千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
『海からのたより』 第89号
配信日時:2012/08/01 00:00
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 海からのたより 第90号         2012年8月1日発行

      千葉県立中央博物館分館 海の博物館
      http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/


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│目次
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★8月は休まず開館します!
★収蔵資料展「海のカニ・川のカニ」を開催しています!
★8、9月の行事案内
★研究員ノート  -ノリの属名の変更について-
★海の博物館周辺の情報


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│★8月は休まず開館します!
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 ●海の博物館は、8月は毎日開館しています。
  詳細は海の博物館ホームページをご覧ください。
 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU


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│★収蔵資料展「海のカニ・川のカニ」を開催しています!
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●収蔵資料展「海のカニ・川のカニ」好評開催中!!
 海の博物館では、千葉県の海や川にすむカニを集め、夏休みに楽しく学べる
展示を行っています。房総の海で採集した標本をはじめ、生きているカニも見
ることができます。
 なお、会場でのワークシートクイズにお答えしていただいた方には、もれな
く海の博物館特製缶バッジを差し上げます。皆様お誘い合わせの上、ぜひお越
しください。お待ちしています!

【収蔵資料展 夏休みスペシャル「海のカニ・川のカニ」】
 会期:平成24年7月14日(土)~9月2日(日)


●今後の企画展示のご案内
今年度、海の博物館では次の企画展示を予定しています。皆様、お楽しみに!

 ▲平成24年度写真展
   ~ダイバーズフォトギャラリー~ 勝浦の海をゆく
  開催期間:平成24年10月27日(土)~平成25年1月14日(月・祝)

 海の博物館では、勝浦ダイビング協会の協力を得て、平成24年度写真展
「~ダイバーズフォトギャラリー~ 勝浦の海をゆく」を開催します。ダイ
バーの皆さんが撮影した写真を数多く展示し、勝浦周辺の海中で見られる美し
い景観やそこで出会った生きものたちを紹介します。


 ▲マリンサイエンスギャラリー「深い海に暮らす生きものたち」
  会期:平成25年2月16日(土)~5月6日(月・祝)

 深い海の中は、人が直接近づくことが難しいため、水深わずか数百メートル
の場所にすむ生きもののことさえよくわかっていません。そのような生きもの
たちの暮らしや体のつくり、人との関わりについて紹介します。


 詳しくは海の博物館ホームページの企画展示の案内をご覧ください
http://www2.chiba-muse.or.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=bbs_view_main_post&post_id=157&block_id=4853#_4853


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│★8、9月の行事案内
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 海の博物館では、さまざまな行事を開催しています。
 皆様の参加をお待ちしております。

申込方法等、詳しくはこちらをご覧下さい
http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=533

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【磯・いそ探検隊】
 研究員の案内で当館周辺の自然を散策し、主に磯の生きものを観察します。
定員各回15名。
   8月 3日 (金)  11:00~12:00
   8月17日 (金)  10:00~11:00
   8月18日 (土)  10:30~11:30
   (当日申込み。先着順です。)

【みんなで工作 海の生きもの】
 海の生きものにちなんだ簡単な工作を行います。どなたでもお気軽に参加で
きます。当日申込です。 ※各回とも定員は15名です。
 8月 5日 (日)   14:00-15:30「エコデコイ こがもちゃんの色塗り」
 8月14日 (火)     10:45-11:45 13:30-14:30「コーラルプリントをしよう」

【タッチプール】
 飼育室で色々な生きものに触ってみましょう。定員各回10名。
 8月 11日(土) 11:00~、11:30~、13:00~、13:30~
 8月 12日(日) 11:00~、11:30~、13:00~、13:30~
 8月 13日(月) 11:00~、11:30~、13:00~、13:30~
 (当日申込み。定員になりしだい締め切りとなります)

【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海にまつわるさまざまなメニューにチャレンジす
る行事です。
  9月 8日(土)「海藻おしばを作ろう」
  9月22日(土)「微小貝をさがそう」

