千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
『海からのたより』第229号
配信日時:2024/03/01 08:30
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第229号
                           2024年3月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
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│目次
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★3月、4月の主催行事のご案内
★研究員ノート -絶滅危惧種アサクサノリ-
★海の博物館周辺の情報

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│★3月、4月の主催行事のご案内
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【展覧会】
●令和5年度マリンサイエンスギャラリー
「アサクサノリ2 -ノリの世界-」
 平成18年に企画展示「アサクサノリ-ノリの自然誌-」を行い、早17年が過
ぎました。その間、ノリという生きものについていろいろなことがわかってき
ました。江戸時代から養殖され、今では絶滅危惧種となっているアサクサノリ
を中心に、ノリ研究の最前線を紹介します。
・会期:2024/2/23(金・祝)~5/6(月・休)


☆事前申込制の行事
【観察会】
  研究員の解説を聞きながら、自然の中で生きものをじっくりと観察します。
 保険料としてお一人様50円が必要です。
 荒天等の事情により、中止または日程や内容が変更となる場合があります。

●「海藻を観察しよう」  講師 菊地則雄
 海の博物館前の磯で海藻を探して観察します。
 ・日時:3/16(土) 13:00~15:00
 ・対象:小学生以上(小学生以下は保護者同伴)
 ・定員:20名
  
●「ウミウシを観察しよう」  講師 海の博物館研究員
 潮の引いた磯でウミウシを採集し、それらを室内で観察します。
 ・日時:4/27(土) 10:30~15:30
 ・対象:小学生高学年以上(小学生は保護者同伴)
 ・定員:20名

●「海藻を観察しよう」  講師 海の博物館研究員
 博物館前の磯で見られる海藻の種類を調べてみましょう。
 ・日時:4/29(月・祝) 12:30~15:30
 ・対象:高校生以上
 ・定員:20名

≪参加方法≫
 行事ごとに、以下を明記の上、開催日2週間前必着で、海の博物館あてに
ハガキ・FAX・博物館ウェブサイトの申し込みフォーム(準備中)のいずれ
かでお申し込み下さい。
  定員を越えた場合は抽選となります。抽選結果はご連絡いたします。
※博物館ロビー受付でもお申し込みいただけます。
※令和6年度行事の受付は、ホームページのリニューアルに合わせて、ご案
内いたします。少々お待ちください。

・記入事項(希望者全員の情報を記入)
  1.氏  名
  2.住  所(郵便番号も)
  3.電話番号
  4.年  令
  5.ご希望の行事名と日時

≪お申し込み・お問い合わせ先≫
  千葉県立中央博物館分館海の博物館
   〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
   電話 0470-76-1133  FAX 0470-76-1821
   電子メール umihaku@chiba-muse.or.jp

☆当日申込制の行事(要入場料)
【磯・いそ探検隊(フィールドトリップ)】
 研究員の案内で、博物館の前の海岸を歩き、いろいろな磯の生きものを観察
します。磯観察初心者向けの行事です。
 ・日時:4/28(日)13:00~14:00
 ・定員:各回15名
 ・保険料:お一人様50円
 ・対象目安:3歳以上(小学生以下は保護者同伴)

【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海の生きものにちなんだ簡単な工作を行います。

 メニュー:「海藻おしばを作ろう」
   色とりどりの海藻を使って海藻おしばを作ります。
 ・開催日:3/10(日)、3/24(日)、4/7(日)、4/21(日)
 ・時間:(1)11:00~11:20 (2)13:30~13:50
 ・定員:各回6名
 ・材料費:お一人様50円
 ・対象目安:3歳以上(小学生以下は保護者同伴)

≪参加方法≫
 当日申込、先着順(入場者対象)。入場手続き後、受付にて参加申込をして
ください。
※体験メニューの内容は日によって変わります。詳細は、海の博物館までお問
 い合わせいただくか、ホームページをご覧ください。

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│★研究員ノート - 絶滅危惧種アサクサノリ -
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 海の博物館のメインの企画展示である「マリンサイエンスギャラリ-」。毎
年異なったテーマで海の生きものに関して深く掘り下げた内容を紹介するもの
で、開館以来行われています。今年度は私の担当で、2月23日(金・祝)から
「アサクサノリ2-ノリの世界-」と題して始まりました。身近な食材である
海藻の「ノリ」。私が専門に研究している生きものです。平成18(2006)年に
マリンサイエンスギャラリー「アサクサノリ-ノリの自然誌-」と題して、江
戸時代から養殖され乾海苔(ほしのり)の代名詞として名高い「浅草海苔」の
原料でありながら、絶滅危惧種となってしまったアサクサノリという種類を中
心に、海苔の原料となるノリという生きものの姿を紹介しました。それから17
年が過ぎ、特に生きものの研究にDNAの情報が普通に用いられるようになった
ことによって、ノリという生きものに関する多くの新知見が明らかになってき
ました。この企画展示では、17年前の展示の続編という位置付けで、この間に
ノリについてどのようなことがわかってきたのか、その最新の情報を、アサク
サノリを中心にお届けしています。

