千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
『海からのたより』 第98号
配信日時:2013/04/01 00:10
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第98号
                          2013年4月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/


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│目次
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★マリンサイエンスギャラリー開催中!
★4、5月の行事案内
★研究員ノート 北太平洋で初めてみつかった十文字クラゲ *Lipkea* sp. 
★職員の異動と25年度の海の博物館の職員の専門分野
★海の博物館周辺の情報


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│★マリンサイエンスギャラリー開催中!
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 平成24年度マリンサイエンスギャラリー「チーバくんと学ぶ 深い海に暮ら
す生きものたち」(企画展示)が開催中です。この企画展示では、深い海にす
む生きものたちの体のつくりや人とのかかわりなどを、様々な角度から紹介し
ています。
 皆様、この機会にぜひ企画展示をご覧ください。

 展覧会の詳細をホームページから見ることができます。
http://www2.chiba-muse.or.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=bbs_view_main_post&post_id=220&block_id=6011#_6011


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│★4、5月の行事案内
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 海の博物館では、さまざまな行事を開催しています。
 皆様の参加をお待ちしております。

 詳しくはこちらをご覧下さい
   http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=394
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【講座「深い海に暮らす生きものたち」】
 深い海にすむ生きものたちの体のつくりや人とのかかわりなどを紹介します。
  対象:小学生以上(小学生は保護者同伴) 定員:20名
  事前申し込みですが、当日受付も可能です。
  日時:5月4日(土祝)13:30~14:30(申込み締切日:4月20日(土))

【観察会「親子で磯の生きものを探そう その1」】
 生きもの探しのポイントを学び、親子で楽しみながら生きもの探しをします。
普段見逃してしまうような場所でも、足を止めてじっくり探してみると、いろ
いろな生きものたちが見つかります。
  対象:小学生と保護者 定員:20名
  日時:4月27日(土)10:00~12:00
  (申込み締切日:4月13日(土))

【観察会「ウミウシを観察しよう」】(講座同時開催)
 海の博物館の前の磯で、カラフルなウミウシを探して、観察します。
  対象:小学生以上(小学生は保護者同伴) 定員:20名
  日時:4月28日(日)10:30~15:30
  (申込み締切日:4月14日(日))

【観察会「春の鵜原理想郷で植物を観察しよう」】
 鵜原理想郷は風光明媚な岬です。景色を楽しみながら、春の植物を観察しま
しょう。
  対象:一般 定員:15名
  日時:5月6日(月・振休)10:00~15:00
  (申込み締切日:4月22日(月))

【観察会「親子で磯の生きものを探そう その2」】
 初めて磯遊びをするお子様や,磯によく見られる生きものについて学んでみ
たいお子様向けの観察会です。
  対象:小学生と保護者 定員:20名
  日時:5月12日(日)10:00~12:00
  (申込み締切日:4月28日(日))

【観察会「潮だまりでエビやカニを探そう」】
 春の磯を訪れて、エビやカニを探しましょう。
  対象:小学生以上(小学生は保護者同伴) 定員:20名
  日時:5月26日(日)10:00~12:00
  (申込み締切日:5月12日(日))

【磯・いそ探検隊】
 研究員の案内で当館周辺の自然を散策し、主に磯の生きものを観察します。
 定員各回15名。
   4月29日(月・祝)【1回目】10:45~11:15【2回目】11:30~12:00
   (当日申込み。定員になりしだい締め切りとなります)

【タッチプール】
 飼育室で色々な生きものに触ってみましょう。定員各回10名。
   5月 5日(日) 11:00~、11:30~、13:00~、13:30~
   (当日申込み。定員になりしだい締め切りとなります)  

【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海にまつわるさまざまなメニューにチャレンジす
る行事です。
   4月 6日(土)、4月20日(土)、5月11日(土)、5月18日(土)の各日、
  11:00からと13:30からの1日2回、約20分間開催します。各回の実施内容に
 ついてはお問い合わせください。
 (当日申込み。定員6名。定員を超えた場合は抽選となります)


   海の博物館の行事について、詳しくはこちらをご覧下さい
      http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=394

   行事の参加方法については、こちらをご覧下さい
      http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=533


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│★研究員ノート 北太平洋で初めてみつかった十文字クラゲ *Lipkea* sp. 
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 十文字クラゲ類は、クラゲの仲間としては異例の「泳がないクラゲ」です。
以前はミズクラゲなどが属する鉢虫綱(Scyphozoa)の中のひとつの目に分類
されていましたが、形態学的な情報や、DNA情報による系統解析の結果などか
ら、現在では独立した綱、十文字クラゲ綱に分類されています。

 このなかまは、ポリプ世代とクラゲ世代の特徴を併せ持った体のつくりにな
っていて、クラゲの傘にあたる部分(「がく部」)は8放射、傘の頭頂部から
伸びる「柄部」は4放射のポリプ型で、「柄部」で主に海藻や海草などにくっ
ついて暮らしています。これまでに約50種の十文字クラゲが記載されており、
その5分の1の約10種が本邦から知られています。北日本に生息する種類が多
いのですが、海の博物館の前の磯でも、ジュウモンジクラゲ *Kishinouyea na
gatensis* (Oka, 1897)などが見つかっています。

 私は、平成23年度までの3年間、自然保護課の生物多様性センターに出向い
ていましたが、その間も、海博で閉鎖型水槽でイソギンチャク類を飼育してい
ました。昨年4月に海博に戻ってきて、その水槽の掃除とイソギンチャクたち
の世話をしていたところ、見慣れない生物、まるでミズクラゲのエフィラ※を
大きくしたようなものが、複数個体、岩の上にくっついているのを発見しまし
た。写真を撮っていろいろな人に見てもらったのですが、皆「見たことがな
い」との回答でした。いろいろと調べているうちに、インターネット上でこれ
にそっくりな写真があることに気がつきました。それは、十文字クラゲの仲間
の、*Lipkea*属とされたクラゲの写真でした。早速、このなかまの専門家であ
る、千葉大学の平野弥生博士に見てもらったところ、「間違いない」というこ
とでした。

