千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
『海からのたより』 第110号
配信日時:2014/04/01 07:00
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第110号
                          2014年4月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/


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│目次
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★マリンサイエンスギャラリー開催中!
★4、5月の行事案内
★研究員ノート 海草いろいろ -アマモンに聞いてみよう-
★職員の異動と25年度の海の博物館の職員の専門分野


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│★マリンサイエンスギャラリー開催中!
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 平成25年度マリンサイエンスギャラリー「海藻いろいろ -千葉県の豊かな
海から-」(企画展示)が開催中です。この企画展示では、千葉県内で見られ
る海藻に焦点を当て、いろいろな種類や海の中での役割、食品に代表される人
の暮らしとの関わりなど、海藻の魅力の数々を、お子様にも楽しんでいただけ
るように、わかりやすく紹介しています。
 皆様、この機会にぜひ企画展示をご覧ください。

 展覧会の詳細をホームページから見ることができます。
http://www2.chiba-muse.or.jp/index.php?key=bbq45uixa-4853#_4853


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│★4、5月の行事案内
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 海の博物館では、さまざまな行事を開催しています。
 皆様の参加をお待ちしております。

 詳しくはこちらをご覧下さい
   http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=394
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【講座「海藻おしばを作ろう 1&2」】
 房総半島周辺の海域は、世界で最も海藻が多い場所のひとつです。博物館前
の磯でも、たくさんの海藻を見つけることができます。主に千葉県内で採集さ
れた色とりどりの海藻を使って、海藻おしば作りに挑戦します。ふるってご参
加ください。
  対象:小学生以上(小学生は保護者同伴) 定員:各回15名
  日時:5/5(月・祝)(1) 9:30-11:30 (2)13:30-15:30
  申込み締切日:4月21日(月)

【観察会「ウミウシを観察しよう」】(講座同時開催)
 海の博物館の前の磯で、カラフルなウミウシを探して、観察します。
  対象:小学生以上(小学生は保護者同伴) 定員:20名
  日時:4月29日(火・祝)10:00-15:00
  申込み締切日:4月15日(火)

【観察会「親子で磯の生きものを探そう その1」】
 生きもの探しのポイントを学び、親子で楽しみながら生きもの探しをします。
普段見逃してしまうような場所でも、足を止めてじっくり探してみると、いろ
いろな生きものたちが見つかります。
  対象:小学生と保護者 定員:20名
  日時:5月3日(土・祝)12:00-14:00
  申込み締切日:4月19日(土)

【観察会「磯でエビやカニを観察しよう」】
 春の磯を訪れて、エビやカニを探しましょう。
  対象:小学生以上(小学生は保護者同伴) 定員:20名
  日時:5月31日(土)10:30-12:30
  (申込み締切日:5月17日(土))

【磯・いそ探検隊】
 研究員の案内で、当館前の磯で生きものを観察します。
 定員各回15名。
   4月 5日(土)13:00-14:00
   5月 2日(金)11:00-12:00
   5月 4日(日・祝)(1)13:00-13:30 (2)13:45-14:15
   5月18日(日)13:00-14:00
   (当日申込み。定員になりしだい締め切りとなります)

【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海にまつわるさまざまなメニューにチャレンジす
る行事です。
   4月 5日(土)、4月19日(土)、5月10日(土)、5月24日(土)の各日、
  11:00からと13:30からの1日2回、約20分間開催します。各回の実施内容に
 ついてはお問い合わせください。
 (当日申込み。定員6名。定員を超えた場合は抽選となります)

   海の博物館の行事について、詳しくはこちらをご覧下さい
      http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=394

   行事の参加方法については、こちらをご覧下さい
      http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=533


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│★研究員ノート 海草いろいろ -アマモンに聞いてみよう-
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 海の博物館では、2月15日から、企画展示「平成25年度マリンサイエンスギ
ャラリー 海藻いろいろ-千葉県の豊かな海から-」を開催中です。ところで、
展示されているものの中に、実は海藻ではないものが含まれているのです。そ
れは海草です。では、いったい海草とはどんなもので、海藻と何が違うのでし
ょう。今回のマリンサイエンスギャラリーの案内役でもある「藻じゃ~ず」の
一員、アマモンにインタビューしてみます。

