千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第153号
配信日時:2017/11/01 10:00
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第153号
                          2017年11月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/

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 11月、博物館で文化にふれて見ませんか?

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│目次
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★さわやかちば県民プラザで出張展示、開催中!
★文化の日は入館無料です!
★11月の行事案内
★研究員ノート −「干潟の海藻」−
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│★さわやかちば県民プラザでの出張展示、開催中!
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 さわやかちば県民プラザとの連携事業として、出張展示を開催しています。

 タイトル:平成29年度 ちばのお宝再発見 「房総の海の生きもの」
 会場:さわやかちば県民プラザ(柏市) 県民ギャラリー1階
 !無料でご覧いただけます!

 房総で見られるさまざまな海の生きものを、当館所蔵の剥製や写真などで紹
介しています。
 会期は11月9日(木)までです。お見逃しなく!

 詳しくはこちらをご覧下さい。
  https://www.skplaza.pref.chiba.lg.jp/mu6lpwhwe-209/#_209
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│★ 文化の日は入館無料です!
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 11月3日(金・祝)の文化の日は入館無料となります。スタッフ一同、皆さ
まのご来館をお待ちしています。

 ※ お客様駐車場は通常通り(有料)です。

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│★11月の行事案内
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 詳しくはこちらをご覧下さい。
  http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=394

【博物館探検隊(バックヤードツアー)】
 ふだん見ることのできない博物館のバックヤードを、研究員の案内でめぐり
ます。
   日時:11月3日(金・祝) 13:30〜14:15
 定員各回15名(当日申込み。先着順)

【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海にまつわるさまざまなメニューにチャレンジす
る行事です。
 11月 11日(土)「コーラルプリントをしよう」
 11月 25日(土)「オリジナルオブジェを作ろう」
   (当日申込み。定員6名。定員を超えた場合は抽選となります)
 ※入場料のほか、材料費50円/人が必要です。

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│★研究員ノート −「干潟の海藻」−
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 潮が引いたときに平らな陸地になる遠浅の砂や泥の海岸である「干潟」は、
絶滅の恐れのある「絶滅危惧種」もかなりたくさん見られる生きものの宝庫で
す。普通「干潟の生きもの」と言うとき、そのほとんどはカニや貝などの動物
を指し、私の専門とする海藻が取り上げられることはまれです。海藻は基本的
に「ある程度の大きさ以上の硬いモノ」にしか生えることができず、干潟のよ
うな砂や泥に生える海藻はごくわずかしかありません。従って、海藻の研究者
は干潟で海藻採集を行うこと自体ごくわずかしかしてこなかったと思われ、「
干潟にはどんな海藻が生えているのか?」ということについては断片的な情報
しか得られていないように思います。
 私が研究しているノリの一種で絶滅危惧種のアサクサノリは、数少ない干潟
を生育地とする海藻です。とは言え、アサクサノリは干潟の砂や泥に生えてい
るというわけではなく、干潟に生える種子植物のヨシの茎や、干潟にある石や
岩、流木、人が立てた棒杭など、「干潟にある、ある程度の大きさの硬いモノ
」に付いているのです。そのような硬いモノが全く見られない干潟には、アサ
クサノリも見つけることができません。
 長年アサクサノリの調査で様々な干潟に行っていますが、干潟に見られる他
の海藻についてはこれまであまり注目してきませんでした。しかし、ある海藻
が採集されたことで、最近では他の海藻も積極的に採集するようになりました
。その海藻とは、黄緑色藻というグループに属する「フシナシミドロ属」とい
う藻類です。「海藻」は一般に海に住む藻類のうち肉眼でも見ることのできる
緑藻、褐藻、紅藻の3つのグループに属する種類を指しますが、他のグループ
でもわずかですが、肉眼視できる大きさのものがあります。フシナシミドロ属
 Vaucheria はそのような仲間のひとつです。体は緑藻と見分けのつかない緑
色で、細い糸状をしています。海にすむ種類もありますが、淡水や陸生のもの
もあり、全世界に見られます。日本でも17種、1変種が知られており、そのう
ち6種が海に見られます。その分類や生育地に関する研究は1970年代以降はほ
とんど行われていませんでしたが、近年、その一種、海産のウミフシナシミド
ロという種類が環境省によって絶滅危惧Ⅱ類に指定されてからやや注目を受け
るようになってきました。
 海産のフシナシミドロ属は、ほとんどが近畿地方から沖縄までの西日本から
のみ知られており、東日本からはわずかにウミフシナシミドロが静岡県の下田
で記録されているのみでした。しかし、私がアサクサノリ調査を行なっている
東北地方太平洋側の何カ所かの干潟で、フシナシミドロ属と思われる藻類が採
集されたのです。良く調べてみると、ウミフシナシミドロの他、これまで瀬戸
内海の数カ所でしか見つかっていなかった、Vaucheria mayyanadensis という
種類も混じっていました。またつい最近には、Vaucheria vipera と思われる
種類も見つかり、フシナシミドロ属が西日本だけでなく、東日本にもかなり分
布していることが明らかとなってきました。
 フシナシミドロ属は、アサクサノリと異なり、干潟の砂や泥中に半分埋まる
ような感じで生えていて、藻体の上部は砂や泥の表面から髪の毛のように立ち
上がっています。まさに、「干潟の海藻」と呼ぶにふさわしいような生え方を
する藻類です。日本産のフシナシミドロ属については、いつたくさん生えるか
、いつ成熟するかなどの、絶滅危惧種としてその保全を考える上で基本的かつ
重要な情報がとても少ないのが現状ですので、今後、そのような情報を収集し
ていこうと考えています。また、フシナシミドロ属以外にもいくつか干潟に多
く生える海藻がありますが、そのような海藻も定期的に調べ、「干潟にはどん
な海藻が生えているのか?」ということについて、少しきちんとした話のでき
る情報を得ていきたいと考えています。
 ところで、ここでは一般の方にも通じやすいように「干潟の'海藻'」と書き
ましたが、干潟域の水は、流入する河川等の影響で外海の海水よりも塩分が低
い「汽水」であるのが普通です。そのため干潟域は「海」ではなく普通「汽水
域」と言われます。従って、干潟に生える藻類も「海藻」ではなく「汽水藻」
と呼ぶのがより正確です。「汽水藻」にはアサクサノリやウミフシナシミドロ
のような絶滅危惧種もそれなりにあり、大きな藻類の少ない干潟では基礎生産
者として重要な役割を果たしていると思われます。「海藻」のように一般的な
名前にはなれないかもしれませんが、「汽水藻」も少し名が知れると良いなと
思っています。

(主任上席研究員 菊地 則雄)

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│★海の博物館周辺の情報
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●かつうら魅力市×B-1グランプリ
 日時: 11月4日(土) 9時00分~15時00分
青空市場や各種イベントの他、ご当地グルメも味わえます。
海の博物館も出展します! 

 以上の詳しい情報は、勝浦市観光ポータルサイト「かつうら潮風散歩道」を
ご覧ください。
http://www.katsuura-sanpo.com/

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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうご
ざいました。

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    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
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