千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
『海からのたより』 第91号
配信日時:2012/09/01 00:10
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
 海からのたより 第91号         2012年9月1日発行

      千葉県立中央博物館分館 海の博物館
      http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
│目次
└──────────────────────────────────
★9月の開館、臨時休館日
★9、10月の行事案内
★今後の企画展示のご案内
★研究員ノート - ヒメキンチャクガニ  -
  *Lybia caestifera* の勝浦からの初記録と共生するイソギンチャクの謎
★こんなの見たよ 「オオサルパ」
★海の博物館周辺の情報


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
│★9月の開館、臨時休館日
└──────────────────────────────────
 ●9月4日(火)は臨時休館します。
 ●9月17日(月・祝)は開館しています。
  詳細は海の博物館ホームページをご覧ください。
 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
│★9、10月の行事案内
└──────────────────────────────────
 海の博物館では、さまざまな行事を開催しています。
 皆様の参加をお待ちしております。

申込方法等、詳しくはこちらをご覧下さい
http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=533

───────────────────────────────────
【観察会「博物館周辺の歴史と文化を訪ねて」】
 博物館周辺を散策し、その歴史や文化、自然についてじっくりと観察します。

  対象:一般  定員:15名
  日時:10月6日(土)10:00-12:00
  申込締切日:9月22日(土)
  ※電子メールもしくはハガキ・FAXで、次を明記の上、当館あてにお送り
   下さい。
   また、展示室ロビー受付でも申込みできます。 
     1. 郵便番号・住所
     2. 氏名
     3. 電話番号
     4. 年齢
     5. 参加希望の行事の月日と名称


【観察会「秋の鵜原理想郷で植物を観察しよう」】
 鵜原理想郷は風光明媚な岬です。景色を楽しみながら、秋の植物を観察しま
しょう。

  対象:一般  定員:15名
  日時:10月21日(日)10:00-15:00
  申込締切日:10月7日(日)
  ※電子メールもしくはハガキ・FAXで、次を明記の上、当館あてにお送り
   下さい。
   また、展示室ロビー受付でも申込みできます。 
     1. 郵便番号・住所
     2. 氏名
     3. 電話番号
     4. 年齢
     5. 参加希望の行事の月日と名称


【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海にまつわるさまざまなメニューにチャレンジす
る行事です。
  9月 8日(土)「海藻おしばを作ろう」
  9月22日(土)「微小貝をさがそう」
  10月13日(土)「オリジナルオブジェを作ろう」
  10月27日(土)「コーラルプリントをしよう」

  各日11:00からと13:30からの1日2回、約20分間開催します。
     (当日申込み。定員6名。定員を超えた場合は抽選となります)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
│★今後の企画展示のご案内
└──────────────────────────────────
今年度、海の博物館では次の企画展示を予定しています。皆様、お楽しみに!

 ▲平成24年度写真展
   ~ダイバーズフォトギャラリー~ 勝浦の海をゆく
  開催期間:平成24年10月27日(土)~平成25年1月14日(月・祝)

 海の博物館では、勝浦ダイビング協会の協力を得て、平成24年度写真展
「~ダイバーズフォトギャラリー~ 勝浦の海をゆく」を開催します。ダイ
バーの皆さんが撮影した写真を数多く展示し、勝浦周辺の海中で見られる美し
い景観やそこで出会った生きものたちを紹介します。


 ▲マリンサイエンスギャラリー「深い海に暮らす生きものたち」
  会期:平成25年2月16日(土)~5月6日(月・祝)

 深い海の中は、人が直接近づくことが難しいため、水深わずか数百メートル
の場所にすむ生きもののことさえよくわかっていません。そのような生きもの
たちの暮らしや体のつくり、人との関わりについて紹介します。


 詳しくは海の博物館ホームページの企画展示の案内をご覧ください
 http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=393


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
│★研究員ノート  - ヒメキンチャクガニ  -
│ *Lybia caestifera* の勝浦からの初記録と共生するイソギンチャクの謎
└──────────────────────────────────

 キンチャクガニの仲間は、世界で3属10種が知られている甲幅数cm程度の小
さなカニの仲間です。このカニの特徴はというと、なにしろそのハサミ(鋏
脚)に必ずイソギンチャクを挟んでいることでしょう。日本で最も有名と思わ
れるのは、ダイバーなどにも人気のキンチャクガニ *Lybia tessellata* です
が、日本には他にもヒメキンチャクガニ *L. caestifera*、ケブカキンチャク
ガニ *Polydectus cupulifer*、ハタグモガニ *Tunebia hatagumoana*の3種類
が生息しています。このうちハタグモガニは、この仲間としては深いところか
ら産するカニで、これまで国内では2例しか発見記録がない稀種であり、千葉
県内からの報告はありません。またキンチャクガニ、ケブカキンチャクガニも
温かい海に暮らすカニで、やはり千葉県内からは見つかっていません。残るヒ
メキンチャクガニは、これまでの海の博物館の調査によって、館山と鴨川の水
深20m程度からそれぞれ1個体ずつ発見されていました。ところが、この8月2日
に、博物館前の磯で県内3個体目となるヒメキンチャクガニが発見されました。
おそらくヒメキンチャクガニの分布としては本邦太平洋岸の北限記録となると
思われます。カニ自体の分布情報としても興味深いのですが、私はこのカニに
挟まれているイソギンチャクに非常に関心を寄せています。

