千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第158号
配信日時:2018/04/01 10:00
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第158号
                          2018年4月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/

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 海の博物館は、新しい体制で平成30年度をむかえます。
 本年度も、どうぞよろしくお願いいたします。

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│目次
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★マリンサイエンスギャラリー「房総の海の幸」開催中!
★4月、5月前半の行事案内
★研究員ノート −「大地」を知る意味を考える.
         そして,その保護活動に関する課題提起−
★職員の異動
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│★ マリンサイエンスギャラリー「房総の海の幸」開催中!
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 今年度の企画展示、マリンサイエンスギャラリー「房総の海の幸」が開催中
です。
 食として利用されている生きものを中心にして、その生態や形態的特徴、食
文化などについて紹介しています。
 会期は5月6日(日)までです。お見逃しなく!

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│★4月、5月前半の行事案内
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 詳しくはウェブサイトをご覧下さい。

【観察会】 *2週間前までに事前申込、保険料50円
 4月30日(月・休)「海藻を観察しよう」
 5月3日(木・祝)「ウミウシを観察しよう」
 5月5日(土・祝)「親子で磯の生きものを探そう」

【磯・いそ探検隊】 *当日先着順、保険料50円
 研究員の案内で博物館前の磯で生きものを観察します。
 4月21日(土) 13:30〜14:30
 5月4日(金・祝) 12:30〜13:30

【博物館探検隊(バックヤードツアー)】 *当日先着順
 ふだん見ることのできない博物館のバックヤードを、研究員の案内でめぐり
ます。
 4月29日(日・祝) 11:00〜11:30、13:30〜14:00

【みんなで工作 海の生きもの】 *当日先着順、材料費50円
 海の生きものにちなんだ簡単な工作を行います。
 各日2回、10:45-11:45 13:30-14:30
 5月6日(日)「海で見つけた材料でオリジナルオブジェを作ろう」

【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海にまつわるさまざまなメニューにチャレンジす
る行事です。
 4月7日(土)「微小貝を探そう」
 4月28日(土)「海藻おしばを作ろう」
 5月12日(土)「コーラルプリントをしよう」

