千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第166号
配信日時:2018/12/01 11:10
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第166号
                          2018年12月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/

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2018年も残すところわずかとなりました。
今年最後の「海からのたより」です。

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│目次
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★年末年始の開館情報
★12月、1月前半の行事案内
★研究員ノート −化石の研究で必要なこと。
 古生物学の研究者はどういった視点で研究することが望ましいか・・・−
★海の博物館周辺の情報
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│★ 年末年始の開館情報
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 年末年始にかけて、臨時休館がございます。ご注意ください。
 新年は、1月2日(水)から開館いたします。

臨時休館:平成30年 12月11日(火)、12日(水)
     平成31年 1月16日(水)、17日(木)
年末年始の休館:平成30年12月28日(金)〜平成31年1月1日(火)

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│★12月、1月前半の行事案内
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【講座】
 12月9日(日)「ヒラムシってどんな生きもの?」
 海にすむ紙のように薄い動物・ヒラムシについて紹介します。
 ※申込締切は過ぎておりますが、お問い合わせください。

【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海にまつわるさまざまなメニューにチャレンジする行事です。
 12月  8日(土)「微小貝を探そう」
 12月 22日(土)「海藻おしばを作ろう」
  1月 12日(土)「コーラルプリントをしよう」
   (当日申込み。定員6名。定員を超えた場合は抽選となります)
 ※入場料のほか、材料費50円/人が必要です。

 詳しくはウェブサイトをご覧下さい。
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/UMIHAKU/genre/1517380874379/index.html

