千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
『海からのたより』 第89号
配信日時:2012/07/01 00:00
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 海からのたより 第89号         2012年7月1日発行

      千葉県立中央博物館分館 海の博物館
      http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/


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│目次
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★収蔵資料展「海のカニ・川のカニ」まもなく開催します!
★海の博物館職員が論文賞「Luigi Provasoli Award」を受賞しました!
★7、8月の行事案内
★休館日のお知らせ
★研究員ノート  - 深海の大きなカニ -
★海の博物館周辺の情報


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│★収蔵資料展「海のカニ・川のカニ」まもなく開催します!
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 海の博物館では、夏休み期間中に収蔵資料展を開催します。今年は、千葉県
の海や川にすむカニを集め、夏休みに楽しく学べる展示を行います。房総の海
で採集した標本をはじめ、生きているカニも展示いたします。なお、クイズに
お答えしていただいた方には、もれなく海の博物館特製缶バッジを差し上げま
す。皆様お誘い合わせの上、ぜひお越しください。お待ちしています!

【収蔵資料展 夏休みスペシャル「海のカニ・川のカニ」】
 会期:平成24年7月14日(土)~9月2日(日)

 詳しくは海の博物館ホームページの企画展示の案内をご覧ください
 http://www2.chiba-muse.or.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=bbs_view_main_post&post_id=136&block_id=4853#_4853


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│★海の博物館職員が論文賞「Luigi Provasoli Award」を受賞しました!
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 当館の宮田昌彦分館長及び菊地則雄上席研究員が共著者として加わり、アメ
リカ藻類学会が発行する学会誌「Journal of Phycology」2011年10月号に掲載
された次の論文が、2011年のアメリカ藻類学会誌論文賞「Luigi Provasoli Aw
ard」を受賞しました。

Sutherland, J. E., S. C. Lindstrom, W. A. Nelson, J. Brodie, M. D. J. 
Lynch, M. S. Hwang, H.-G.   Choi, M. Miyata, N. Kikuchi, M. C. Oliveir
a, T. Farr, C. Neefus, A. Mols-Mortensen, D. Milstein and K. M. Muller.
 2011. A new look at an ancient order: generic revision of the Bangial
es (Rhodophyta).  Journal of Phycology 47: 1131-1151.
(古くからの目における刷新:紅色植物門ウシケノリ目の属の改訂)

 この論文では、私たちが食用としているノリ(海苔)の原料となる藻類であ
るアマノリ属を含む、ウシケノリ目というグループの、分子系統解析に基づく
属の再編を提案しています。ウシケノリ目には、体が葉状のアマノリ属と、円
柱状のウシケノリ属の2属が、古くから認められてきましたが、近年のDNA解析
を用いた研究結果からは、さらに多くの属に分けられる可能性が高いことがわ
かってきました。そこで、宮田、菊地を含む世界7カ国から15名のウシケノリ
目の分類の研究者が参集し、数回の会議を行って、グローバルにウシケノリ目
の属の再編を行うための協議をしました。その結果をまとめたものがこの論文
で、従来の2属から、15属に再編される提案がなされました。日本産のアマノ
リ属は29種が知られていますが、今回の研究に用いられた22種については、4
つの属に分かれることになりました。残りの7種の所属についても、今後、研
究が進められる予定です。

 この論文が受賞した「Luigi Provasoli Award」は、アメリカ藻類学会第16
代会長の故Luigi Provasoli博士に敬意を表して設立された賞で、当該年にJou
rnal of Phycology誌に掲載された中で卓越した論文に与えられます。この論
文は、各国の主なウシケノリ目の分類研究者がグローバルな共同研究として行
ったものであり、しかもノリという経済的にも重要な仲間を含む分類群を扱っ
た研究であることなど、2011年に掲載されたものの中で最もインパクトのある
論文として評価されました。


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│★7、8月の行事案内
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 海の博物館では、さまざまな行事を開催しています。
 皆様の参加をお待ちしております。

