千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
『海からのたより』第227号
配信日時:2024/01/04 09:04
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第227号
                            2024年1月4日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
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 新年あけましておめでとうございます。

 本年が皆様にとりましてすばらしい年となりますよう、心よりお祈り申し上
げます。
 本年も皆さまに喜んでいただける博物館を目指して、海の博物館職員一同、
精一杯努力して参ります。 本年も海の博物館を応援していただけますよう、
よろしくお願い申し上げます。

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│目次
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★年始の開館
★1月、2月の主催行事のご案内
★研究員ノート -ウミウシの観察ノートを作っています-
★海の博物館周辺の情報

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│★年始の開館
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 年始の開館:1月5日(金)から通常開館
   ※有料駐車場は、年末年始も営業しています。

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│★1月、2月の主催行事のご案内
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【展覧会】
●秋の企画展示「海の生きものの古い図鑑-明治から昭和初期まで-」
 明治から太平洋戦争中に出版された海の生きものを掲載した図鑑や啓蒙書を
紹介します。これらの本をとおして、四方を海に囲まれるわが国の生きものを
扱った海洋教育の歴史に触れてみましょう。
・会期:~1/14(日)

●令和5年度マリンサイエンスギャラリー
「アサクサノリ2 -ノリの世界-」
 平成18年に企画展示「アサクサノリ-ノリの自然誌-」を行い、早17年が過
ぎました。その間、ノリという生きものについていろいろなことがわかってき
ました。江戸時代から養殖され、今では絶滅危惧種となっているアサクサノリ
を中心に、ノリ研究の最前線を紹介します。
・会期:2024/2/23(金・祝)~5/6(月・休)

☆当日申込制の行事(要入場料)
【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海の生きものにちなんだ簡単な工作を行います。

 メニュー:「海で見つけた材料でオリジナルオブジェを作ろう」
   貝やビーチグラスなどの材料を使ってオリジナルオブジェを作ります。
 ・開催日:1/6(土)、1/21(日)、2/4(日)、2/18(日)
 ・時間:(1)11:00~11:20 (2)13:30~13:50
 ・定員:各回6名
 ・材料費:お一人様50円
 ・対象目安:3歳以上(小学生以下は保護者同伴)

≪参加方法≫
 当日申込、先着順(入場者対象)。入場手続き後、受付にて参加申込をして
ください。
※体験メニューの内容は日によって変わります。詳細は、海の博物館までお問
 い合わせいただくか、ホームページをご覧ください。