 実は,私はキンチャクガニに挟まれているイソギンチャクについて調べてい
るところなのです。従来、日本国内では、キンチャクガニに挟まれているイソ
ギンチャクは、カニとの共生に特化した「カニハサミイソギンチャク *Bunode
opsis prehensa*」という種類で、これは単独で生活している状態では発見さ
れていない謎多きイソギンチャクであると説明されてきました。しかし、これ
までの私と共同研究者による飼育実験やDNA解析等の研究によって、実はこの
イソギンチャクは、キンチャクガニの生息環境周辺に普通に生息している「カ
ザリイソギンチャク *Triactis producta*」であることが明らかになりました。
また同時に、キンチャクガニは周辺環境に生息する別の種類のイソギンチャク
も挟んでいる可能性が示唆されています。野外で観察されるカザリイソギンチ
ャクの姿と、カニに挟まれているイソギンチャクの姿は全く異なっており、一
見、これが同じ種類とは信じられないほどです。ちなみに、よくカニとイソギ
ンチャクはお互いにメリットがあるようなことが書かれていることもあります
が、これは全くの誤解で、両者の関係においてはイソギンチャクは完全な被害
者だと考えられます。

 さて、それでは、今回発見されたヒメキンチャクガニの挟んでいるイソギン
チャクはどうでしょうか? 実は、これまでヒメキンチャクガニが挟んでいる
イソギンチャクについての研究例は一つもありません。これまで千葉県内外か
ら採集したヒメキンチャクガニのイソギンチャクを見る限り、おそらく複数種
のイソギンチャクを利用しているものと推測していますが、これらは全て固定
標本となってしまっており、カニに挟まれていたイソギンチャクを飼育して変
化を観察したり、DNA解析に用いたりすることができません。ところが、今回、
幸いにも生きた個体を新たに入手することができたので、早速採集されたヒメ
キンチャクガニから取り外したイソギンチャクの飼育を開始しました。イソギ
ンチャクには、カニに挟まれているときにハサミのトゲが体に突き刺さってで
きた大きな穴が開いています。自由になったイソギンチャクはまずその穴を修
復し、「足盤」と呼ばれる基質へ付着する部分で、飼育容器にしっかりと固着
しました。しかし、その後は大きくなるというより、盛んに「足盤」の一部を
切り離してむしろ小さくなっているようです。実は切り離された部分は、そこ
から新たなイソギンチャクに成長します。これは「足盤裂片」と呼ばれるイソ
ギンチャクの無性生殖の方法の一つです。現在この「足盤裂片」により、カニ
の左右のハサミに挟まれていた2個体はそれぞれ5個体程度にまで増えています。
今後、これらのイソギンチャクの成長観察・DNA解析を進めるとともに、なん
とか新たな個体を発見できないかと企んでいます。(主任上席研究員柳研介)


※キンチャクガニの研究の概要については、沖縄県の阿嘉島臨海研究所の機関
紙「みどりいし」に掲載されてい

ます。当該機関紙は全てインターネットからダウンロードできますので、興味
のある方はどうぞ。
【阿嘉島臨海研究所機関紙「みどりいし」No.23 2012年3月発行】
  http://www.amsl.or.jp/body31_23.html

※"*----*"で囲まれた部分は斜体であることを意味します。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
│★こんなの見たよ 「オオサルパ」
└──────────────────────────────────
 先日、勝浦市在住の高梨さんが、「オオサルパ」を見つけて博物館に持って
きてくれました。果たして「オオサルパ」とはどんな生き物でしょう。海の博
物館展示室の『こんなの見たよ』のコーナーに掲示してあります。

 詳細はこちら↓
 http://www2.chiba-muse.or.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=bbs_view_main_post&post_id=168&block_id=6011#_6011


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
│★海の博物館周辺の情報
└──────────────────────────────────
●「勝浦大漁まつり」(勝浦の秋まつり)開催のお知らせ

 海の博物館のある勝浦市では、9月14日(金)から9月17日(月・祝)に「勝
浦大漁まつり」(秋まつり)が行われます。市中心部に近い地区の神輿や山車
が各地区を練り歩き、15日(土)には、19基の神輿が一堂に会する「合同祭
典」があります。16日(日)と17日(月・祝)には市指定有形文化財である江
戸後期彫物屋台の引廻しが、17日(月・祝)には、船から船へと神輿が渡され、
神輿を乗せた船と数隻の船が、漁港内と八幡岬の沖に浮かぶ平島を旋回する
『神輿の船渡し』があります。

 ぜひ皆様お越しください!

     詳しくはこちらをご覧ください
     http://www.city.katsuura.chiba.jp/event/akimatsuri.html


●「食で街を盛り上げろ!ご当地グルメ開国宣言in勝浦」が開催されます

 開催日時:平成24年9月29日(土) 午前9時30分~午後4時30分
 開催場所:市営駐車場(市民会館跡地)および勝浦中央商店街内 

 内容:千葉県内で食による街おこし活動を実施している団体および愛Bリー
    グ関東支部加盟団体によるご当地グルメの祭典です。 会場内では各
    種イベントが盛りだくさんです。

     詳しくはこちらをご覧ください
    http://www.city.katsuura.chiba.jp/topic/kaikokusengen.html


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただき
 ありがとうございました。

 海の博物館では、この記事で紹介した生きものを、博物館の展示室で順次紹
介しています。どうぞお見逃しなく!
 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
    http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU
お問い合わせはこちらへ umihaku@chiba-muse.or.jp
(電子メールにつきましては、送信途中において悪意のある第三者による盗聴
の可能性も指摘されていますので、ご留意ください。)

*このメールは送信専用メールアドレスから配信されています。
  返信いただいてもお答えできませんのでご了承ください。
登録内容の変更はこちらへ ##__MYPAGE_URL__##
配信停止はこちらへ ##__CANCEL_URL__##
無断転載はお断りします