申込方法等、詳しくはこちらをご覧下さい
http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=533

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【磯・いそ探検隊】
 研究員の案内で当館周辺の自然を散策し、主に磯の生きものを観察します。
定員各回15名。
   7月21日(土) 11:00~12:00
   8月 3日 (金)  11:00~12:00
   8月17日 (金)  10:00~11:00
   8月18日 (土)  10:30~11:30
   (当日申込み。先着順です。)

【みんなで工作 海の生きもの】
 海の生きものにちなんだ簡単な工作を行います。どなたでもお気軽に参加で
きます。当日申込です。 ※各回とも定員は15名です。
 7月16日(月・祝)14:00-15:30「エコデコイ こがもちゃんの色塗り」
 7月22日(日)    10:45-11:45 13:30-14:30「コーラルプリントをしよう」
 7月28日 (土)     10:45-11:45 13:30-14:30「コーラルプリントをしよう」
 8月 5日 (日)   14:00-15:30「エコデコイ こがもちゃんの色塗り」
 8月14日 (火)     10:45-11:45 13:30-14:30「コーラルプリントをしよう」

【タッチプール】
 飼育室で色々な生きものに触ってみましょう。定員各回10名。
 8月 11日(土) 11:00~、11:30~、13:00~、13:30~
 8月 12日(日) 11:00~、11:30~、13:00~、13:30~
 8月 13日(月) 11:00~、11:30~、13:00~、13:30~
 (当日申込み。定員になりしだい締め切りとなります)


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│★休館日のお知らせ
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 7月の休館日は次の通りです。
    7月2日(月)、9日(月)、17日(火)、23日(月)、30日(月)

 16日(月・祝)の「海の日」は開館とし、17日(火)が休館となります。
 詳しくは海の博物館ホームページの開館日カレンダーをご覧ください
 http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=403


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│★研究員ノート  - 深海の大きなカニ -
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 海の博物館のある勝浦には、私たちの食生活を楽しませてくれるさまざまな
「海の幸」があります。そのように聞くと、カツオ、イセエビ、サザエ、アワ
ビを連想する方が多いかもしれませんが、深海性の赤くて眼の大きな魚である
キンメダイもそのひとつ。勝浦の海岸線から10?30 km沖の海の底には、水深10
00 mを越えるふたつの海底谷(鴨川海底谷と勝浦海底谷)の間で山のように盛
り上がった地形があります。山のてっぺんにあたる部分で水深300 mほどです。
このまわりがキンメダイを漁獲する場所、いわゆる「キンメ場」となっていま
す。このような地形では、プランクトンなど餌となる小さな生きものを含んだ
水が海底から上がってくるため、さまざまな生きものが集まります。勝浦沖の
キンメ場では、キンメダイを捕りすぎないようにするために「立縄(たてな
わ)」とよばれる一本釣しか行いません。これには、キンメダイ以外の深海魚
がかかる他、キンメ場でくらす深海性の大きなカニが釣り糸にからまってきま
す。これまでに地元の漁師さんから海の博物館に提供していただいたこのよう
なカニに、オオホモラとオオエンコウガニがいます。

 「オオホモラ」とは聞き慣れない名前ですが、このカニの科名である「ホモ
ラ科」に由来しており、その名のとおり、この科のカニとしては最大級です。
甲の輪郭は縦に長く、大きなものでは長さ12 cm、幅10 cmに達します。甲に比
べてはさみや脚は細長く、大きな個体の脚を広げると幅50 cmになるものもい
ます。甲や脚の表面は鋭い棘に覆われており、重厚な体のつくりをしています
が、最後の一対の脚が他の脚よりも短くなっていて、これでカイメンなどを背
負って自分の甲を隠します。日本では房総半島から種子島にかけての太平洋岸
に分布し、海外では台湾とハワイからしか知られていません。最も浅いところ
では水深80 mから採集されたこともあるようですが、普通250?300 mに生息し
ています。

