千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第146号
配信日時:2017/04/01 10:00
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第146号
                          2017年4月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/

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 4月です。新しい生活を始める方もいらっしゃることでしょう。
 海の博物館でも、新しい体制で平成29年度をむかえます。
 本年度も、どうぞよろしくお願いいたします。

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│目次
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★マリンサイエンスギャラリー「サンゴ礁の生きものたち」好評開催中!
★4月の行事案内
★研究員ノート −ニンジンイソギンチャク−
★職員の異動
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│★ マリンサイエンスギャラリー「サンゴ礁の生きものたち」好評開催中!
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 マリンサイエンスギャラリー「サンゴ礁の生きものたち」では、様々な視点
でサンゴやサンゴをめぐる生きものたちを紹介しています。100種以上のイシ
サンゴ類標本をはじめ、貴重な標本や写真パネルを展示中です。

 会期は、5月7日(日)までです。お見逃しなく!
 http://www2.chiba-muse.or.jp/index.php?key=bb4gasnj1-4853#_4853

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│★4月の行事案内
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 詳しくはこちらをご覧下さい。
  http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=394

【観察会】 *要事前申込、保険料50円
 4月29日(日)「ウミウシを観察しよう」
 4月30日(日)「海藻を観察しよう」

【磯・いそ探検隊】 *当日先着順、保険料50円
 研究員の案内で博物館前の磯で生きものを観察します。
 4月2日(日) 13:30〜14:30
 4月16日(日) 13:00〜14:00

【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海にまつわるさまざまなメニューにチャレンジす
る行事です。
 4月8日(土)「コーラルプリントをしよう」
 4月22日(土)「コーラルプリントをしよう」

   (当日申込み。定員6名。先着順)
 ※入場料のほか、材料費50円/人が必要です。

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│★研究員ノート −ニンジンイソギンチャク−
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 3月の初旬、当館無脊椎動物担当による県外資料収集に行ってきました。場
所は瀬戸内海、千葉県における都市部近郊の内湾性海洋生物相との比較を目的
として、岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所を利用して、当地周辺の浅瀬から
浅海において資料を収集しました。今回はその際に採集されたニンジンイソギ
ンチャクについて紹介したいと思います。
 ニンジンイソギンチャクはその名のとおり、オレンジ色をしていて細長く、
「人参」のように見えます。このニンジンイソギンチャクは、今回の調査にお
いてぜひ採集したいと考えていた生物のひとつです。もともとニンジンイソギ
ンチャクは、1904年5月、静岡県沼津市の江浦湾において、ドイツ人研究者の
フランツ・ドフラインによって採集された個体に基づいて、1908年に新種とし
て発表されたものです。干潟やそれに続く砂底の浅海に生息するイソギンチャ
クとして知られますが、江浦湾は当時と比べて環境が大きく変化したためか、
初発見時以来、生息記録がありません。全国的に見ても、現在、ニンジンイソ
ギンチャクが確実に生息することがわかっている場所は極めて限られています。
今回調査地とした牛窓からほど近い、とある場所には、このニンジンイソギン
チャクの健全な個体群が残されています。以前、その場所の標本を旧知の研究
者から送ってもらっていたのですが、今回、新たにDNA用の試料をどうしても
入手したいということもあって、現地を訪れました。潮回りのあまり良くない
日で、採集できるかどうか不安もあったのですが、実験所をまだ夜が明け切ら
ない早朝に船で出発し、明け方に現地に到着すると、あたり一面、人参畑のよ
うに多くの個体が生息しているのを見つけることができました。この場所では
、まだ健全な個体群が維持されているようです。現地での写真撮影や必要最低
限の個体の採集を行いました。ほかにもウミサボテンやスナイソギンチャクな
ど、砂底に生息する多くの生きものを見つけることができました。現地は工業
地帯にほど近く、都市化が進んだ場所ではありましたが、このような環境は東
京湾にはほとんど残されておらず、その違いを実感しました。
ニンジンイソギンチャクに限らず、多くのイソギンチャク類については、過去
、どのような種類がどこにどれほど生息していたか、というデータがほとんど
ありません。このため、多くのイソギンチャク類では、過去から現在に至るま
でその生息地・生息数が減少しているのかどうか、ということを判断するのは
非常に困難です。しかし、ニンジンイソギンチャクについては、もともといた
江浦湾から100年以上記録がないこと、全国的にも生息記録のある場所が非常
に少ないことから、「干潟の絶滅危惧動物図鑑 湾岸ベントスのレッドデータ
ブック」(日本ベントス学会編 2012)においては、絶滅危惧IB類(近い将来
に野生での絶滅の危険性が高いもの)に選定されています。環境省はこの3月
に「環境省版海洋生物レッドリスト」を公表しました(末尾参照)が、評価対
象となっている生物のなかにイソギンチャク類は含まれていません(「その他
無脊椎動物」として対象となったのは宝石サンゴ、腕足動物、半索動物、頭索
動物、環形動物、棘皮動物の各分類群)。評価のベースになる基礎情報が不足
していることもその理由かもしれません。私たちは、評価対象となっていない
生きものであっても、絶滅の危険性をはらんでいる生きものは少なくないとい
うことを認識しておく必要があると思います。また、将来のために、現時点で
の情報をできるだけ集めてその証拠を記録しておくことも必要でしょう。
イソギンチャクには、ナスビイソギンチャクやダイコンイソギンチャクなど、
「野菜」の名前を冠したものがほかにもありますが、ニンジンイソギンチャク
はその中で、もっとも外見をよく表している名前だと、私は勝手にそう思って
います。これからも各地の「人参畑」がなくならないよう見守っていきたいも
のです。

(主任上席研究員 柳研介)
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│★職員の異動と29年度の海の博物館の職員の専門分野
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★職員の異動
 3月31日及び4月1日付けで、海の博物館の職員の異動がありました。転入職
員の自己紹介は次号に掲載します。

【転入・採用】
上席研究員   吉田 真照(大多喜中学校より)
主任上席研究員 本吉 正宏(再任用)
体験交流員   渡邊奈津子(新規採用)

【転出・退職】
主席研究員   本吉 正宏(退職)
体験交流員   金子 美織(退職)

★29年度の海の博物館の職員の専門分野
 29年度に在籍する職員の専門分野は次のとおりです。海の生きもの等に関す
る質問があるときに参考にしてください。

主任上席研究員 川瀬 裕司【魚(魚類行動学)】
主任上席研究員 立川 浩之【刺胞動物イシサンゴ類(海洋生物学)】
主任上席研究員 奥野 淳兒【エビ、ヤドカリなど(甲殻類学)】
主任上席研究員 菊地 則雄【海藻(藻類学)】
主任上席研究員 柳  研介【イソギンチャクなど(刺胞動物学)】
主任上席研究員 村田 明久【フジツボなど(動物行動学)】
主任上席研究員 本吉 正宏【歴史(史学・博物館学)】
上席研究員   吉田 真照【学校教育】

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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうご
ざいました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
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