千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
『海からのたより』 第106号
配信日時:2013/12/01 00:10
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第106号
                          2013年12月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/


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│目次
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★開催中! <お絵かき展> わたしのお気に入りの生きもの
        「チーバくんと学ぶ 深い海に暮らす生きものたち」より
★12月、1月の行事、開館・休館日のご案内
★「未来に残そう青い海」図画コンクール作品を展示中
★マリンサイエンスギャラリー
 「海藻いろいろ -千葉県の豊かな海から-」の準備が進行中!
★研究員ノート   -デンマーク自然史博物館事情-
★海の博物館周辺の情報


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│★開催中! <お絵かき展> わたしのお気に入りの生きもの
│        「チーバくんと学ぶ 深い海に暮らす生きものたち」より
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 昨年度のマリンサイエンスギャラリーでは、来館いただいた子どもたちに
「深い海に暮らす生きもの」のイラストを描いていただきました。現在、その
作品を、対象の標本とともに展示する<お絵かき展>を開催しています。
 様々な視点と豊かな感性で描かれた子どもたちのイラストを、標本と見比べ
ながらお楽しみください。たくさんの方々のご来館をお待ちしています。

  開催期間:平成25年11月23日(土・祝)~平成26年2月2日(日)
  場  所:海の博物館研修室
  詳しくは海の博物館ホームページの企画展示の案内をご覧ください
  http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=393


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│★12月、1月の行事、開館・休館日のご案内
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【海の体験コーナー】
    体験交流員といっしょに、海にまつわるさまざまなメニューにチャレ
     ンジする行事です。
   対 象:小学生以上(小学生は保護者同伴)
   定 員:各回 6 名(当日申込み。定員を超えた場合は抽選)
   参加費:無料(入場料は別途必要)
   日 時:
    12月 7日(土)「海藻おしばを作ろう」
    12月21日(土)「シラスを調べよう」
     1月11日(土)「オリジナルオブジェを作ろう」
     1月25日(土)「微小貝を探そう」
      *各日とも11:00と13:30開始の1日2回、それぞれ約20分間。
       皆さまの参加をお待ちしております。

   海の博物館の行事について、詳しくはこちらをご覧下さい
      http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=533

【開館・休館日】
  12月、1月には臨時休館日があります。
  年明けは1月2日から開館します。

   12月の休館日 2、9、16-18、24、28-31日
    1月の休館日 1、6、14-16、20、27日


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│★「未来に残そう青い海」図画コンクール作品を展示中
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 「未来に残そう青い海」図画コンクール(海上保安庁第三管区海上保安本部
主催)に応募があった作品のうち、勝浦海上保安署管内で佳作として選考され
た23点を展示中です。展示場所および展示期間は以下の通りです。海の環境保
全への願いのこもった子ども達の作品をぜひご覧ください。

 展示場所: 海の博物館ロビー
 展示期間: 平成25年11月27日(水)~12月3日(火)


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│★マリンサイエンスギャラリー
│ 「海藻いろいろ -千葉県の豊かな海から-」の準備が進行中!
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 今年度の企画展示であるマリンサイエンスギャラリーは、「海藻いろいろ 
-千葉県の豊かな海から-」と題して、2月15日(土)から開催いたします。現
在は、その開催に向けての準備を進めているところです。
 磯にたくさん見られる生きもの、海藻(かいそう)。けれども動かないので
あまり目立たない海藻。千葉県はそんな海藻が世界でも大変豊富な場所のひと
つです。種類、色、形、役割、利用などなど、千葉県の海藻たちの魅力に迫り
ます。
 企画展示を担当する研究員は、展示資料の収集などの準備に毎日奮闘してい
ます。皆さまもマリンサイエンスギャラリーをどうぞご期待ください。

 詳しくは海の博物館ホームページをご覧ください
 http://www2.chiba-muse.or.jp/index.php?key=bbw7nxvu1-4853#_4853


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│★研究員ノート   -デンマーク自然史博物館事情-
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【標本調査】
 突然ですが、11月に、デンマークのコペンハーゲン大学付属の「コペンハー
ゲン動物学博物館」を訪れて、イソギンチャク類の標本調査を行ってきました。
調査の目的は、過去に日本で採集され、新種として発表されたイソギンチャク
の標本や、現在日本に分布するとされるイソギンチャク類が、やはり新種とし
て発表された時に用いられた標本を詳しく調べることです。コペンハーゲン大
学には、Oscar Henrik Carlgren (1865-1954)というイソギンチャク類の大学
者が研究に使用した標本の一部が保管されています。その中でも、日本近海の
イソギンチャク類は、Karl Alfred Sixten Bock (1884-1946)という動物学者
が、1914年に日本を訪れた際に採集したもので、そこそこの「年代物」と言え
ます。当時、Carlgrenがこれらを新種として発表した論文には、現在、分類上
重要とされている体の特徴が示されておらず、それどころか、全体像のスケッ
チも載っていません。このため、種の名前は残っていても、それがどんなイソ
ギンチャクなのか不明瞭になっているものが少なくないのです。今回は、これ
らの標本を観察し、さらに詳細な研究を行うための観察標本作りを行ってきま
した。これらは日本に持ち帰って詳しく観察し、その後、博物館に返却するこ
とになっています。なお、この調査は日本学術振興会による科学研究費補助金
を受けて、本年度から4年間の計画で行っているもので、今後も、複数国の博
物館を訪れる予定です。これらの研究の成果は改めてご報告することとして、
今回は滞在中に見聞きしたデンマークの自然史博物館事情について、お伝えし
たいと思います。

