千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第149号
配信日時:2017/07/01 10:00
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第149号
                          2017年7月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/

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 夏!海!磯観察!

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│目次
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★夏休み海の学びスペシャル「エビざんまい」7月22日(土)から!
★7月、8月前半の行事案内
★研究員ノート −漂着物を科学する! これは学術研究と言えるか?・・・・−
★海の博物館周辺の情報
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│★夏休み海の学びスペシャル「エビざんまい」7月22日(土)から!
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 エビは食用としてなじみのある生きもので、房総半島にはさまざまな種類が
分布しています。この展示では、エビという身近な存在を通して、千葉県の豊
かな自然を構成する生きものの多様性を見ていきます。

▲収蔵資料展「エビざんまい」
 会期:平成29年7月22日(土)〜9月3日(日)

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│★7月、8月前半の行事案内
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 詳しくはこちらをご覧下さい。
  http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=394

【観察会】 *2週間前までに事前申込、保険料50円
 7月23日(日)「親子で磯の生きものを探そう」
 8月4日(金)「水中めがねで海の生き物を観察しよう」
 7月23日(日)「親子で磯の生きものを探そう」

【講座】 *2週間前までに事前申込
 8月13日(日)「魅惑のエビちゃん−綺麗な色・ユニークなくらし−」

【磯・いそ探検隊】 *当日先着順、保険料50円
 研究員の案内で博物館前の磯で生きものを観察します。
 7月8日(土) 9:30〜10:30
 7月22日(土) 9:30〜10:30
 8月6日(日) 9:30〜10:30
 8月8日(火) 10:30〜11:30

【博物館探検隊(バックヤードツアー)】 *当日先着順
 ふだん見ることのできない博物館のバックヤードを、研究員の案内でめぐり
ます。
 7月29日(土) 13:30〜14:15
 8月11日(金・祝) 13:30〜14:15
 8月12日(土) 13:30〜14:15

【みんなで工作 海の生きもの】 *当日先着順、材料費50円
 海の生きものにちなんだ簡単な工作を行います。
各日2回、10:45-11:45 13:30-14:30
7月30日(日)「海で見つけた材料でオリジナルオブジェを作ろう」
8月5日(土)「海藻おしばを作ろう」