   (当日申込み。定員6名。先着順)
 ※入場料のほか、材料費50円/人が必要です。

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│★研究員ノート −「大地」を知る意味を考える.
         そして,その保護活動に関する課題提起−
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 分館長の新です.今回は「大地を知る意味」について書きます.ここで言う
大地とは,我々の足元の下にある過去の時代(いわゆる地質時代)の領域です
.当然,自然現象(地球のダイナミズム)により形成されているもののみを指
しますから人工的に埋め立てた場所は除きます.
 『海からのたより』第149号(7月1日)の「研究員ノート」の中で記述した
とおり,房総半島では恐竜が生きていた時代から新しい時代までの地質現象(
地層の成り立ちや,化石・岩石・鉱物の産状,分布等)を見ることができます
.私はこれらのフィールドを利活用して調査研究を進めるとともに,児童生徒
,学生等の学びの場を展開しています.ではなぜ,こういった大地の研究を行
い,学ぶ機会を設ける必要があるのでしょうか?
 我々人類の歴史や文化を考える際,まずは地球という自然から導入すること
が望ましいと考えています.理想的には宇宙全体としてとらえることが望まし
いのですが,そこまで広範になると際限が無くなるので地球からとしましょう
.大地があり,そこに動植物が生息・生育分布し,その自然環境を舞台として
そこに歴史が刻まれ,文化が育まれるという流れが順当な考え方です.中央博
物館本館の常設展示においても,「房総の自然と人間」という全体テーマを語
る際,自然→歴史・文化→自然と人間とのかかわりという流れで構成していま
す.
 以上のように,自然領域の中においてもその起点となる大地をまず知ること
から全てがスタートするという考えから,「大地の研究を行い,学ぶ機会を設
ける必要がある」と言えるのです.閑話休題.
 さて,最近,我が房総半島は何かと地質現象に関する話題が豊富です.読者
の皆さんも既にご承知のことと思いますが,渦中の「チバニアン」もその一つ
です.特に昨年末あたりから,テレビや新聞等のメディアでも大きく取り上げ
られたことから,多くの見学者が県内はもとより県外からも見に来ています.
私が何度も訪れていた頃は,現地で人と会うこと自体,非常に稀だったのです
が,今は土日ともなると多くの見学者が来ている状況です.
 こういった地質関係の話題について過去を振り返ってみますと,ザトウクジ
ラの下顎骨や肋骨等の化石が発見された(2003年,君津),新種ハナガメ等の
化石が県の天然記念物に指定された(2008年,袖ケ浦),犬吠埼の白亜紀浅海
堆積物等の銚子一帯がジオパークに認定された(2012年,銚子),ネギ畑から
ザトウクジラの頭骨等の化石が発見された(2015年,柏)等々,結構あります.
 チバニアンに関しては,現在,数多くの情報が公開されていますので,詳細
はそれらを参照していただくとして,ここではこういった地質現象等がクロー
ズアップされた際,私が予てより懸念している事について警鐘を鳴らしたいと
思います.それは,研究者としてのモラルと人としてのモラルです.
 研究者としてのモラルとは何か?それは調査・研究というある意味強力な説
得材料を有効活用?して,サンプリングに興じることです.もちろん,それぞ
れの分野において,特に自然誌系の研究者の場合はターゲットが自然そのもの
ですから,化石,岩石,鉱物,動植物に至るまで研究素材として数多くのモノ
を確保することは重要です.一つでも多くのモノを見て,他のモノと比較検証
していくプロセスが重要であることは間違いありません.かく言う私も全国各
地の露頭に調査と称し出向き,時として露頭破壊と言えるレベルのサンプリン
グをした経験も一度や二度ではありません(若い頃の事です).その後,モノ
を守り次世代に継承していく使命を有している博物館の研究者としての意識か
らその傾向は減少しましたが,今度は逆に行く先々の露頭がむやみに破壊され
ている実態に嘆かわしい気持ちを抱くようになりました(都合の良い話ですが
).しかし,実態としてこういった状況は各地で確認することができます.中
には,明らかに個人のレベルとは思えない破壊(例えば,小型ユンボ等による
)が行われている状況も多々あります.こうして得られたモノの行く末は何な
のでしょうか・・・.個人のコレクション?販売目的?・・・・・
 こういった実態を抑止するためか,地域資源(地球資源)の保護意識からか
,昨今では,地層や化石等がサンプリングできるエリアでは,ハンマーを持っ
てウロウロしていると地元の方々から「何してるの?」「化石を採りに来たの
?」と半分怪訝そうな顔で声をかけられることも多々あります.このこと自体
は,地域の人たちが自分達の身の回りにある自然や歴史,文化資源を守ってい
こうという意識の涵養につながっていると思えば非常に喜ばしいことです.
 これらの事例をあげてまで私が申し上げたいのは,上記でも紹介した「チバ
ニアン」の今後です.現段階では,まだ候補地の一つですが,私としてもぜひ
とも国際標準模式地として認定されることを心より願っています.正式に命名
されれば,約77万~12万6千年前の地層は世界のどこにあっても「チバニアン」
という名称で呼ばれるわけです.我が国にとってはこれ以上に無い名誉です.
 しかし,ここで私が懸念していることは,こういった名誉ある出来事に水を
差すような行為が想定されることです.特に我が国の場合その傾向は顕著です
.指定地や認定地に足を運び,実際に見ることは誰もが体験したいことです.
候補地に過ぎない現時点においても多くの見学者が訪れている実態がそれを如
実に物語っています.チバニアンが正式に認定されればさらに多くの見学者が
足を運ぶでしょう.そして,懸念されることとして露頭破壊に至る行為が想定
されるのです.このことはニュース等でもたびたび取り上げられるように,各
地の自然,歴史,文化資産に対する落書行為,印刻行為の事例を見れば明白で
す.
 この行為自体を抑止するためには,地元はもとより県,学会,研究者集団等
が保護対策を講じることが重要ですが,何よりも「人としてのモラル」の問題
が非常に大きいと言えます.
 我々が,今,目にしている様々な資産,現象はこれから長大に続くであろう
地球史の1ページに過ぎません.それらは我々のものであると同時に後世に引
き継ぎ,いつの時代においても,その時代の人々が今と同じ状態で見ることが
できる環境と体制構築が必要なのです.その意識を継続させていくように我々
研究者も取り組んでいきますので,読者の皆さんも自分のこととしてぜひ考え
て下さい.「いかに守り,次世代に継承していくことができるか」について.

(分館長 新 和宏)
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│★職員の異動と30年度の海の博物館の職員の専門分野
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★職員の異動
 3月31日及び4月1日付けで、海の博物館の職員の異動がありました。転入職
員の自己紹介は次号に掲載します。

【転入・採用】
 副主幹 丸山 茂喜(中央博物館庶務部より)
 副主幹 所 甚一(教育庁財務施設課より)

【転出・退職】
 副主幹   近藤 佳純(安房拓心高校へ)
 上席研究員 吉田 真照(中央博物館大多喜城分館へ)
 チャレンジ嘱託  古根村 美吹(退職)

★30年度の海の博物館の職員の専門分野
 30年度に在籍する職員の専門分野は次のとおりです。海の生きもの等に関す
る質問があるときに参考にしてください。

 主任上席研究員 川瀬 裕司【魚(魚類行動学)】
 主任上席研究員 立川 浩之【刺胞動物イシサンゴ類(海洋生物学)】
 主任上席研究員 奥野 淳兒【エビ、ヤドカリなど(甲殻類学)】
 主任上席研究員 菊地 則雄【海藻(藻類学)】
 主任上席研究員 柳  研介【イソギンチャクなど(刺胞動物学)】
 主任上席研究員 村田 明久【フジツボなど(動物行動学)】
 主任上席研究員 本吉 正宏【歴史(史学・博物館学)】

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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうご
ざいました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
    http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU
お問い合わせはこちらへ umihaku@chiba-muse.or.jp
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