  各日11:00からと13:30からの1日2回、約20分間開催します。
     (当日申込み。定員6名。定員を超えた場合は抽選となります)


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│★研究員ノート  - ノリの属名の変更について -
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 前月発行のメールマガジン89号で、宮田分館長と私菊地が共著者として加わ
った論文が、アメリカ藻類学会誌の論文賞を受賞したことが紹介されました。
この論文では、私たちが食用としているノリを含む紅藻ウシケノリ目というグ
ループの、DNA解析に基づく分類の再検討の結果が報告されました。

 1990年代から、藻類でも、DNA解析結果に基づいて種類やグループなどの分
類を再検討することが行われはじめ、これまでに、アオノリやコンブなど、私
たちが食用としている海藻でも、グループ分けの再検討が行われた結果、コン
ブだったらコンブの仲間で、近縁な種類同士がまとめられる「属」という単位
のグループで見た場合に、その含められる属が大幅に変更されてしまう、とい
うことがわかって、その線に沿った属の変更が提案されてきました。

 ノリの原料となる海藻は、長く紅藻アマノリ属というグループに含められる
とされてきており、世界中で130種以上の種類が知られていましたが、いろい
ろな国のアマノリ研究者によるDNA解析の研究が進んでくればくるほど、その1
30種以上の種類は、アマノリ属1属だけでなく、もっと多くの属に分けられる、
という推測がなされる結果が出てきました。これまで、アマノリ属を定義する
体のつくりや生態などの特徴はとてもまとまりが良く、1属で間違いない、と
されてきたのが、DNAで見るといろいろな仲間が入っている可能性が示され、
実はとても多様性が高い仲間である、という結果が出たわけです。世界中のノ
リの研究者は、この結果をどのように解釈し、結論付ければ良いかを、それぞ
れの国の研究者が自国のノリの種類を検討するだけでは、確定できなかったの
です。

 そこで、ニュージーランドの Wendy Nelson博士らが中心になって、世界の
主な国のノリの分類の研究者が集まって、チームとなって、この問題の解決し
ようという場、すなわち、ウシケノリ目の属のDNA解析結果に基づく再検討を
協議する場が設けられました。国際学会に合わせて、2008、2009年とそれぞれ、
ニュージーランド、東京で会合を行い、議論をしました。宮田と私はその会合
に参加したわけです。その結果、ウシケノリ目は15属に分かれるという結論で
論文を作成することになったのです。

 ウシケノリ目には、ノリとよく似た特徴を持っていますが、体が葉っぱ状で
あるノリに対して、円柱状になるウシケノリという属があるのですが、15属の
うち、ウシケノリのような円柱状の体を持つ属は7属、ノリのような葉っぱ状
の体を持つ属は8属に分かれました。日本産のノリ29種については、この研究
に用いることのできた22種については、4属に分かれることがわかりました。

 この属の再編で困ったのが学名の変更に伴う、和名の取り扱いです。これま
で、アマノリ属は Porphyra という学名でした。しかし、今回の研究の結果か
らは、Porphyra属に入る種類は、ヨーロッパや南半球のものばかりになり、日
本産の種類は全て Porphyra には入らなかったのです。ノリは乾海苔の原料と
なる海藻ですので、日本を始め、いくつかの国で、産業上、大変重要な生きも
のであり、これまでノリ産業に携わる多くの方に、ノリの属名は「Porphyra」
であり、「ノリ=アマノリ属 Porphyra に入る種類」という図式が、浸透して
きていました。従って、今回の結果からノリ=Porphyraでなくなったことは、
ノリ産業にも様々な面で不都合なことが起きる可能性があるのです。