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│★研究員ノート −化石の研究で必要なこと。
│ 古生物学の研究者はどういった視点で研究することが望ましいか・・・−
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 分館長の新です。今回は、化石を研究対象としている研究者にとって、その
化石をどういった視点で研究していくことが望ましいかについて書きます。
 まず、最初に「化石」の定義を明確にしておきましょう。
この定義付けの前に一つの話題を提供します。私は博物館や公民館、学校、N
PO等市民団体等の事業で化石セミナーを実施する際、参加者に対してクイズを
出しています。そのクイズは次の問いです。皆さんも考えてみてください。
 Q. 次の中で化石はどれでしょう?
  (1)1億年前のアンモナイトや恐竜の骨
  (2)1万年前の縄文人が食べて捨てた貝殻
  (3)昨日、みそ汁に入っていたアサリのから
  (4)今日、海岸に打ち上げられていた貝殻
 ・・いかがですか?この四つの中で、理論上、化石と呼べるのは(1)と(4)です
。いわゆる「石のように堅くなっている=石化(せきか)=化石」という文字
の成り立ちから考えれば、(2)も化石と言っても良いかもしれませんが、根本的
な違いがあります。それは、「個々の生物が生息している生態環境、生活環境
に人が介在した場合は、例え、石化していたとしても化石とは言えない」とい
うことです。このことから上記のクイズを振り返ってみますと、(2)と(3)はその
貝にとっては、自らの意思や行動範囲等から逸脱した状況に置かれていること
になります。分かりやすい例が「貝塚」です。貝塚から出土する貝自体は、そ
の状態からだけ見れば明らかに石化しており化石のようでもあります。しかし
、貝自体は自らの意思や行動としてその場に移動してきたわけでは無く、食や
祭祀上の目的で人為的に持ち込まれ、目的が果たされた後は集落の一角に捨て
られたものです。つまりこれが「貝塚」と称されているわけです。クイズの解
説が少し長くなりましたが、「化石」の定義は次のとおりです。
  “化石とは、過去に生きていた「生き物の遺骸または痕跡」で、生き物自
らが自然の状態で絶命(絶命後の時間の長短は関係無い)したもの。”
 さて、本題に入ります。古生物学者は様々な過去の生き物を研究対象として
います。化石といって皆さんがイメージするものとして、恐竜やアンモナイト
、三葉虫、貝、サメの歯等があり、これらは私の化石セミナーでも人気のベス
ト5です。これらの化石に触れている時の参加者の顔は好奇心に満ちています。
 ここで化石の研究を行う上で留意しなければならないことを2点挙げます。
 一つは上に記した「過去の生き物」だけを研究してもダメだということです
。ご承知の通り、生き物の世界はこの地球上に生命体が発生して以来、進化と
絶滅を繰り返しています。過去に生息していた種が現在も生き続けているもの
、進化の過程(考え方によっては同じ現象を退化とも言うが)を歩んでいるも
の、絶滅またはその危機にあるもの、等々ですが、「生命」というくくりの中
では連綿と引き継がれていると言えます。このことから、古生物学だからとい
って過去の生き物だけを研究していたのでは、現生種や違う時代に生息してい
た生き物との比較検証(生態、環境の全領域)がおろそかになってしまいます。
 二つ目は化石の何を研究するかです。これはどういうことかと言いますと、
普通、化石の研究を行う場合、その研究素材は大地から化石本体(恐竜の骨や
歯、アンモナイトの殻、サメの歯等の遺物)をサンプリングし、それをクリー
ニングし(石から取り出すこと)、種の同定や他との比較等を行っていきます。
 しかし、これだけではその本体がどういう形状であり、どのくらいの大きさ
か、さらに、大型の個体であれば、どの部位とどの部位がどのようにつながる
のか、といった「形の復元」が中心となってしまいます。
 果たして、この復元だけでその種の生態が分かるでしょうか。もちろん、全
体像を把握することは必要ですし、研究のプロセスの重要な一面ではあります
。しかし、これだけではその種の「静」の部分のみの情報で終わってしまいま
す。その種の行動現象や生活環境と言った「動」の部分の情報を得ることで化
石の研究は飛躍的に向上します。いわゆる見えなかった部分が見えてくるわけ
です。
 それではこの「動」の情報は何から読み取るのでしょうか。この情報は化石
の定義付けのところで示した「生き物の痕跡」に隠されているのです。皆さん
も良く知っている例としては恐竜の足跡の化石です。これらの化石は、我が国
でも産出例は多く、群馬県多野郡神流町、福井県勝山市、岐阜県白川村、長野
県北安曇郡小谷村等のジュラ紀や白亜紀層の地層中に見ることができます。
 足跡の化石から読み取ることができる情報は非常に多く、その種の生息場所
、移動速度、食物連鎖(どの種がどの種を捕食していたか)はもとより、その
体型にまで及びます。この体型把握自体は化石の復元に大きく貢献することと
なります。数十年前までの大型肉食恐竜(ティラノサウルスやアロサウルス等
)の復元は、大きな後ろ足2本と長いシッポの3点支持で歩行しているもので
した。良く言う「ゴジラ体型」だったわけです。しかし、足跡の化石を調査研
究していく中で、足跡の痕跡の間にシッポを引きずった痕跡が見られないこと
、それらの種の生体力学的な研究等から、現在では、大きな後ろ足を支点とし
て頭部とシッポがほぼ水平になった「ヤジロベエ体型」へと変化しています。
 このように、古生物学の領域においては、化石本体ばかりを研究するのでは
無く、その種の痕跡を研究することで、生態そのものをはじめ、生活環境、さ
らにはその時代の古環境も解明していく重要な鍵を得ることができるのです。
 いや~、学問することは面白いですね。

(分館長 新 和宏)

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│★海の博物館周辺の情報
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●お正月、初日の出スポット
 海の博物館の所在する勝浦市は房総半島の南東部に位置していることから、
太平洋から昇ってくる日の出を見ることができます。
 おすすめは勝浦市街地の東に位置する「官軍塚」とその近くにある勝浦城
址(八幡岬公園)、そして海の博物館の近くの「鵜原理想郷」でしょう。
 これらの場所は海岸の高台にあって美しい日の出を眺めることができます。
 詳しくは以下の勝浦市ホームページをご覧ください。

「官軍塚」
http://www.city.katsuura.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=29183
「八幡岬公園(勝浦城跡)」
http://www.city.katsuura.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=29182
「鵜原理想郷」
http://www.city.katsuura.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=29499

 勝浦観光の詳しい情報は、勝浦市観光ポータルサイト「かつうら潮風散歩道」
をご覧ください。
http://www.katsuura-sanpo.com/

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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうございました。

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    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
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