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│★研究員ノート -ウミウシの観察ノートを作っています-
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 海の博物館では、『海の生きもの観察ノート』という冊子を毎年1冊発行し
ています。この中に、2006年(平成18年)に発行した『ウミウシを観察しよう
』(以下、旧版とします)という号があり、作成時までに海の博物館の資料収
集・調査研究で集められた千葉県産のウミウシ類約140種が紹介されています。
ウミウシは海の博物館の観察会などでも人気の生きもので、この観察ノートも
さまざまに活用されています。しかし、発行から十数年が経過し、その後の調
査研究でこれまで未掲載だったウミウシ類の資料もだいぶ集まりましたので、
これら新しい情報を盛り込んで『ウミウシを観察しよう』の改訂版(以下、新
版とします)の制作を現在進めています。この中では、180種を超える千葉県
産のウミウシをご紹介できる予定です。
 さて、旧版では、ウミウシについての概説に続き、図鑑形式でさまざまなウ
ミウシをご紹介するページが続きます。新版でもこの構成は大きくは変わらな
い予定ですが、今回の改訂にあたり、図鑑部分の種類の配列は大きく見直しを
行うことになりました。旧版での配列は、当時主流だった軟体動物(ウミウシ
を含む貝類)の伝統的な分類体系に沿ったものです。この分類体系では、軟体
動物のうちの巻貝類は前鰓類・後鰓類・有肺類という3つのグループに分けら
れ、このうち後鰓類がウミウシ類と呼ばれ、その中にいくつかの「目」という
グループが設けられていました。しかし、今回新版で採用する分類体系はこれ
とはかなり異なったものになっています。
 軟体動物の分類体系は、旧版が発行されるしばらく前から大規模な見直しが
始まっていました。巻貝類の伝統的な分類体系では、比較的少数の形質(特に
鰓の位置、神経のねじれの有無、雌雄異体か同体かなど)の類似性を重視して
グループ分けが行われていました。しかし、最近30年ほどの間に、形質の比較
に相同性(共通の祖先に由来すること)が重視されるようになったこと、形質
の進化(祖先的か派生的か)や類縁関係が重視されるようになったこと、そし
て遺伝子の塩基配列の比較を主とした分子系統解析が飛躍的に進歩したことな
どが相まって、軟体動物の分類体系は大きな見直しが行われてきました(福田,
 2017, 2021)。
 ここ30年ほどの間、軟体動物の分類体系に関しては、研究の進展に伴い新し
い体系が提唱され、あまり時間をおかずにそれにとって代わる別の体系が提唱
されることの繰り返しで、分類体系はなかなか安定しませんでした。このよう
な見直しはこれからも続いていくと思われますが、現時点では2020年にニュー
ジーランドの軟体動物研究の大家が提唱した分類体系が、最も信頼性のあるも
のと考えられています。『ウミウシを観察しよう』の新版では、基本的にこの
分類体系に微修正を加えて紹介した、前述の福田(2021)に示された体系を採用
しました。この新しい分類体系と伝統的な分類体系は様々な点で異なりますが、
ウミウシ類に関しての大きな違いは下記のような点が挙げられます。
 ①これまで一つのグループ(目)とされていたもので、複数のグループに分
けられたものがあります。従来は頭楯目だったものが、オオシイノミガイ類・
マメウラシマ類・その他の頭楯類という3つのグループに分けられました。ま
た、背楯目だったものがヒトエガイ類とフシエラガイ類の2つのグループに分
けられました。これら新しいグループは、それぞれ系統的にかなり離れたもの
と考えられるようになりました。
 ②いくつかのグループはこれまで後鰓類でなかった貝類(前鰓類・有肺類)
の一部とより近縁であることが示されました。これまで頭楯目の一部だったオ
オシイノミガイ類は、ガラスツボ類という小型の巻貝類と近縁で、両者でひと
つのグループを作ります。アリモウミウシをはじめとする嚢舌類は、トウガタ
ガイ類・カラマツガイ類・カタツムリの仲間などが含まれる大きなグループの
一員となりました。これらの結果、分類体系上では「ウミウシ類」はひとまと
まりのグループではなくなってしまいました。
 ③このようなグループ分けやグループ間の類縁関係の見直し(高次分類群の
再編)に加え、科や属のレベルでも様々な再検討が進められました。その結果、
多くの種で従来とは異なる学名や所属科名が使われることになりました。

 このように、分類体系の上では「ウミウシ類」というグループは無くなって
しまいましたので、新版の観察ノートで紹介するのは、「巻貝類のうち、これ
までウミウシと呼ばれていた生きもの」ということになります。しかし、さま
ざまな種類の「ウミウシ類」がいなくなってしまうわけではありません。新版
の観察ノートを通して「ウミウシ」とよばれる多様性に富んだ生きものに興味
を持つ人が増え、自然観察に役立てていただくとともに、ウミウシの仲間には
いろいろな系統のものが含まれているということに少しだけ思いを馳せていた
だければと思います。

引用文献
福田 宏. 2017. 改定 沖縄県の絶滅の恐れのある野生生物, 第3版(動物編)
, pp. 669-673.
福田 宏. 2021. Molluscan Diversity, 6(2): 89-180.

                       (主任上席研究員 立川 浩之)

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│★海の博物館周辺の情報
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【観光情報】

・かつうら海中公園海中展望塔
    海の博物館の真ん前にあります。水深8mの海中展望室から季節ごとの魚
 や海底の様子を楽しむことができます。
   〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾174
   http://www.katsuura.org/index.php 

・エデン(eden)
    海の博物館前、レストラン、ショップと天然温泉スパを併設した複合施設。
  〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾272     0470-64-6370(レストラン)

・勝浦朝市は通常どおり(6時半頃~11時頃・水曜休み)開催されています。
  詳しくは勝浦市観光協会のホームページをご覧ください。
  〒299-5233 千葉県勝浦市浜勝浦319
   https://www.katsuura-kankou.net/asaichitop/

【施設情報】

・勝浦市郷土資料室
  勝浦市立図書館の中に開設されました。郷土の歴史や文化財などをそれ
 ぞれのテーマを設けて展示紹介しています。
  休室日:月曜日・祝日・年始(図書館の休館日と同じ)  
  問合せ先:勝浦市教育委員会生涯学習課生涯学習係
  〒299-5235 千葉県勝浦市出水1297     0470-73-6665

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今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうござ
いました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
    http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
お問い合わせはこちらへ umihaku@chiba-muse.or.jp
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