜門六放サンゴ綱ツノサンゴ目
 ウミカラマツなど。深海に生息し「クロサンゴ」として利用されるものを含
む。
○刺胞動物門花虫亜門六放サンゴ綱イシサンゴ目
 ミドリイシなど。浅海から深海、温かい海から寒い海まで広く分布。種数が
多い。
 このように報道などで「サンゴ」という名前が出てきたとき、それが指す生
きものは報道の文脈によって全く異なるものであることを注意しなければなり
ません。
 さて、「サンゴ」と聞くと南の海のサンゴ礁を思い浮かべる方も多いのでは
ないかと思いますが、このサンゴ礁をかたちづくる主力となっているのは、最
後に挙げたイシサンゴ目のなかまのうち、体の中に褐虫藻と呼ばれる共生藻類
を持つもの(有藻性イシサンゴとも呼ばれる)です。この有藻性イシサンゴの
なかまは、共生藻類の光合成産物を利用することによって非常に成長が早く、
サンゴ礁の海には様々な種類の有藻性イシサンゴが見られます。水温上昇によ
る白化現象が認められるのは、この有藻性イシサンゴ類です。これらのなかま
は熱帯から亜熱帯にかけてのサンゴ礁域だけではなく、日本の太平洋岸では千
葉県を東限として九州、本州各地で見られ、場所によってサンゴ群集を形作っ
ています。
 今回の「サンゴ調査」は、まさにこの有藻性イシサンゴ類の調査で、全国各
地のサンゴ礁あるいはサンゴ群集において、サンゴの種類や量の増減によって、
生態系がどのように変化するかを捉えるために実施したものでした。調査を行
っているのはイギリスのリーズ大学や琉球大学の研究者からなるチームで、こ
れまで国内外各地のサンゴ礁やサンゴ群集で調査を行っており、今回、千葉県
において、有藻性イシサンゴが多く見られる鋸南町の勝山と館山市の沖ノ島で
調査を実施することとなり、私もそれに同行しました。
 調査は海底に約150 mのラインを引き、そこに出現するサンゴの種類と被度
をチェックしながら、周辺の魚類から無脊椎動物、大型の藻類にいたる全ての
生きものを記録していくという地道なものです。また、その場所の海水を汲み
取って、そのなかに含まれる環境DNA(eDNA)を分析し、その水域に潜在的に
生息・生育する生物をチェックします。調査は1箇所で約2時間程度かかります。
1日目は勝山で2箇所、2日目は沖ノ島で2箇所、計4箇所で調査を行ったの
で、トータルで8時間近く潜水していたことになります。
 一緒に潜ってみて実感したのですが、勝山は以前は大型の海藻(カジメなど
)が生えていた場所だということですが、今回の調査では大型の海藻類はほと
んど見られなくなっており、一面にミドリイシのなかまなどが生息している状
態でした。地元のダイバーさんのお話を伺うと、勝山では8年ほど前からカジ
メが枯れてしまったそうで、その茎状部がポツンポツンと岩の上に残っている
様子が見られました。海の中の様子はこの10年ほどで確実に変わっているよう
です。
 今回の調査結果については、すぐに何かが明らかになる、というものではあ
りませんが、このような調査を継続的に行っていくことによって、例えば地球
温暖化による海水温の上昇が、生態系にどのような影響を与えるかということ
について、予測をすることが可能になることが期待されます。今回の調査に参
加してあらためて、「最近〇〇が減ってきたねー」という感覚的なものを、し
っかりとしたデータとして記録していく、ということを常に意識して博物館活
動を続けていかなければならないなと、思いを新たにしました。
                        (主任上席研究員 柳 研介)

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│★海の博物館周辺の情報
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【観光情報】

・かつうら海中公園海中展望塔
    海の博物館の真ん前にあります。水深8mの海中展望室から季節ごとの魚
 や海底の様子を楽しむことができます。
   〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾174
   http://www.katsuura.org/index.php 

・エデン(eden)
    海の博物館前、レストラン、ショップと天然温泉スパを併設した複合施設。
  〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾272     0470-64-6370(レストラン)

・勝浦朝市は通常どおり(6時半頃~11時頃・水曜休み)開催されています。
  詳しくは勝浦市観光協会のホームページをご覧ください。
  〒299-5233 千葉県勝浦市浜勝浦319
   https://www.katsuura-kankou.net/asaichitop/

【施設情報】

・勝浦市郷土資料室
  勝浦市立図書館の中に開設されました。郷土の歴史や文化財などをそれ
 ぞれのテーマを設けて展示紹介しています。
  休室日:月曜日・祝日・年始(図書館の休館日と同じ)  
  問合せ先:勝浦市教育委員会生涯学習課生涯学習係
  〒299-5235 千葉県勝浦市出水1297     0470-73-6665

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今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうござ
いました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
    http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
お問い合わせはこちらへ umihaku@chiba-muse.or.jp
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