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│★研究員ノート −漂着物を科学する!
         これは学術研究と言えるか?・・・・−
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分館長の新です.昨年,5月に着任の挨拶(自己紹介)をかねて海の博物館にお
ける最初の研究員ノートを書き,11月には新が専門的立場から諸部署において
実践している化石セミナー等を中心に,フィールドワークの一環として実施し
ているフィールド・ミュージアム事業を通して展開している“Interactive 
Museum(インタラクティブ・ミュージアム)”について4つの事例を紹介しまし
た.
 この2年間で化石セミナーは7回実施し,200名ほどの参加者に,地球のダイナ
ミズムから導入し,生物多様性,生物進化等について学んでもらうのと同時に,
地層見学や実際の化石を発掘する(取り出す)実体験を通して,古生物領域か
ら現生の生物までの進化(or 退化)プロセスの不可思議さ等について知ってい
ただく「知の市場」構築に取り組んできました.さらに,その諸活動の実績報
告として,また,その事業展開において抽出された課題について議論するため
の研究素材の共有として,ミュージアム系の学会を始め,全国科学博物館協議
会等の場において研究発表を行ってきました.
さて,今回は私の専門分野である地質学と古生物学領域の読み物とします.
まずは,海博の周辺に目を向けてみましょう.眼前に現れてくるのは岩場と砂
浜が混在した磯です.この磯は潮が引いた状態ではかなり広範囲に岩場が出現
し,磯の生きものを観察する絶好の場所です.また,目線を少し上にずらして
いくと,海岸から切り立った岩肌を見ることができ,そこは様々な地質現象を
始め,海岸性の植物相の観察に適しています.この状況は海博から徒歩で10分
程の鵜原理想郷散策路周辺においても同様ですが,磯の生きものや植物の生態
,分布等は専門外ですので,ここでは地球のダイナミズムや化石の世界にご招
待することにしましょう.
海博周辺に分布している地層は三浦層群清澄層と上総層群黒滝層です.層群と
いうのは,ある地質時代の大きなくくりとして複数の地層が重なった地層群を
示しています.三浦層群は房総半島全体に比較的広範に分布しており,年代的
には約1,500万年前から300万年前の間で海底に堆積した地層です.また,上総
層群は房総丘陵の北側にある上総丘陵に分布しており,層序的には三浦層群の
上位にある約300万年前から50万年前に海底に堆積した地層です.そして,岩
質的には泥岩,砂岩,凝灰岩で構成されており,この時代に房総半島周辺でお
きた火山噴火による噴出物(軽石等)も含んでいます.読者の皆様はあまり難
しくとらえること無く,ざっくりと「海博周辺は約600万年~400万年前の地層
」と覚えておけば良いです.最初の内は,専門的な地質用語や日常的で無い年
代標記等はどうでも良いのです.1,500万年前の地層とか,1億数千万年前のア
ロサウルス骨格と言われても,普通,「億」の単位はイメージできませんよね
.まずは,「モノ」の観察から始めて,興味がわいてきたら少しずつ知識を深
めていけば良いです.
と言うことで,まずは地層に現れた地球のダイナミズムを感じてみましょう.
海博周辺で見ることができる大きく削れたり,窪んだりしている地形はどうや
ってできるのでしょうか.また,地層を観察していくと目に入ってくるのが断
層や褶曲等の地質現象です.これらは正に波の力によって浸食されたり,地層
自体が押されたり,引っ張られたりすることで生じる地球のダイナミズムです
.さらに,房総半島ではあまり見ることができない現象ですが,対岸の三浦半
島の城ヶ島周辺では,泥質の堆積物が固結していない段階で,その上位に砂質
の堆積物が堆積し,その重みで上位の砂が沈降し,下位の泥が上昇したために
層理面が炎のように見える火炎構造(フレーム構造)も面白い現象です.
このように,大地に刻まれた地質現象を見るたびに,地球は生きている(鼓動
している)ことを再確認させられます.
続いて,地層中に刻まれた化石から過去の生きものたちの営みについて知るこ
ともできます.海博周辺の岩場には,数百万年前に生きものたちがそこに確実
にいたことを示す痕跡が残されています.この痕跡とは,当時生息していた生
きものたちの生活の跡です.例えば,生きものたちの巣穴を始め,動き回った
這い跡等があり,「その生きものが生きていた証(痕跡)」ということで生痕
化石と言います.
かなり多く見ることができる生痕化石として,ブンブクウニが砂の中を動き回
った這い跡があります.ブンブクウニは楕円形の体で,細毛のように見える細
く短い棘を持っており,これを前後に動かして移動します.その時に砂や泥が
かき乱されることで這った跡がくっきりと残され,それを今,私たちは化石と
して見ることができるわけです.
こういった生痕化石は,一般的に皆様が目にする,またはイメージする化石,
例えば,アンモナイトや貝殻,恐竜の骨,サメの歯等の化石と違い,一見,地
味で,見つけることも中々難しい化石です.しかし,反面,過去の生きものた
ちの生態や生活の様子を研究するには,絶好の資料と言えます.古生物学を研
