千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第147号
配信日時:2017/05/01 10:00
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第147号
                          2017年5月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/

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 5月は、気候も良く、大潮の時には塩も良く引き、海遊びに最適です。
 干潮の時間を調べて、海に出かけてみませんか。

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│目次
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★間も無く終了!マリンサイエンスギャラリー「サンゴ礁の生きものたち」
★5月の行事案内
★研究員ノート −チリー地震津波の碑を見て−
★着任職員紹介
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│★ 間も無く終了!マリンサイエンスギャラリー「サンゴ礁の生きものたち」
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 好評開催中のマリンサイエンスギャラリー「サンゴ礁の生きものたち」は、
5月7日(日)に終了します。まだご覧になっていない皆様、お見逃しなく!
 http://www2.chiba-muse.or.jp/index.php?key=bb4gasnj1-4853#_4853

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│★5月の行事案内
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 詳しくはこちらをご覧下さい。
  http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=394

【観察会】 *要事前申込、保険料50円
 5月27日(土)「磯にすむヘンな生きものウォッチ」

【講座】 *要事前申込
 5月20日(土)「博物館の収蔵庫を見学しよう1」
  対象:中学生以上 定員:20名

【磯・いそ探検隊】 *当日先着順、保険料50円
 研究員の案内で博物館前の磯で生きものを観察します。
 5月14日(日) 12:00〜13:00

【博物館探検隊(バックヤードツアー)】 *当日先着順
 ふだん見ることのできない博物館のバックヤードを、研究員の案内でめぐり
ます。
 5月3日(水・祝) 13:30〜14:15
 5月4日(木・祝) 13:30〜14:15
 5月5日(金・祝) 13:30〜14:15

【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海にまつわるさまざまなメニューにチャレンジす
る行事です。
 5月7日(日)「コーラルプリントをしよう」
 5月28日(日)「コーラルプリントをしよう」
   (当日申込み。定員6名。先着順)
 ※入場料のほか、材料費50円/人が必要です。

