千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより第118号
配信日時:2014/12/01 07:30
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第118号
                          2014年12月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/


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│目次
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★写真展「ー海の宝石ーウミウシの世界」開催中です
★12月・1月の開館・休館日のお知らせ
★お正月限定!チーバくんがお年玉プレゼント
★11、12月の行事案内
★研究員ノート -ギンカクラゲのクラゲ-
★海の博物館周辺の情報


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│★写真展「ー海の宝石ーウミウシの世界」開催中です
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 ウミウシは、巻貝でありながら、体を守るための貝殻を退化させてしまった
不思議な生きものです。近年、水中写真愛好者の間では、さまざまな色や模様
を持ったウミウシのなかまは、たいへん人気のある生きものになっています。
 今回の写真展「ー海の宝石ーウミウシの世界」では、千葉県をはじめ日本各
地の海に生息するさまざまなウミウシ約200種を、当館の研究員が撮影した写
真により紹介します。一生泳ぎ続けるウミウシ、二枚の殻をもつウミウシ、ウ
ミウシを食べるウミウシなど、珍しい種類も登場します!

  開催期間:平成27年2月1日(日)まで
  場  所:海の博物館研修室
  詳しくは海の博物館ホームページの企画展示の案内をご覧ください
  http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=393#


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│★ 12月・1月の開館・休館日のお知らせ
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 ●新年は1月2日から開館します。

  12月、1月には臨時休館日があります。

   12月の臨時休館日 16日(火)・17日(水)
   年末・年始の休館日 12月28日(日)~1月1日(木)
    1月の臨時休館日 14日(水)・15日(木)

  詳細は海の博物館ホームページ開館日カレンダーをご覧ください。
   http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=403


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│★お正月限定!チーバくんがお年玉プレゼント
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 お正月には海の博物館にチーバくんがやってきます!そして、写真展「ー海
の宝石ーウミウシの世界」観覧記念のウミウシグッズを差し上げます。

 平成27年1月2日(金)~4日(日)、11:00~、13:30~
 各回50個(中学生以下が対象):なくなり次第終了します。


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│★11、12月の行事案内
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 海の博物館では、さまざまな行事を開催しています。
 皆様の参加をお待ちしております。

 詳しくはこちらをご覧下さい
   http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=394
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【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海にまつわるさまざまなメニューにチャレンジす
る行事です。
  12月  6日(土)「微小貝を探そう」
  12月 20日(土)「海で見つけた材料でオリジナルオブジェを作ろう」
  1月 10日(土)「コーラルプリントをしよう」
  1月 24日(土)「海藻おしばを作ろう」

  各日11:00からと13:30からの1日2回、約20分間開催します。
     (当日申込み。定員6名。定員を超えた場合は抽選となります)