 一方、オオエンコウガニのほうは、典型的なカニ型をしたカニで、類縁関係
は近くありませんが、サワガニ科のサワガニが巨大化したような印象を受けま
す。エンコウとは「猿猴」と書き、サルの意味です。その名のとおりサルの顔
のように赤い体色のものもいますが、よく見られるのはオレンジ色に近い個体
です。甲の幅は大きなものでは20 cm近くなり、このような大型個体では脚を
広げると60 cmに達します。甲の表面は部分的に顆粒状の突起に覆われていま
す。房総半島から土佐湾にかけての日本の太平洋岸と台湾からしか知られてい
ません。100 mより浅いところから1000 mまでの水深で記録されていますが、
普通、水深500?800 mに生息しています。

 両種とも房総半島沖の深海域には数多く生息していることが予想されますが、
サンプリングの方法がないため、偶発的にキンメダイ漁の釣り糸にからまって
得られた個体は、極めて貴重な資料です。海の博物館では、今月14日(土)か
ら9月2日(日)まで、収蔵資料展「夏休みスペシャル 海のカニ・川のカニ」
を開催します。この展示では、普段、博物館の収蔵庫で大切に保管されている
オオホモラとオオエンコウガニの標本をお披露目します。この2種の標本は、
今回の収蔵資料展の中では大きさからすると展示品のツートップ。間近で見る
深海のカニは迫力いっぱいです。ぜひ実物をご覧になって下さい!
                             (奥野淳兒)


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│★海の博物館周辺の情報
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●海水浴場の開設
 今年も博物館周辺では海水浴場が開設されます。透明度抜群の勝浦の海をお
楽しみください。
 ・鵜原海水浴場   7月21日(土)~8月26日(日) 「日本の渚百選」
 ・守谷海水浴場   7月21日(土)~8月26日(日) 「日本の渚百選」
                                                   「快水浴場百選」
 ・串浜海水浴場   7月21日(土)~8月18日(土)
 ・興津海水浴場   7月21日(土)~8月26日(日)
 ・勝浦中央海水浴場 7月21日(土)~8月26日(日)
 ・豊浜海水浴場   7月27日(金)~8月15日(水)

   詳しくはこちらをご覧ください
    http://www.city.katsuura.chiba.jp/beach/index.html


●鵜原の大名行列
 海の博物館近くの勝浦市鵜原地区では毎年7月第4土曜日が八坂神社の例祭で
す。この時に「鵜原の大名行列」(県記録選択民俗文化財)が行われます。
 これは大名行列を形取ったもので、「お浜降り」の御輿渡御に供奉して神社
から海岸まで練り歩きます。勇壮なケヤリさばきなど ぜひ一度ご覧ください。
 今年は7月28日(土)です。

  渡御日程(予定)  
 11:00 鵜原八坂神社    出発 
 12:00 鵜原駅前      休憩 
 14:00 鵜原海岸      お浜おり  
 14:40 鵜原海水浴場鳥居前 休憩 
 16:00 鵜原八坂神社    到着 

   詳しくはこちらをご覧ください。
    http://www.city.katsuura.chiba.jp/event/daimyou.html


●『かつうら若潮まつり花火大会』のお知らせ
 勝浦市では、今年度も『かつうら若潮まつり花火大会』を開催いたします。
その他、興津湾灯籠流しなどのイベントを予定しています。
 開催日時 8月12日(日)午後7時30分~8時30分
  ※荒天の場合は、13日に順延(13日が順延の場合は14日に順延)
 会場 勝浦漁港周辺
  ※会場内の場所取りをする場合は午後3時以降となります。
     詳しくはこちらをご覧ください
      http://www.city.katsuura.chiba.jp/event/wakashio.html


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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただき
 ありがとうございました。

 海の博物館では、この記事で紹介した生きものを、博物館の展示室で順次紹
介しています。どうぞお見逃しなく!
 

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発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
    http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU
お問い合わせはこちらへ umihaku@chiba-muse.or.jp
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