( 青 木 )アマモン、よろしくね。
(アマモン)こちらこそ!「藻じゃ~ず」を代表して、海草についていろいろ
教えちゃいますよ。

( 青 木 )早速だけど、どっちも「かいそう」じゃ、区別しづらいね。
(アマモン)海草は、海藻と区別するために「うみくさ」と呼ばれることもあ
るんだよ。

( 青 木 )海藻と海草って何が違うの?
(アマモン)うん。実は、海草は種子植物なんだ。だから、海草と海藻は、か
らだのつくりに違いがあるんだ。海藻の場合、根茎葉の区別がなく、例えば磯
の岩場に付着している根っこのような部分は、体を固定させるだけのはたらき
なんだよ。それに対して、海草は陸上植物のように根から水分や栄養分を吸収
するし、花を咲かせることもできるんだ。海から陸に進出した祖先が、また海
に戻っていった生きものだから、基本的な構造は陸上植物とほとんど変わらな
いんだよ。

( 青 木 )へえ。それって、まるで哺乳類のクジラみたいだね。
(アマモン)そのとおり!まさにクジラやイルカと同じような進化の道筋をた
どった生きものといえるんだ。ちなみに、海草のなかまがどのように祖先から
分化していったかは、遺伝子解析で明らかにかっているんだよ。これまでの分
子系統学的研究から、海草はアマモ科Zosteraceae, トチカガミ科Hydrocharit
aceae, ベニアマモ科 Cymodoceaceae という3つのグループが別々に海に進出
し適応していったと考えられているんだ。

( 青 木 )別々に海に再進出したの?
(アマモン)そうだよ。詳しくはまだ研究中だけど、古海洋学的な知見からい
うと、大昔の大陸分断の過程で日本海は淡水であったと考えられるんだ。だか
ら、温帯海草種の祖先は日本海側で水中に進出して分化したとする説もあるん
だよ。それに、日本沿海は種の多様性が高いことから、もしかしたら海草の祖
先のひとつは日本で派生したのかもしれないんだ。

( 青 木 )日本にはそんなに海草の種類が多いの?
(アマモン)そうなんだ。まず、地球上で名前が付けられている種子植物は23
万種以上なんだけど、海草は世界でたった60種足らずなんだよ(Cronquistの
分類体系では、7科12属57種)。そのうち、日本周辺の海域にあるのは、大
場・宮田(2007年)のリストによると、5科10属21種となっているんだ。亜
種・変種・雑種を含めると30分類群もあるんだ。このように日本沿岸は、フィ
リピン諸島やオーストラリア西岸と並んで、世界でも最も海草相の豊富な地域
なんだよ。その理由は、日本列島が南北に長く伸び、暖流と寒流が流れこんで
いることがあげらるよ。

( 青 木 )海藻と海草は具体的にはどうやって見分けるの?
(アマモン)根の部分をよく観察してみると、そこに細い毛のような根(根
毛)があるよ。区別しづらい場合は葉っぱを観察するといいね。海草は維管束
植物だから、葉の表面に葉脈があるんだ。それに、海草は単子葉類だから、ス
スキやイネのように葉の基部が茎を包んでいる部分(葉梢)があるんだよ。も
し、幸運にも花や種子まで観察できれば完璧だね。

( 青 木 )千葉県で見ることができる海草にはどんな種類があるの?
(アマモン)まず、砂泥質の場所に生育するものとしては、アマモZostera ma
rinaとコアマモZostera japonicaがあるんだ。どちらも扁平で平行脈をもった
リボン状の葉をもっているよ。アマモの葉脈は5~7本で、葉の長さ10~140cm、
葉幅は3~8mmなんだ。コアマモは葉脈が2~3本で、少しアマモより小ぶりなん
だ。葉の長さ10~30cm、葉幅は1~1.5mmしかないよ。それに、コアマモの花序
(花の並び)には、葯隔付属突起(やくかくふぞくとっき)という裂片がある
のも区別点なんだ。岩礁地に見られるのは、エビアマモPhyllospadix japonic
usとスガモPhyllospadix iwatensisだよ。どちらも潮間帯下部から潮下帯の岩
礁に生育していて、激しい波浪にも耐えられるんだ。エビアマモは、葉脈が3
本、葉の長さ20~90cm、葉幅は2~4mmなんだ。太平洋側では、三重県から茨城
県北部で見られるんだ。対するスガモは、葉脈が3~5本、エビアマモより大き
くて葉の長さは最大1.5m、葉幅は3.5~4.0mmなんだ。こちらは太平洋岸で北海
道からこの海の博物館のある勝浦までで見られるんだよ。

