千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第156号
配信日時:2018/02/01 10:00
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第156号
                          2018年2月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/

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 今月から、今年度の企画展示、マリンサイエンスギャラリー「房総の海の幸」
 が始まります。
 現在、担当者を中心に準備を進めています。
 お楽しみに!
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│目次
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★マリンサイエンスギャラリー「房総の海の幸」2月23日から!
★2月の行事案内
★研究員ノート −慶長地震津波−
★海の博物館周辺の情報
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│★ マリンサイエンスギャラリー「房総の海の幸」2月23日から!
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 2月23日(金)から、マリンサイエンスギャラリー「房総の海の幸」を
開催します。
 房総半島周辺の海は外洋域と内湾域、南部と北部で海洋環境が大きく異なり
、各地の海には多彩な生きものが生息しています。この展示では海の幸として
利用されている生物を中心にして、その生態や形態的特徴、食文化などについ
て紹介します。

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│★2月の行事案内
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 詳しくはこちらをご覧下さい。
  http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=533

【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海にまつわるさまざまなメニューにチャレンジす
る行事です。

 2月10日(土)「微小貝を探そう」
 2月24日(土)「海藻おしばを作ろう」

   (当日申込み。定員6名。先着順)
 ※入場料のほか、材料費50円/人が必要です。

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│★研究員ノート −慶長地震津波−
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 最近は「平成」の次の元号が何になるのか話題に上っていますね。ところで
日本のかつての元号に「慶長」がありました。歴史に興味がある方なら「慶長
小判」「文禄・慶長の役」など聞いたことがあるのではないでしょうか。
 自然災害における地震津波の歴史を調べているとしばしば出会うのが「慶長
地震」或いは「慶長津波」です。「慶長」とは今からおよそ400年ほど前の江
戸時代初期の元号です。この慶長年代(1596-1615)に、大きな地震津波災害が
あったことが以前から知られていました。この頃は頻繁に大きな地震が起こっ
ていたようで,伊予(愛媛県地方)・豊後(大分県地方)・伏見(京都府地方)に
被害をもたらしたそれぞれの地震も「慶長地震」と呼ばれることもありますが
,正確には「慶長」に改元する直前の「文禄」年間に発生した地震でした。こ
れとは違う慶長期の地震津波について,関東から四国・九州地方の太平洋岸各
地に伝承等が残っています。ここではこれを「慶長地震津波」とよんで区別し
ましょう。この「慶長地震津波」は伝承などが多く,確実な史料に乏しく地震
の規模や津波の様子さらには被害の実態等がよく分かっていない部分が多い災
害です。これはその後に起きた同様の津波や地震被害等により、史料や痕跡が
失われてしまったことによるのかもしれません。今回取り上げる「慶長地震津
波」の発生年についても、慶長六年であるとか慶長九年であるとかいろいろに
言い伝えられて来ました。今日に残る書き写されたり言い伝えを記したものの
中にはそれぞれ別の年号が見えます。
 勝浦市の中心市街地を臨む高台には遠見岬神社(とみさきじんじゃ)が鎮座
しています。今月2月23日からは「かつうらビッグひな祭り」が始まりますが,
参道階段に数多くのおひな様が飾られることで有名です。この遠見岬神社の沿
革伝承では、”慶長六年の津波で旧社地の社殿が流され、社宝の多くが失われ
てしまった”といわれています。津波以前,社殿のあった場所は、勝浦湾内の
平島辺り現在は湾内に浮かぶ小島ですが、当時は社殿を構えることができるほ
どの広さがあったとか、八幡岬と陸続きであったともいわれ,地震で沈降或い
は崩れて海中に没したとしています。また八幡岬も以前には遠見岬と呼ばれて
いたともいいます。
 『房総治乱記』という江戸時代初期に書かれたとされる戦記には”慶長六年
辛丑十二月十六日大地震。山崩れ海埋みて丘となる。この時安房上総下総の海
上俄に潮引き三十余町干潟となりて、二日一夜なり。同十七日子の刻、沖の方
夥しく鳴りて潮大山の如くに巻き上げ、浪村山の七分に打ちかくる。・・・”
とあり、続けて勝浦市内をはじめ津波被害の上総安房45か村の村名が書き上げ
られています。
 やはり江戸時代に書かれた戦記の『房総軍記』には”慶長六年辛丑冬十月十
六日俄に大地震動し、深山萬壑(谷のこと)鳴動すること夥し。・・・安房上総
の海は・・・潮三十余丁干潟して、平沙となること二日一夜・・・同十七日子
の刻に方々夥しく鳴動し、その響き大山の崩るるよりも凄まじ。程こそあれ逆
浪漲り溢れて潮水巻き上がり、民屋を流し大木を倒し堤壊れ岸砕け・・・”と
やはり大きな地震と津波が起こったことが記されています。
 ここまでの伝承や戦記は十月或いは十二月の違いはあるもののいずれも慶長
六年としています。ところが『当代記』『義演准后日記』等の関西地方で記さ
れた史料では慶長九年のこととされています。
 今日では、「慶長地震津波」は、慶長九年十二月十六日,西暦では1605年2
月3日に発生したとされています。さらにこの地震は震源の異なる二つの地震
ではなかったのかというのです。すなわち,一つは南海トラフが震源で,もう
一つは房総沖が震源といいます。当時にあっては同日に発生したこうした地震
は,震源が異なるなどということは分からないのは当然でしょう。観測体制の
図られた今日でも,本年1月5日に富山県西部と茨城県沖とでそれぞれ発生した
地震を一つの大きな地震と判断して緊急地震速報が出されるという事例があり
,私たちを慌てさせたのは記憶に新しいことです。 ところで,南海トラフを
震源とする地震は 西日本にあっては地震の揺れはさほどではなかったようで
,そのために人々が安心しているところへ大きな津波が襲来して被害を甚大な
ものにしました。こうした揺れが小さいにもかかわらず大きな津波が発生する
地震を「津波地震」といいます。一方,房総沖を震源とする地震津波にあって
は,激しい揺れを伴っていたのではないかと考えられます。先に紹介した房総
を題材とした戦記には激しい地震と津波があったように記されていて,この地
震が建物を倒壊させるような激しい地震の揺れとその後の大きな津波が印象的
であったことが伺えます。この「慶長地震津波」については現在も議論が多く
,揺れが小さいという点から震源はもっと遠い場所の遠地地震であるという説
も出ています。まだまだ解明しきれていない部分の多い地震の一つといえます。
 地震津波等,自然災害の史料や伝承を調べているといろいろな発見がありま
す。皆さんの身近なところにも,こうした歴史の痕跡があるかも知れませんね。
これからも地道に調査等を続けていこうと思っています。

