千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第132号
配信日時:2016/02/01 08:30
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 海からのたより 第132号            2016年2月1日発行

      千葉県立中央博物館分館 海の博物館
      http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/



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│目次
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★マリンサイエンスギャラリー「毒をもつ海の生きもの」、間もなく開催!
★2、3月開催行事のご案内
★研究員ノート -養殖に使用されるナラワスサビノリの学名の変更-
★海の博物館周辺の情報

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│マリンサイエンスギャラリー「毒をもつ海の生きもの」、間もなく開催!
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 平成27年度分館海の博物館マリンサイエンスギャラリー「毒をもつ海の生
きもの-食べるため・食べられないため-」は、2月27日(土)から開催し
ます。
 生きものの中には、体内に毒を貯え、エサを食べるためや逆に外敵から身
を守るために、これを利用する種類が少なくありません。海の生きものに
限っても、魚やタコ、カニ、ヒトデなど、さまざまな分類群で毒をもつ種類
が知られています。しかし、毒をもつ海の生きものを必要以上に怖れること
はありません。かれらはあくまで「食う・食われる」という生きものどうし
のかかわりの中で利用するための毒を貯えているにすぎず、海に侵入してく
る私たち人間を攻撃しようと狙っている生きものなど、1種類たりともいな
いのです。したがって、こちらが注意をすれば、磯遊びや釣りなどで怪我を
回避することは十分に可能です。
 この展示では、千葉県の海に分布する種類を中心に、これらの有毒海洋生
物を紹介します。この展示をご覧になった皆様からかれらに対する怖さを取
り除くばかりでなく、親しみすら感じてもらえる展示となるよう、担当研究
員が粉骨砕身、努力しております。

 http://www2.chiba-muse.or.jp/index.php?key=bbw7nxvu1-4853#_4853


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│★2、3月開催行事のご案内
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【観察会】
「海藻を観察しよう」
 海の博物館の前の磯で見られる海藻を観察します。
 対象:中学生以上 定員:20名
 日時:3月12日(土)11:00~13:30
 (申込み締切日:2月27日(土)
 参加費:無料。ただし、傷害保険料として50円必要です。

【講座】
「毒のある生きものを利用するエビやカニ」
 イソギンチャクやウニなど、毒のある動物と共生するエビやカニを紹介し
ます。
 対象:中学生以上
 日時:3月13日(日)13:00~15:00
(申込み締切日:2月28日(日)
 参加費:無料。

 ※観察会.講座のお申し込みは、ハガキもしくは電子メール、FAXで、以
下を明記の上、当館あてにお送り下さい。また、海の博物館受付でも申込み
できます。 
   1. 参加希望の行事の月日と名称
   2. 氏名(参加者全員分)
   3. 年齢
   4. 郵便番号・住所
   5. 電話番号

【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海にまつわるさまざまなメニューにチャレンジ
する行事です。
  2月  6日(土)「海藻おしばを作ろう」
  2月 20日(土)「コーラルプリントをしよう」
  3月  5日(土)「オリジナルオブジェを作ろう」
  3月 19日(土)「微小貝を探そう」

 ◯各日11:00からと13:30からの1日2回開催します。約20分間の行事です。
  ◯当日申込み。定員6名。先着順です。
 ※入場料のほか、材料費50円/人が必要です。

  *都合により、メニューが変更になる場合があります。


  海の博物館の行事について、詳しくはこちらをご覧下さい。
  http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=533


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│★研究員ノート -養殖に使用されるナラワスサビノリの学名の変更-
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 生きものの名前のひとつに、世界共通で使用できる「学名」があります。
学名は国際的に決められた規則「命名規約」に従ってアルファベット表記し、
普通は研究者などの専門家しか使いませんが、日本以外に見られる生きもの
を紹介するときなどは学名をローマ字のような音読みでカタカナ表記して使っ
たりします。学名に関しては命名規約で全てが決められていて、それに違反
してはなりません。私の専門である海藻や、陸上の植物、キノコ(菌類)な
どの学名は「国際藻類・菌類・植物命名規約」に従って付けることになりま
す。また、動物には「国際動物命名規約」があり、動物の学名を付けるとき
はそちらに従います。

 さて、2011年に、私が研究しているノリの仲間は、DNA解析結果に基づいて、
それまでアマノリ属 Porphyra というひとつのグループだったものが、8つの
属に分けられました。そして、日本産の多くの種類は、養殖に使用されてい
るスサビノリやアサクサノリなどを含めてPyropia属というグループに移りま
した。そして、日本の多くのノリがPyropia属に移されたことから、Pyropia属
を「アマノリ属」と呼ぶことが提唱されています。

 現在日本で養殖に使用されているノリのほとんどは、スサビノリの一品種
のナラワスサビノリというノリです。ナラワスサビノリについては、本メー
ルマガジンの2014年11月1日号で紹介しました(バックナンバーは、海の博物
館ホームページのトップページの「メールマガジンのご案内」から見ること
ができます)。スサビノリの学名は、以前はPorphyra yezoensis(学名は他
と区別するために、普通、斜体で記されることが多いです)でしたが、2011年
の論文で、Pyropia属に移り、Pyropia yezoensis という学名に変わりました。
それでは、スサビノリの一品種であるナラワスサビノリの学名はどうなるの
でしょうか?