  *都合により、メニューが変更になる場合があります。


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│★研究員ノート  -ギンカクラゲのクラゲ-
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「ギンカクラゲのクラゲ」
 ギンカクラゲというクラゲの名前を聞いたことがあるでしょうか? ギンカ
クラゲは、中心の数センチの白い円盤から無数の青い触手が放射状に伸びたよ
うな姿をしており、名前の謂れとなっている円盤はキチン質で比較的硬く、こ
れが浮きの役割を果たしています。ギンカクラゲは全世界の外洋の海面を漂っ
て生活していますが、時折、風や潮の流れによって沿岸に打ち寄せられること
があります。房総半島では、主に外洋に面する外房で、春先から秋口にかけて、
海からの風が強く吹いた日に海岸に打ち上げられることがあります。頻繁に海
辺に出かける方には割りと知られたクラゲですが、実は、その一生はまだ知ら
れておらず、謎多きクラゲの一つです。
 唐突ですが、実は私達が普段目にするギンカクラゲは正確には「クラゲ(ク
ラゲ期)」ではありません。通常、「クラゲ」は、イソギンチャクのような体
をした「ポリプ」から生み出されます。例えばミズクラゲでは、小さなイソギ
ンチャクのような数ミリの「ポリプ」は無性生殖でどんどん数を増やします。
水温の変化等をきっかけに、「ポリプ」は横にくびれ、まるでお皿を何枚も重
ねたような体(「ストロビラ」)になります。このお皿一枚一枚が「ポリプ」
から一枚、また一枚と離れていって「エフィラ」と呼ばれる「クラゲ」の赤ち
ゃんになります。「エフィラ」は海中を漂いながら大人の「クラゲ」に成長し
ます。「ポリプ」の根本はそのまま残って、再び無性生殖で増えていきます。
一方、「クラゲ」にはオスとメスがあって、それぞれ生殖腺を発達させて有性
生殖を行います。メスは受精した卵をしばらく保育していて、メスの傘のなか
で、「プラヌラ幼生」という幼生になります。しばらくすると「プラヌラ幼
生」は泳ぎだして、硬いものにくっつくと再びポリプに変態します。まとめて
しまうと、「ポリプ」は無性生殖を行ってクラゲを生み出し、「クラゲ」は有
性生殖を行って、再びポリプを生産するという生活をしているのです。中には、
「プラヌラ幼生」がそのまま「クラゲ」に変態するものもいますが、ポリプ自
体が有性生殖を行うものは1種類もありません。また「クラゲ」は生殖を終え
ると死んでしまいますが、「ポリプ」はずっと生き続けます。
 さて、話を元に戻すと、ギンカクラゲは「クラゲ」ではない、というのは、
実は私達が目にするギンカクラゲは、有性生殖を行う「クラゲ」ではなく、白
い円盤に多数の「ポリプ」がぶら下がった「ポリプ」の群体なのです。ぶら下
がった「ポリプ」は、青い触手のような細長い形の「ポリプ」や、エサを食べ
る専門の「ポリプ」など、いくつかのタイプかあります。餌を食べる「ポリ
プ」の基部には、「クラゲ芽」と呼ばれる「クラゲ」のもとができます。「ク
ラゲ芽」は、「ポリプ」にくっついたまま成長し、ある程度の大きさになると
「ポリプ」から切り離されて、「クラゲ」となって泳ぎ出します。これがギン
カクラゲの真の「クラゲ」です。遊離した直後の「クラゲ」はとても小さく、
1 mm程度しかありません。海辺に打ち上がったギンカクラゲは、時折大量の
「クラゲ芽」をつけており、そのようなギンカクラゲをしばらく水槽に入れて
おくと、「クラゲ」がどんどん水槽の底に落ちてきます。ですので、ギンカク
ラゲの「クラゲ」は小さいものの、見つけること自体はさほど難しいことでは
ありません。
では、なぜ「ポリプ」も「クラゲ」も容易に見つかるギンカクラゲの一生が、
謎のままなのでしょうか? その理由は、飼育が極めて難しいからなのです。
 通常、クラゲの仲間の「ポリプ」は大変丈夫で、滅多なことでは死にません。
ほとんど不老不死です。しかし、ギンカクラゲは「ポリプ」の群体のくせにと
ても弱く、飼育下では長くても数日で死んでしまいます。世界の研究者、水族
館関係者が飼育を試みていますが、ギンカクラゲの長期飼育は未だ成功してい
ません。なぜ飼えないのかさえよくわからないのです。また、ギンカクラゲの
「クラゲ」の飼育も難しく、これまでギンカクラゲの有性生殖は一度も観察さ
れていません。このようなことから、ギンカクラゲは一体どこで有性生殖を行
い、「プラヌラ幼生」はどこでどのようにして「ポリプ」へと変態していくの
か、全く解明されていないのです。
 ギンカクラゲの「クラゲ」は、野外で採集された記録がいくつかあります。
そのうち、成熟したクラゲは、パプアニューギニアで傘の高さが2 mmの生殖腺
が発達した成熟「クラゲ」が採集されたという報告と、19世紀に地中海で発見
された、傘高6.5 mmの成熟「クラゲ」の報告の、わずか2例が知られるのみで
す。あまりに大きさが違うので、別種ではないかという研究者もいますが、情
報が少なく判断が難しいところです。一方、「ポリプ」の群体から得られた
「クラゲ」は、1984年になって、20日間飼育できたことが報告されました。し
かし、このとき「クラゲ」をどのように飼育したのか、どのように成長したの
か、等の詳細な情報は公表されませんでした。その後、さまざまな研究者がこ
の「クラゲ」の飼育に挑戦していますが、いずれも長期間の飼育を成功させる
ことはできていません。
 さて、このギンカクラゲの謎を解き明かすには、成熟した「クラゲ」から子
ども(プラヌラ幼生)が生まれるまでの間を観察する必要があります。それに
は「クラゲ」を長期間飼育し、多くの成熟「クラゲ」を入手できるようになる
ことが必要です。そこで、私もこの「クラゲ」飼育に挑戦してみました。
 初めの挑戦は、2002年の7月でした。このとき、海の博物館の前の海辺に打
ち上がったギンカクラゲを博物館に持ち帰って水槽に入れたところ、翌日、本
体は死んでしまったものの、水槽の底には放たれた大量の「クラゲ」が沈んで
いました。これらをシャーレに移して観察を続けましたが、次々と「クラゲ」
は死んでいき、飼育開始から5日後には全滅してしまいました。最後まで残っ
た「クラゲ」にも口や触手は形成されず、成熟には程遠い段階でした。次の挑
戦のチャンスは、今年の夏に巡ってきました。8月に上記と同様にして得られ
た「クラゲ」は、数千個体はあったと思われます。今回は、この中から大きく
て元気の良さそうな6個体だけを選んで丁寧に飼育することにしました。また、
ギンカクラゲは、「ポリプ」も「クラゲ」も体内に「共生藻」を持っているた
め、十分に光を当てる工夫もしてみました。その結果、今回は約2ヶ月間とい
う長期飼育に成功しました。「クラゲ」は光を浴びながら少しずつ大きくなり、
1ヶ月ほど経過すると、2本の触手が現れ、口が発達してきました。口ができた
ということは、エサを食べることができるようになったということです。そこ
で、さまざまなエサを与えてみました。しかし、ついに「クラゲ」はエサを食
べることはなく、飼育開始40~50日後を成長のピークにして、あとはどんどん
と体が縮んでいき、2ヶ月後には肉の塊のようになってしまいました。この肉
塊が再び成長を始めることはありませんでした。今回の飼育実験では、目標の
成熟「クラゲ」を得ることはできませんでしたが、公表されたものを見る限り、
飼育できた期間は世界最長記録です。また、今回の飼育をとおして、「最初に
できるだけ大きくて元気な個体を選ぶこと」、「しっかりと光をあてること」
などが、飼育のポイントになりそうだということがわかってきました。実際の
野外での生活では、「クラゲ」はもう少し成長してから切り離されるのかもし
れません。そして、少なくとも口が形成されるまでは、共生藻から供給される
栄養に頼って成長するものと思われます。今後、成熟「クラゲ」を得るために
は、エサの工夫が必要になってきそうです。ギンカクラゲの謎の解明に向け、
次のシーズンには新たな挑戦を始めたいと思います。