 そのような中で、日本産のノリが新たに入ることになった属に、和名をつけ
て提案することを考えていましたが、産業面などでの不都合をなるべくなくし
たいと考えました。まだ研究のなされていない7種を除く日本産のアマノリ22
種が4属に分けられたと書きましたが、現在養殖に使用されている主な種類で
あるスサビノリや、かつて養殖に用いられ、現在では絶滅危惧種となってしま
ったアサクサノリを始め、17種は Pyropia という属に入りました。また、先
ほども述べたように、今回の研究では日本産のノリで、以前ノリが含まれてい
た Porphyra属には日本近海のものはどれも入っていないため、今後も日本か
ら Porphyra属に入るものは出てこない可能性があります。そのため、「アマ
ノリ属」という和名は、Pyropia属に充てる方向で、今後提案しようと考えて
います。これは、「食用となるノリ=アマノリ属」という認識を大きく変えな
いためのものです。

 それでも、おそらくかなり長い間、混乱が見られるのでは、と思ってしまい
ます。今回のように私たちの暮らしに関係の深い生きものの名前の変更などは、
産業界など、学問以外のところに大きな影響を与える場合があります。学問の
進歩自体は歓迎されるべきことだと思いますが、一般への応用という面も考え
ると、なかなかに悩ましいことが多々あり、様々な影響も考慮した上での提案
を行わないといけないように思います。

 ただ、これまでの研究で、単純な体であり、それぞれの種類が非常に似通っ
た特徴を持った生きものである「ノリ」が、生きものとしての設計図であるDN
A塩基配列に高い多様性を持っているということがわかったことから、その類
縁関係をはっきりさせ、わかりやすくグループ分けしておくことは、今後、養
殖ノリの新しい品種を探る作業などにとっては、大変重要なことになると考え
られます。そのような観点での産業面への応用の可能性があることも見逃すべ
きではないと思います。

 今回は、DNA解析の研究が進展してきた中で、どこかで一旦そのまとめをし
ておくべき、という観点から、現在生物分類学の分野で主流となっているDNA
データを基にした属の再編を行いましたが、今後は、その後の検討として、各
属に含められた種類が、それぞれ形態や生態などにどのような特徴を持つか、
各属を代表するような特徴がないかなどを、今一度、詳細に検討していくこと
を考えています。(菊地則雄)


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│★海の博物館周辺の情報
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●かつうら海中公園「おさかなギャラリー」
  ~海中展望塔で出会える「いきもの90」~ 開催中です!
 開催期間 平成24年7月15日(日)~平成24年8月31日(金)

 かつうら海中公園では、海中展望塔・海中展望室から観察することのできる
生きものの紹介や、実際に展望室から撮影した写真を多数展示しています。ど
うぞお楽しみに!!

   詳しくはこちらをご覧ください
    http://www.bay-web.com/leisure/katsuura/


●海水浴場開設中
 今年も博物館周辺では海水浴場が開設されています。透明度抜群の勝浦の海
をお楽しみください。
 ・鵜原海水浴場   ~8月26日(日) 「日本の渚百選」
 ・守谷海水浴場   ~8月26日(日) 「日本の渚百選」「快水浴場百選」
 ・串浜海水浴場   ~8月18日(土)
 ・興津海水浴場   ~8月26日(日)
 ・勝浦中央海水浴場 ~8月26日(日)
 ・豊浜海水浴場   ~8月15日(水)

   詳しくはこちらをご覧ください
    http://www.city.katsuura.chiba.jp/beach/index.html


●『かつうら若潮まつり花火大会』のお知らせ
 勝浦市では、今年度も『かつうら若潮まつり花火大会』を開催いたします。
その他、興津湾灯籠流しなどのイベントを予定しています。
 開催日時 8月12日(日)午後7時30分~8時30分
  ※荒天の場合は、13日に順延(13日が順延の場合は14日に順延)
 会場 勝浦漁港周辺
  ※会場内の場所取りをする場合は午後3時以降となります。

     詳しくはこちらをご覧ください
      http://www.city.katsuura.chiba.jp/event/wakashio.html



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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただき
 ありがとうございました。

 海の博物館では、この記事で紹介した生きものを、博物館の展示室で順次紹
介しています。どうぞお見逃しなく!
 

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発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
    http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU
お問い合わせはこちらへ umihaku@chiba-muse.or.jp
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の可能性も指摘されていますので、ご留意ください。)

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