【コペンハーゲン大学の博物館施設】
 デンマークの首都であるコペンハーゲンには、大学付属の博物館として、私
が滞在した「動物学博物館」の他、市街地中心部に「植物園」と、それに隣接
する「地質学博物館」の3つの施設があります。残念ながら地質学博物館は訪
れることができなかったのですが、滞在最終日に動物学博物館の展示と植物園
を見学することができました。いずれもとても立派な施設で、植物園は歴史的
な建造物、動物学博物館は近代的な施設でした。
1.動物学博物館
 動物学博物館の建物自体は6階建てになっていて、半地下の1階から5階まで
は研究施設と標本収蔵庫、2階の一部が展示室のエントランスとミュージアム
ショップ、6,7階部分が展示室、という構造になっていました。常設展示では、
デンマークを中心とした資料と、ワールドワイドの資料がそれぞれ分かれて展
示されていました。メインホールには、ホッキョククジラとマッコウクジラの
全身骨格標本、それを取り巻くように様々な生きものが美しくレイアウトされ、
圧巻でした。ホールから離れた個別展示の多くは、その動物が生きている環境
を再現するようにレイアウトされており、中央博物館の展示と共通する部分が
多くありましたが、レイアウト等、とても美しい展示に仕上がっていました。
また、今回の訪問時には、ロシアから借りてきたマンモス化石の特別展と、ク
モを取り扱った特別展の2件の特別展が開催されていました。マンモス展では、
巨大な全身骨格標本を中心に、発掘現場をドキュメントした写真家による一連
の写真が、大きなパネルになって並べられていたり、当時の環境を再現するた
めに人工的に「つらら」を作って雰囲気を出したりと、資金的にも人的にも相
当な資源を投入している様子が見てとれました。クモ展も工夫が凝らされてお
り、多くのクモの生体展示を行っていました。中でも、立派な蜘蛛の巣を見せ
るために作ったという、3メートル四方はあるだろう巨大なアクリルのクモ室
が目を引きました。しかし、スタッフに話を聞いてみると、やはりエサの工面
が大変で、当初5匹入れていたのが、現在は2匹になってしまったそうで、期間
中持つかどうか心配とのことでした。また、小泉八雲(ラフカディオ・ハー
ン)が英訳して作成した、長谷川武次郎のいわゆる縮緬本(ちりめんぼん)の
一つ「The goblin spiders(化け蜘蛛)」、など、各国の蜘蛛にまつわる絵や
デザインなども紹介されていました。ちなみに入場料は無料で、大勢の親子が
来館していました。
2.植物園
 植物園には、研究・標本棟のほか、中央博物館の生態園のような野外部分と
お城のような温室があります。温室は時間切れで、入ったところで閉館を促さ
れてしまったのですが、映画のワンシーンに出てくるようなとても幻想的なつ
くりになっていました。野外の植物もよく手入れされており、中でも驚いたの
が、木本(いわゆる木)だけでなく草本(いわゆる草)にも、ほぼ全てラベル
が付けられていたことです。1平米あたりに、6,7種もの小さな草が生えている
のですが、それら全てにラベルがつけられて管理されているようなのです。長
く厳しい冬をどのようにして乗り越えているのか、どの程度の頻度でラベルを
作成しているのか、詳しい話を聞くことが出来ませんでしたが、相当に苦労し
ていることは容易に見てとれました。次の機会は無いだろうと思うと、今回、
温室をじっくり見ることが出来なかったことが悔やまれます。