追記: クラゲの姿など、文面だけではなかなか伝わりにくいと思います。ギ
ンカクラゲの「クラゲ」については、当館で平成25年3月に発行した「海の生
きもの観察ノート11 クラゲを観察しよう」に、写真・イラスト付きで紹介さ
れています。当館ウェブサイトからダンロードできますので、是非、ご一読を。
また、この飼育の顛末については、来年2月14日から開催のマリンサイエンス
ギャラリー「クラゲ展」でも紹介する予定です。お楽しみに。
                                         (主任上席研究員 柳 研介)


                                          (主任上席研究員 柳 研介)


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│★海の博物館周辺の情報
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●お正月、初日の出スポット

 海の博物館の所在する勝浦市は房総半島の南東部に位置していることから、
太平洋から昇ってくる日の出を見ることができます。
 おすすめは勝浦市街地から東に位置する「官軍塚」とその近くにある勝浦城
址(八幡岬公園)、そして海の博物館の近くの「鵜原理想郷」でしょう。
 これらの場所は海岸の高台にあって美しい日の出を眺めることができます。
    ※海の博物館は、1月2日から平常開館しています。

 官軍塚と八幡岬公園、鵜原理想郷については以下のページをご覧ください。

「官軍塚」(勝浦市のホームページになります)
http://www.city.katsuura.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=29183

「八幡岬公園(勝浦城跡)」(勝浦市のホームページになります)
http://www.city.katsuura.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=29182

「鵜原理想郷」(勝浦市のホームページになります)
http://www.city.katsuura.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=29499


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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうご
ざいました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
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    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
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