 これらの学名の変更は、当然、命名規約に従っています。命名規約の中に、
ナラワスサビノリのような「スサビノリ」という種類の中の一品種は、
「スサビノリ全体の中の一部である」というような条項があるので、ナラワ
スサビノリの学名Porphyra yezoensis f. narawaensis ("f."は"品種"の意
味)は、スサビノリがPyropia yezoensisに変わったときに、当然、自動的に
Pyropia yezoensis f. narawaensis になるものと考えて、勝手にPyropia 
yezoensis f. narawaensis を使ってしまったりしていました。ところが、
「ナラワスサビノリの学名についてもきちんと変更を発表しないと自動的に
は変わらないのではないか」というご意見を聞き、命名規約に詳しい方に確
認したところ、「ナラワスサビノリについても正式に変更を発表しないとダ
メ」ということになってしまいました。

 養殖で頻繁に使用されるノリの学名がきちんとしていないと、学術的な面
だけでなく産業上でもいろいろと問題があり、早急に正しい学名を正式に発
表しておかなくてはなりません。そこで、仕方なく(?)、ナラワスサビノ
リと、アサクサノリ Pyropia tenera の一変種であるオオバアサクサノリ
 Porphyra tenera var. tamatsuensis("var."は"変種"の意味)について、
Pyropia属への変更の論文を書き始めました。命名規約をよ~く読んで、間違
いのないように・・、と進めていたとき、ナラワスサビノリの正基準標本
(新種などを発表するときに必ず指定しなければならない標本で、命名規約
で指定の仕方が決められている)が、最初に新品種として発表された1984年
の論文では、命名規約に違反して指定されてしまっていることに気付きまし
た。正基準標本はひとつの日に採集された同じ分類群(種、品種、変種など)
のもの(ひとつでも複数の集まりでも良い)でなければならないのですが、
ナラワスサビノリの正基準標本は、2つの日に採集されたナラワスサビノリを
集めたものとなってしまっていました。おかげで、ナラワスサビノリは「正
式に発表されたものではない」となり、その学名は無効になってしまったの
です。ナラワスサビノリの実体はあるのに、学名に関しては名無しの権兵衛
状態に戻ったのです。いや、戻ったのではなく、最初から名無しの権兵衛状
態だった、というわけですか・・。

 仕方なく、1984年にナラワスサビノリが新品種として"発表"されたときに
論文に載っていた標本群をいろいろな方のご協力のもとに調べ直して、正式
に「新しい品種」として発表し直すことにしました。こうして「新品種」
 Pyropia yezoensis f. narawaensis を発表する形に原稿を修正しました。
また、この他にも、命名規約上の解釈がそれに詳しい方たちの間でも異なる
意見があるなどの事態にも遭遇したりして、当初、「1、2ヶ月もあれば十分
原稿が出来上がるだろう」と安易に考えていたのが、結局半年以上かかるこ
とになってしまいました。そんなこんなで研究しているのだか、法律を勉強
しているだかよく分からない状態に陥りましたが、何とか2015年12月に学術
雑誌に掲載され、正式にナラワスサビノリもオオバアサクサノリもPyropia属
に移ったのでした。

 「命名規約」は生きものの学名全てに関係している大事な「法律」ですが、
人間社会の法律と同じく、とても難解であることを改めて実感しました。
「命名規約恐るべし!」という感じです。今回、命名規約に詳しい、「弁護
士」と言っても良いような研究者の方々に大変お世話になりましたが、ノリ
の学名に関してはいくつか解決すべきことがありそうなので、「弁護士」の
先生方にはこれからも大変お世話になるのではないかと思っている次第です。

                    (主任上席研究員 菊地 則雄)

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│★海の博物館周辺の情報
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●「2016 かつうらビッグひな祭り」

 2月26日(金)~3月6日(日)に、全国的にもすっかり有名になった「かつ
うらビッグひな祭り」が今年も開催されます。
 「かつうらビッグひな祭り」は開催期間中、勝浦市芸術文化交流センター
「Kuste(キュステ)」をはじめ、市内各所に約30,000体のひな人形が飾られ
ます。遠見岬(とみさき)神社の60段の石段一面にもおよそ1,500体の人形が
飾られ、さらに夕暮れ時からライトアップされます。期間中は、子どもたち
が稚児の衣装で着飾ったひな行列や盛りだくさんのイベントが行われ、土日
は歩行者天国になり各種出店が予定されています。

   詳しくは勝浦市のホームページをご覧ください。
   http://www.katsuura-sanpo.com/news/post-13009/


●勝浦海中公園で「ちっちゃいひな祭り」を開催

「2016 かつうらビッグひな祭り」に併せて、海の博物館のお隣の勝浦海中
公園では「第10回ちっちゃいひな祭り」を開催します。現在ここに展示する
オリジナル手作りひな人形を募集しています。

1.募集内容 手作りひな人形(オリジナル) たて・よこ50cm以内のもの
2.応募方法 海中公園センターへ持参、または宅配便でお送りください
3.応募締切 2月12日(金)
4.展示場所 勝浦海中公園内ビジターセンター・レクチャールーム
5.展示期間 2月26日(金)~3月6日(日)
6.作品の返却 宅配便にて3月中旬以降返却予定

 海の生き物などをモチーフにしたものでもOKです! 自由な発想でひな祭
りを彩ってください! 
 応募者全員に海中展望塔招待券とオリジナル記念缶バッチをプレゼント! 

  応募とお問い合わせは、
       一般財団法人千葉県勝浦海中公園センター
       「ちっちゃいひな祭り」係りまで。
       〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾174
       TEL: 0470-76-2955 FAX: 0470-76-4251 
       http://www.katsuura.org/


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 今回も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとう
ございました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
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お問い合わせはこちらへ umihaku@chiba-muse.or.jp
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