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│★研究員ノート −チリー地震津波の碑を見て−
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 今日から月が変わり5月となりました。海の博物館前の磯も生きものたちの
動きが活発になります。
 私が調べている歴史自然災害では、5月の出来事として今から57年前に発生
したチリ地震津波があげられるでしょう。このメールマガジンを読まれてい
る方の中にも、この地震津波を覚えている方がいらっしゃるかも知れません
ね。
  1960年(昭和35)5月23日午前4時11分(現地22日午後3時11分)、南米チ
リの中部近海でモーメントマグニチュード(Mw)9.5という超巨大な地震が発
生しました。6年前に東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震が
Mw9.0ですから、これよりも4倍以上エネルギーの大きな地震で、歴史上の地
震では最大級のものでした。この巨大地震は、現地チリで建物崩壊や津波な
どによって大きな被害を出しましたが、地震の巨大さゆえ、揺れは地球の反
対側にまで届いています。さらに発生した津波は太平洋を伝わり、ハワイで
は61人が犠牲となりその津波は私たちの日本列島の北海道から沖縄にまで到
達して各地に被害をもたらしました。
 我が国に津波が到達したのは、発生から約一日を過ぎた頃で、東北の三陸
海岸では24日未明に6.4m、むつ市では6.1m、大船渡では4.9mなどと大きな津
波が押し寄せ、北海道・東北地方・沖縄で多くの被害を出しています。我が
国だけで死者・不明者139名、負傷者872名(「日本被害地震総覧」2003)を
数え、このほか建物や船舶等の流失、耕地の流埋・冠水被害も甚大でした。
 この地震津波は千葉県にも押し寄せており、銚子で1.53m、館山市布良で
0.67m(「千葉県気象災害史」1969)という記録があります。県内被害は、
死者1名、負傷者2名、建物の半壊や床上・床下浸水が102棟、船舶被害32艘、
ほか耕地の流埋・冠水170余haでした。
 長生郡白子町にも津波が押し寄せました。同町指定文化財の「チリー津波
の碑」(碑文では「津波襲来之(の)碑」以下津波碑と記します)の銘文に
よれば、津波は5月24日午前5時20分頃から数次に亘り襲来し、剃金地区の低
地帯から侵入して最高位では県道の上1m(説明板では1.2m)にまで達し、全
壊と半壊の民家約30戸、田畑55haに被害があり、罹災者は77名にのぼったと
あります。また具体数はありませんが漁具や漁船の流失や破損があったこと
も記しています。
 津波碑は、津波の襲来と救済・復興を後世に伝えるためにチリ津波の1年
後の1961年5月24日に建立されました。元々は浸水高1mを測った県道脇に設
置されたとのことですが、1972年に開通した九十九里有料道路(通称波乗り
道路)建設に伴って移設されて、現在は南白亀(なばき)川河口脇の公園入
口付近に説明板とともにあります。以前に碑のあった場所について、地元の
方(50歳代後半)に尋ねると、「公園に行くアンダーパスの入口付近にあっ
た」とのお話しがあり、早速現地に行ってみました。現在、九十九里有料道
路脇の県道30号線(地元での通称は産業道路)には南白亀川を渡る橋梁が架
けられていますが、産業道路とはいうものの、平成に入っても暫くは橋梁が
架けられていませんでした。そのため南北から南白亀川まで通された道路は
、約200m内陸側の旧30号線の旭橋脇を渡るしかありませんでした。旭橋のた
もとを川沿いに走る道路が産業道路の側道とぶつかり、さらに直進して県道
30号線と有料道路の下を通り抜ける(アンダーパス)と津波碑のある公園に
出ます。側道にぶつかるこの交差点付近が津波碑が在った場所と思われます
。この側道は国土地理院の1975年1月に撮影された航空写真では橋梁が架け
られる前の本道だったことが分かります。またこの道路の標高はおよそ1.3m
(国土地理院web)でした。
 津波碑には、再びこうした津波の災禍を防ぐために防波堤を築いた事が記
されています。投じられた国費は920万円、現在ではおよそ1億円くらいでし
ょうか。わずか1年で築かれたこととその経費から考えると、突貫工事でな
されたとしてもさほど大規模な防波堤ではなかったと思われます。
 南白亀川の河口付近の変遷を過去の地形図や航空写真で見ると、明治期か
ら昭和40年頃の間に県道が乗る第2砂堆前の低地帯を流路として約500m北に
河口を持つ時期が数回あったり現在の河口との間にデルタを出現させるなど
、河口部が激しく動いていることが分かります。チリ津波のあった頃の流れ
はどうかというと、津波の翌年1961年7月に国土地理院が撮影した航空写真
では、アンダーパス出口付近で北に折れて現30号線に沿うよう蛇行したのち
、もう一度東に折れて海に流れ出ているのです。そしてこの最初の屈曲部附
近に以前の写真には見えなかったL字状に総長100m程の構造物が見えており
、もしかするとこれが防波堤なのかも知れません。こうした様子からチリ津
波の際に、津波は河口部から侵入して河道の折れ曲がり部分で県道側に溢れ
て周辺の民家や耕地に流れ込んだことが伺えます。現在もこの付近は標高1m
以下のエリアがあります。1965年になると、低地帯のクリーク状の流路は水
門により完全に仕切られ、南白亀川は現在と同様に河口近くではほぼ直流し
て海に注いでいます。 南米チリ沿岸はプレート境界に当たることから大き
な地震が度々起こっています。最近のチリでの地震による津波は、2010年2月
末にも発生しています。この時現地ではMw8.8の大地震で発生した津波で約50
0名が犠牲になりました。我が国でも大津波警報が東北地方太平洋側沿岸、津
波警報が北海道から沖縄に至る太平洋地域などに出され、陸前高田で1.9mの
津波を観測しています。千葉県でも館山湾で0.69m、鴨川で約0.4mの津波があ
りました。私も鴨川市を流れる加茂川の護岸に、遡上した津波の痕跡を見て
います。
 津波災害に関する調査を行っていると、地震による揺れを感じないのに突
然津波が押し寄せたという記録等がまれにあると聞きます。これはもしかす
るとこうした遠地地震により発生した津波だったのかも知れません。今回再
訪した津波碑を前に、これからはこうしたことも一層気にしながら調査を行
っていこうと改めて思いました。
(主任上席研究員 本吉正宏)

追記
 津波碑の裏面には、この災害に際して県内各地からの津波見舞金の一覧が
記されています。その数37件、総額31万円余になります。日本赤十字社をは
じめ地元や周辺の企業や婦人会、中学生徒や職員、市や町、仏教各界、個人
等々、個人の中には白子町出身で大相撲の立行司第20代式守伊之助の名前も
あります。今日の災害で寄せられる支援の様子に繋がるような思いがしまし
た。

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│★着任職員紹介
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 4月1日に2名の職員が海の博物館に着任しました。
 この他、本吉正宏主任上席研究員は、再任用として引き続き海の博物館で勤務します。
 皆様どうぞよろしくお願いいたします。

●吉田真照 上席研究員
 4月より着任しました上席研究員の吉田真照(まさてる)です。きれいな海と潮風に心を洗われな

がら仕事をしています。一日も早く海博に慣れ,みなさんと一緒に磯めぐりや館内展示を楽しみた

いです。よろしくお願いします。

●渡邊奈津子 体験交流員
 4月1日より、体験交流員として働かせていただいている渡邊奈津子と申します。この様な立派な

博物館で、しかも海に関する仕事ができるなど、本当に夢の様に嬉しく思っております。
 今まで経験したことのない、体験交流員という大変重要な役割をいただきましたので、まずは1

日でも早く職場に慣れ、仕事を覚えていきたいと思っています。皆様どうぞよろしくお願い致しま

す。

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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうご
ざいました。

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