(主任上席研究員 本吉正宏)
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│★海の博物館周辺の情報
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●「2018 かつうらビッグひな祭り」
 2月23日(金)〜3月4日(日)に、「かつうらビッグひな祭り」が開催され
ます。
 開催期間中、勝浦市芸術文化交流センター「Kuste(キュステ)」をはじめ、
市内各所に約30,000体のひな人形が飾られます。遠見岬(とみさき)神社では
、60段の石段一面におよそ1,800体の人形が飾られ、夕暮れ時からライトアッ
プされます。
 期間中は、子どもたちが稚児の衣装で着飾ったひな行列など、盛りだくさん
のイベントが行われ、土日は歩行者天国になり各種出店が行われます。

   詳しくは以下のホームページをご覧ください。
   http://www.katsuura-sanpo.com/news/post-15821/

●かつうら海中公園で「ちっちゃいひな祭り」を開催
 かつうら海中公園では勝浦「ビックひな祭り」に伴い「ちっちゃいひな祭り」
を開催し、皆様の手作りひな人形を展示します。
 展示期間は2月23日(金)〜3月4日(日)で、手作りひな人形の応募締切は2月
9日(金)です。

   詳しくは、かつうら海中公園のホームページをご覧下さい。
   http://www.katsuura.org/

 勝浦観光の詳しい情報は、勝浦市観光ポータルサイト「かつうら潮風散歩道」を
ご覧ください。
http://www.katsuura-sanpo.com/

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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうご
ざいました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
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    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
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