究する一研究者である私も,過去の生きものたちの本体(骨や歯,殻等々)よ
りも,這い跡や足跡,巣穴等を見ている方が興奮します.
ぜひ,皆様も見つけにくいかもしれませんが,這い跡等を探してみて下さい.
目が慣れてくれば彼らはいたるところにいます.ほら,そこにも,あそこにも
・・・,もう,うじゃうじゃ~~.私はこの這い跡を見るたびにペイズリー模
様を思い出してしまいます.
さあ,彼らの言葉を聞いてください.ジーと見ていると,あなたに語りかけて
きますよ.どうしてこの場所にいたのか,どうしてこのように曲がって移動し
たのか,その先に何があったのか・・・・,これが私の得意とするところの「
化石の言葉を聞く」ことです.
さて,ここまで長々と前座的?なお話しを書いてきましたが,タイトルにある
「漂着物を科学する!これは学術研究と言えるか?」について少し語りましょ
う.
 ここ最近は,ミュージアム・マネージメントとジオ・ラーニングにかまけて
,主たる研究テーマである「第四紀の化石サンゴの分類と古環境解析」なるも
のはどうなっているのか,と自らを省みる昨今ですが,海の博物館に着任後,
非常におもしろい収集癖(と言うとコレクター的なニュアンスが強いですが,
正真正銘の研究用のサンプリング)が続いています.
 出勤日で,かつ,期限間近の執筆活動も無く,会議も緊急な用務も無く,天
候も不順で無く,そして,潮が引いている時といった条件がそろわなければで
きないのですが,海の博物館の前の磯に打ち上がっている現生サンゴの骨格の
サンプリングです.この骨格とは,岸に打ち上がった後,サンゴ本体であるポ
リプ部は腐敗してなくなるため,残された堅い莢や莢壁,隔壁等のことです.
 化石を扱っている私がなにゆえに現生のサンプリングをするのか,そして,
その種がなぜ現生と分かるのかですが,房総半島の南端である館山市に「沼」
という地名があり,その地から約7,000年前のサンゴの化石が発見されていま
す.世界的に有名なこの化石は「沼サンゴ」(沼に生息しているということで
はなく,地名からとっています)と呼ばれており,約80種類の化石サンゴが確
認されています.また,房総半島沿岸は南域から暖流黒潮が流入していること
から,現生のサンゴも約20種類生息しています.この現生の20種類の中には化
石種と同種のものも含まれています.
 ここまで書いてくるとお分かりのように,現生種でも化石種でもその両方で
確認されている場合,その骨格が現生のものなのか,化石なのかということに
なりますよね.普通考えれば,化石であれば地層中に包含されていることが本
来の姿ですから海岸に打ち上がるということは現実的ではありません.よって
,私が海の博物館の磯でサンプリングしているサンゴの骨格は間違いなく現生
種と言えます.種としては,マルキクメイシ(Montastrea curta),キクメイ
シモドキ(Oulastrea crispate),トゲイボサンゴ(Hydnophora exesa)等で
す.
 そして,これらが現生種である確固たる理由の一つに,サンゴの骨格自体が
10cm前後の石に着床している例が多いことです(例外も多いです).もともと
は海底にある岩盤等に着床するのですが,何を間違ったか小さな石ころに付い
てしまったため海が荒れた時に海岸に打ち上がってしまうのでしょう.
 そして,最後にやっと本題に入るのですが,研究者達が研究素材としてサン
プリングする場合,「いつ,どこで,だれが」が重要です.これが明確になっ
ていないとそれは単なるモノでしかありません.
とすると,私が今行っているこのサンプリングは上記の中の「どこで」が不確
定ですね.サンプリングした場所は海の博物館の前の磯ですが,そこはそのサ
ンゴが生息していた場所ではありません.
さてさて,このサンプリングに意味があるのか・・.実はあるのですね.それ
はまた次回と言うことで.

(分館長 新和宏)

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│★海の博物館周辺の情報
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 ●海水浴場の開設
 勝浦市内の海水浴場がオープンします。透明度抜群の勝浦の海をお
楽しみください。
 勝浦市内の海水浴場:鵜原、守谷、興津、勝浦中央
 開設期間:2017年7月22日(土)~8月27日(日)
 *串浜海水浴場、豊浜海水浴場は開設しません。
 
 ●鵜原の大名行列
 鵜原海岸を大名行列が練り歩きます。千葉県記録選択の無形民俗文化財です。
 今年の開催日は、7月22日(土)です。
 http://www.katsuura-sanpo.com/facilities/event/post-1063/
 
 以上の詳しい情報は、勝浦市観光ポータルサイト「かつうら潮風散歩道」を
ご覧ください。
http://www.katsuura-sanpo.com/

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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうご
ざいました。

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