 前回のノリの企画展示から17年が経ちましたが、アサクサノリが絶滅危惧種
であることに今でも変わりはありません。しかし「絶滅危惧種としてのアサク
サノリ」については、いろいろなことがわかってきました。まず、日本でアサ
クサノリが生えている場所については、17年前はおよそ十数カ所が確認されて
いましたが、今では50カ所にまで増加しています。それらは、地道な生育地調
査の結果によるものですが、わかったのは単に新たな生育地だけではありませ
ん。生育地はごくわずかな例外を除き、川の河口の干潟や海につながる潟湖(
せきこ)など、淡水の入り混じる干潟がある場所であること、どこも生育量は
多くなく、生育地における生育範囲も広くないこと、必ずしも毎年アサクサノ
リが見つかるわけではないこと、などなど、ごく基本的ではありますが、絶滅
危惧種としては大変重要な情報も、それらの調査で得られました。

 アサクサノリは絶滅したと言われていた東京湾ですが、平成16(2004)年2
月の当館の調査によって多摩川河口干潟で再発見され、企画展示前の平成18年
2月にマスコミで報道され話題になりました。当然前回の企画展示でも紹介し
ましたが、その後、多摩川河口では継続的な調査を行っており、ここのアサク
サノリについて多くのことがわかってきました。平成16年に最初に多摩川河口
干潟に行ったときは、生育数も少ないと感じていましたが、その後、他の生育
地には見られないほど広範囲にアサクサノリが生育していることや生育量も毎
年コンスタントに多いことがわかってきました。また、現在日本で最も多く養
殖されているノリはスサビノリという種類ですが、天然でアサクサノリとスサ
ビノリの交雑個体が見つかることがわかり、特にアサクサノリとスサビノリの
分布が重なる場所ではかなりの数の交雑個体が見つかることもわかってきまし
た。しかし、多摩川河口の川崎側の生育場所には、そのような交雑個体がまだ
見つかっていません。また他の種類のノリも見つかっておらず、ここは全国的
に見ても数少ないアサクサノリの純群落と考えられることもわかってきました。
このような生育地は大変貴重と言えるでしょう。

 幸い、多摩川河口干潟は国土交通省によって生態系保持空間に定められ、開
発などが制限された保護された場所となっています。しかし、そのような場所
にも自然災害は襲いかかります。令和元(2019)年10月に通過した台風19号は、
首都圏に大きな被害をもたらしました。多摩川沿岸も各地で氾濫が起き、住宅
が浸水したりして大きな被害が出ました。このとき、台風通過後に河口の様子
を見に行った私たちは、干潟の地形の大きな変貌に驚きました。アサクサノリ
がたくさん生えていた種子植物のヨシの原には土砂が堆積し、水温の変化を調
べるために設置してあった温度ロガーは、深さ50cmくらいも土砂に埋まってい
たのです。干潟はかなりの範囲で軟泥の堆積がひどく、歩いてまわることはか
なり困難な状況でした。そして、次の2月、最もアサクサノリが多く見られる
時期ですが、その年は、アサクサノリはごく限られた場所でのみ確認され、生
育量もほんのわずかという、大打撃を受けた状況になっていたのです。アサク
サノリが絶滅危惧種になった原因の多くは、生育場所の河口周辺の干潟の埋め
立てなど「人間による開発」と考えられますが、自然災害による大きな減少も
あるのだと思い知らされた出来事でした。

 このようなアサクサノリを始めとしたノリについての新たな知見はいくつも
あります。今回の企画展示では、私が研究に関係しているノリの分類やアサク
サノリの話などを中心に、その一部をご紹介しています。ぜひ展示を見に来て
いただき、ノリの最新情報を知っていただきたいと思っています。平成25年度
の海藻に関するマリンサイエンスギャラリ-でデビューした海博オリジナル海
藻キャラクターの「藻じゃ~ず」たちが展示パネルの案内役です。わかりやす
く、楽しく、紹介していますので、皆様ぜひおいでください!
                      (主任上席研究員 菊地則雄)

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│★海の博物館周辺の情報
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【観光情報】

・かつうら海中公園海中展望塔
    海の博物館の真ん前にあります。水深8 mの海中展望室から季節ごとの魚
 や海底の様子を楽しむことができます。
   〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾174
   http://www.katsuura.org/index.php 

・エデン(eden)
    海の博物館前、レストラン、ショップと天然温泉スパを併設した複合施設。
  〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾272     0470-64-6370(レストラン)

・勝浦朝市は通常どおり(6時半頃~11時頃・水曜休み)開催されています。
  詳しくは勝浦市観光協会のホームページをご覧ください。
  〒299-5233 千葉県勝浦市浜勝浦319
   https://www.katsuura-kankou.net/asaichitop/

【施設情報】

・勝浦市郷土資料室
  勝浦市立図書館の中に開設されました。郷土の歴史や文化財などをそれ
 ぞれのテーマを設けて展示紹介しています。
  休室日:月曜日・祝日・年始(図書館の休館日と同じ)  
  問合せ先:勝浦市教育委員会生涯学習課生涯学習係
  〒299-5235 千葉県勝浦市出水1297     0470-73-6665

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今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうござ
いました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
    http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
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