【新自然史博物館構想】
 話は変わりますが、私が博物館の滞在中に与えられた訪問研究者用の部屋は、
Reinhardt Kristensen博士の研究室の隣でした。Kristensen博士は、動物界で
3つの新門*(胴甲動物門: Loricifera, 有輪動物門: Cycliophora, 微顎動物
門: Micrognathozoa)を発見した偉大な動物学者です。Kristensen博士からは、
昼食の時間ビールを飲みながら(私は飲みませんでしたが・・・)、ほぼ毎日、
いろいろな話をお聞きすることができました。今回はその中でも、新自然史博
物館設置計画についての話を紹介したいと思います。
 実は、デンマークには国立の自然史博物館がないのです。これだけ既存の立
派な施設があるのだから、とも思うのですが、やはり国立の自然史博物館の設
立は、自然史系の研究者の悲願だったとのことです。ようやくその願いが叶い、
2017年の開館を目指して、上記植物園と、近接する国立美術館の間に、新しい
自然史博物館が建設予定だそうです。新博物館が出来た際には、現在の動物学
博物館の展示や研究施設等が移転するとのことでした。動物学博物館に置かれ
た新博物館構想のパンフレットによると、(オンラインのデンマーク語翻訳が
正しければ)新博物館は、植物園や周辺環境を出来るだけ保つために大半が地
下に建設され、地上部には、パリのルーブル美術館のようなガラスの建物が覗
くようにデザインされているそうです。パンフレットには、その美しい設置イ
メージが載せられていました。同じくパンフレットには、新博物館の設置目的
について「1. 研究と教育のために」、「2.来館者と学生ために」、「3.デ
ンマークの1400万年の自然史を保存するために」と謳った上で、設置面積につ
いて、研究教育エリアが17,000平米、展示エリアが24,500平米、標本収蔵ス
ペースとして14,000平米、合計55,500平米の広さになるという計画が記されて
いました。日本の国立科学博物館は、全ての施設(上野本館、筑波施設、付属
自然教育園)の延床面積が計78,685平米(国立科学博物館概要2013より)で、
そのうち平成24年に新設された標本棟の延床面積が約1万平米です。デンマー
クの新自然史博物館の延べ床面積は国立科学博物館より狭いものの、標本収蔵
スペースだけ見ると大きく上回ることになります。ヨーロッパ諸国では、伝統
的に標本の保存に特に力を入れることが多く、展示施設を持たない博物館もあ
ります。自然史標本を大切に扱う伝統が、やはり新博物館構想にも見てとれま
す。日本でも標本の収蔵庫がもう少し充実したらよいのにな、と思わされまし
た。しかし、Kristensen博士や他の研究スタッフも、少なからず問題があるの
だという話をされていました。新博物館の設置には、建設に約11億クローネ
(日本円換算約220億円)、新たな展示作成に約3億クローネ(約60億円)、総
経費約14億クローネ(約280億円)と巨額な費用が必要であり、現在の予算で
は不足するそうです。Kristensen博士は、場合によっては研究施設の移転を断
念することになるかもしれない、と残念そうに話されていました。日本の国立
科学博物館は、展示施設と研究・収蔵施設が離れているという話をしたところ、
できるだけ展示に関われる場所に設置したい、という思いがあるということで
す。費用以外にも設置場所の地盤の基礎の問題(振動で繊細な顕微鏡が使えな
いとの懸念があるそうです)など、課題が残っているようではありました。し
かし、大学博物館のスタッフ(研究者は基本的に大学教員)が、皆、博物館の
設置についてかなりの時間を割いて(実際私の滞在中にも多くの会議が開かれ
ていました)議論しており、その熱意は十分に伝わってきました。今でも十分
に素晴らしい博物館だと思ったのですが、さらに優れた博物館が新設されるこ
とを願って止みません。

【終わりに】
 2017年以降に北欧に行く機会がありましたら、完成しているであろう壮大な
新自然史博物館を訪れてみることを強くお薦めしておきます。ちなみに街自体
もとても美しいところですよ。
(主任上席研究員 柳 研介)


*「門」という単位は、例えば昆虫やエビ・カニなどが含まれる節足動物門、
タコや貝などが含まれる軟体動物門など、「動物」を分ける大きなまとまりで
す。


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│★海の博物館周辺の情報
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●お正月、初日の出スポット

 海の博物館の所在する勝浦市は房総半島の南東部に位置していることから、
太平洋から昇ってくる日の出を見ることができます。
 おすすめは勝浦市街地から東に位置する「官軍塚」とその近くにある勝浦城
址(八幡岬公園)、そして海の博物館の近くの「鵜原理想郷」でしょう。
 これらの場所は海岸の高台にあって美しい日の出を眺めることができます。
    ※海の博物館は、1月2日から平常開館しています。

 官軍塚と八幡岬公園、鵜原理想郷については次のページをご覧ください。

「官軍塚」(勝浦市のホームページになります)
http://www.city.katsuura.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=29183

「八幡岬公園」(勝浦市のホームページになります)
http://www.city.katsuura.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=29182

「鵜原理想郷」(勝浦市のホームページになります)
http://www.city.katsuura.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=29499


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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうご
ざいました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
    http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU
お問い合わせはこちらへ umihaku@chiba-muse.or.jp
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