( 青 木 )じゃあ、アマモ・コアマモと、エビアマモ・スガモは、生育場所
で見分ければいいんだね。
(アマモン)そうだね。形態的な違いで見分けるなら、一番わかりやすいのは
種子の形だよ。アマモ・コアマモはアマモ属で、種子は米俵みたいな形をして
いるんだ。エビアマモ・スガモはスガモ属で、種子の形は錨形なんだよ。

( 青 木 )他にはどんな海草があるの。
(アマモン)千葉県では、あとは河口などの汽水域に生えるイトクズモZannic
hellia palustris、カワツルモRuppia maritimaが見られるんだ。館山では、
楕円形で対生(同じ場所から2枚出る)の葉をもつオオウミヒルモHalophila m
ajor、ヤマトウミヒルモHalophila nipponicaも見つかっているよ。

( 青 木 )これらの中では、やはりアマモが有名だよね。
(アマモン)うん。ボクもそう思う!アマモは古くから人々の生活に密着して
いたんだよ。例えば、昔は、アマモの葉を縄や蓑に編んだり、製塩に用いたり
したんだよ。だから、モシオグサ(藻塩草)とも呼ばれるんだ。他にも、リュ
ウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ(竜宮の乙姫の元結の切はずし)と
いう、生きものの中では最も長い名前は有名だね。

( 青 木 )でも、今は利用されることはないんでしょう?
(アマモン)そうだね。でも、海の生きものたちにとっては、なくてはならな
いものなんだ。アマモの生える砂地や泥地では、生きものが隠れる岩などが少
ないんだ。でも、アマモがたくさん生えていれば、生きものたちが隠れられる
立体的な空間ができるんだ。そこでは、葉の上にヨコエビやワレカラなどの小
さな甲殻類の仲間も住めるし、ウミタナゴやアミメハギなどの魚たちも生活で
きるんだ。このようなアマモが密生している場所を「アマモ場」というんだけ
れど、アマモ場(の生態系)はとても大切なんだよ。日本全国でも、このアマ
モ場を保全していこうとする機運が高まってきているんだ。嬉しいことだね。

( 青 木 )アマモンはとっても詳しいんだね!すごく勉強になったよ。マリ
ンサイエンスギャラリーでは、「藻じゃ~ず」から海藻や海草について、もっ
ともっと教えてほしいなあ。
(アマモン)たくさんの方が来てくれるといいな。展示以外にも、いろんなイ
ベントがあるんだ。企画展示の期間中には、海の体験コーナー「海藻おしばを
作ろう」や講座「海藻おしばを作ろう」が開催されるから、こちらもよろしく
ね。今日はどうもありがとう!


企画展示「平成25年度マリンサイエンスギャラリー 海藻いろいろ-千葉県の
豊かな海から-」では、他にも千葉県で見られる海藻に焦点を当て、その種類
や海の中での役割、人の暮らしとの関わりなど、わかりやすく紹介しています。
開催期間は5月6日までですので、たくさんの方のご来館を、職員一同お待ちし
ています。
                    (上席研究員 青木慎哉)


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│★職員の異動と25年度の海の博物館の職員の専門分野
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★職員の異動

 3月31日及び4月1日付けで、海の博物館の職員の異動がありました。新しい
職員の自己紹介は次号に掲載したいと思います。


【転入】

主任上席研究員 乃一 哲久(中央博物館本館より)
主任上席研究員 立川 浩之(中央博物館本館より)
庶務(副主幹) 近藤 佳純(勝浦若潮高等学校より)
体験交流員   原田 佳世子(新規採用)

【転出】

上席研究員  青木 慎哉(千葉県教育庁へ)
上席研究員  村田 明久(中央博本館【併任:生物多様性センター】へ)
庶務(副主査)大石 岳 (中央博物館本館へ)
体験交流員  柏木 真弓(退職)

★26年度の海の博物館の職員の専門分野

 26年度に在籍する職員の専門分野は次のとおりです。海の生きものに関する
質問等があるときに参考にしてください。

分館長     原  正利【植物(森林生態学)】
主任上席研究員 本吉 正宏【歴史(史学・博物館学)】
主任上席研究員 乃一 哲久【魚(魚類学・水産学)】
主任上席研究員 川瀬 裕司【魚(魚類行動学)】
主任上席研究員 立川 浩之【刺胞動物イシサンゴ類(海洋生物学)】
主任上席研究員 奥野 淳兒【エビ、ヤドカリなど(甲殻類学)】
主任上席研究員 菊地 則雄【海藻(藻類学)】
主任上席研究員 柳  研介【イソギンチャクなど(刺胞動物学)】


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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただき
 ありがとうございました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
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