 このクラゲの「がく部」はほとんど透明で、岩上では大きく開いて平面的に
広がり、直径は小型個体で約5 mm、大型のものでは約20 mmで、「柄部」は短
く大型個体でも5 mm程度でした。「萼部」周縁には通常の十文字クラゲ類に見
られる、先端が丸くふくらんだ「有頭触手」と呼ばれる触手がありません。ま
た、8-9個の平たい「葉状部」を備えており、この「葉状部」の長さは「がく
部」の直径のおよそ5分の1で、その周囲には棘(とげ)のような痕跡(こん
せき)的な触手が15-25本程度、配されていました。このクラゲは、明瞭な触
手を欠き、「がく部」の周縁に痕跡的な触手を配する葉状部を備えるという特
徴から、十文字クラゲの仲間でも特に変わったグループであるLipkeidae科の*
Lipkea*属の種であることがわかりました。Lipkeidae科には、*Lipkea*属の1
属しから知られておらず、これまでに地中海から*L. ruspoliana* Vogt, 1886
と*L. sturdzii* (Antipa, 1893)の2種、南アフリカから
*L. stephensoni*Carlgren, 1933の計3種が記載されていますが、いずれも1個
体のみに基づいて記載されたもので、*L. ruspoliana*を除き、新種として報告
された以後は発見記録がありません。このようなことから、このなかまのクラ
ゲの分類学的検討はほとんど進んでおらず、とっても謎の多いクラゲです。ま
た、太平洋域では最近になって、オーストラリアおよびニュージーランドから
写真による未同定種が報告されていますが、実はこの仲間が北太平洋から見つ
かったのは初めてのことであり、標本が得られたという意味においては、太平
洋で初記録です。これだけの大きさに成長するクラゲが、これまで見つかって
いなかったことは驚くべきことです。

 このように、このクラゲのなかまは他の十文字クラゲ類とは大きく異なる形
態をしていて、十文字クラゲ類の系統分類学的研究にとって非常に重要である
と考えられているのですが、極めて稀にしか発見されないため、詳しい形態学
的研究やDNA解析も行われておらず、その生活史も全くの謎に包まれています。
今回海博で見つかったクラゲは、北太平洋における初の発見というだけでなく、
この特異な十文字クラゲ類の生活史の解明や系統分類学的位置の検討、さらに
はクラゲのなかま全体の進化過程の解明に関してもとても重要な発見と言えま
す。このクラゲについては、現在、海博において千葉大学の平野先生によって
飼育観察が続けられており、興味深い生活史の一端が明らかになりつつありま
す。これらの成果については、私も共同研究者として各種学会で報告しました。
また、DNA解析も進められており、近いうちに、いろいろなことがわかってく
るだろうと期待しています。

 ちなみに、このクラゲは、実はまだ野外では見つかっていません。発見され
た水槽には、前の磯で取ってきた岩などしか入っていないので、おそらく海博
の前の磯に生息しているものと思われます。今年は、是非、前の磯でこのクラ
ゲを捕まえたいと思っています。皆様も、もし見つけたら教えてください。
(柳研介主任上席研究員)


※平成25年3月31日刊行の「海の博物館 海の生き物観察ノートシリーズ11 
クラゲを観察しよう」で、クラゲのことを詳しく解説しています。このクラゲ
についても掲載されています。まもなく当館ウェブサイトからダウンロードで
きるようになりますので、是非チェックしてみてください!

注)*-*で囲まれた部分は斜体であることを意味しています.


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│★海の博物館周辺の情報
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●勝浦の春まつり

 海の博物館のある勝浦市では、4月4日(木)~5日(金)に、勝浦の春まつりが
行われます。市立図書館前の商店街と朝市通りを歩行者天国にして、植木市や
露店約70店舗が出店され、例年家族連れなどで賑わっています。皆様ぜひお
越しいただき、お楽しみ下さい。

 詳しくは次のページをご覧ください。
   http://www.city.katsuura.chiba.jp/event/index.html


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│★職員の異動と25年度の海の博物館の職員の専門分野
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★職員の異動

 3月31日及び4月1日付けで、海の博物館の職員の異動がありました。新しい
職員の自己紹介は次号に掲載したいと思います。


【転入】

分館長     原  正利(県立中央博物館本館より)
庶 務     高木 慎哉(県立君津特別支援学校より)
庶 務     大石  岳(県立千葉西高等学校より)


【転出】

分館長   宮田 昌彦(退職)
庶 務   的場 秀人(県立天羽高等学校)
庶 務   粕谷 幸子(退職)


★25年度の海の博物館の職員の専門分野

 25年度に在籍する職員の専門分野は次のとおりです。海の生きものに関する
質問等があるときに参考にしてください。

分館長     原  正利【植物(森林生態学)】
主任上席研究員 本吉 正宏【歴史(史学・博物学)】
主任上席研究員 川瀬 裕司【魚(魚類行動学)】
主任上席研究員 奥野 淳兒【エビ、ヤドカリなど(甲殻類学)】
主任上席研究員 菊地 則雄【海藻(藻類学)】
主任上席研究員 柳  研介【イソギンチャクなど(刺胞動物学)】
上席研究員   青木 慎哉【理科教育・植物】
上席研究員   村田 明久【フジツボなど(甲殻類学)】


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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただき
 ありがとうございました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
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