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海からのたより 第168号
配信日時:2019/02/01 10:00
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第168号
                          2019年2月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/

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 いよいよ、今年度の企画展示、マリンサイエンスギャラリー「水辺の外来生物」
 が始まります。

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│目次
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★—予告— マリンサイエンスギャラリー「水辺の外来生物 -房総の海と川から-」
★2月、3月前半の行事案内
★研究員ノート −大西洋に分布を広げる太平洋産のイシサンゴ「イボヤギ」−
★海の博物館周辺の情報
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│★ —予告— マリンサイエンスギャラリー「水辺の外来生物 -房総の海と川から-」
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 2月9日(土)から、マリンサイエンスギャラリー「水辺の外来生物 -房総の海と川から-」を
開催します。

 もともとその地域にはすんでいなかったのに、人間によって他の地域から持ち込まれた生きものを「外来生物」と呼びます。この展示では、房総の海や川でみられる外来生物の種類や生活、生態系に及ぼす影響などについて紹介します。

 お楽しみに!

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│★2月、3月前半の行事案内
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【講座】 *2週間前までに事前申込
 3月10日(日)「海藻に見る外来生物」
 外来生物となっている海藻について紹介します。

【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海にまつわるさまざまなメニューにチャレンジする行事です。
  2月  2日(土)「微小貝を探そう」
  2月 23日(土)「海藻おしばを作ろう」
  3月  9日(土)「コーラルプリントをしよう」
   (当日申込み。定員6名。定員を超えた場合は抽選となります)
 ※入場料のほか、材料費50円/人が必要です。

 詳しくはウェブサイトをご覧下さい。
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/UMIHAKU/genre/1517380874379/index.html

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│★研究員ノート −大西洋に分布を広げる太平洋産のイシサンゴ「イボヤギ」−
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 イボヤギTubastraea coccineaというイシサンゴは、暖かい海に住む無藻性イシ
サンゴ(体内に共生藻を持たないイシサンゴ)で、日本周辺にも分布し、千葉県
からも記録があります。直径10 cmくらいまでの塊状の群体を作り、浅い海の岩
陰のようなやや日陰のところに集団で付着していることが多く、港の岸壁や魚類
養殖用の生簀などの人工物にもよく付着しています。生きているときはあざやか
なオレンジ色で、水中でたいへんよく目立つ種です。水族館などでも飼育されて
いることが多いので、目にしたことのある方もいらっしゃることでしょう。本種
は、もともとインド-太平洋域(紅海やマダガスカルからハワイ、ガラパゴス諸
島やエクアドルにかけての広い範囲)の熱帯から温帯の浅海に生息していたので
すが、現在ではカリブ海や南西大西洋でも見られるサンゴになっています。
 カリブ海からのイボヤギの最初の報告は、1943年に出版された論文に見ること
ができます。この論文の記録はプエルトリコとキュラソーで採集された標本に基
づくもので、標本の採集時期は正確には記録されていませんが、おそらく1930年
代末と推定されています。はっきりとした年代のわかる記録は1948~1950年のオ
ランダ領アンティル諸島のもので、報告された標本のうちのいくつかは船の底に
付着していたものだったそうです。その後、カリブ海でのイボヤギの記録は初期
の報告地点を中心に次第に広がり、現在ではカリブ海のほぼ全域で普通に見られ
るサンゴになりました。たいへん目立つ種でありながら古くから海洋生物の調査
が盛んだったカリブ海で1943年以前には報告が無いこと、初期に報告された地域
から確認された地域が徐々に広がってきたこと、船底に付着しているものが見つ
かっていることなどから、カリブ海のイボヤギはインド-太平洋域からおそらく
船底に付着するなどの方法で人為的に持ち込まれたものが、次第に分布を拡大し
てきたものだろうと考えられています。イボヤギは雌雄同体の群体性サンゴで、
親群体の体内で卵と精子が受精しプラヌラ(水中を漂う幼生)を放出するという
生殖様式を持つほか、無性的にもプラヌラを放出することができます。プラヌラ
が着底して稚サンゴになると、ほぼ1年半で生殖が可能になるという成長の速い種
でもあります。このような生物学的な特性も、偶然侵入したものが広い範囲に急
速に定着できた理由の一つとなりそうです。
 近年、カリブ海以外の大西洋域でもイボヤギが見つかるようになってきました。
フロリダ半島の東沖にあるバハマ諸島では1990年に生息が確認されています。ま
た、メキシコ湾の北部では、1991年に初めて石油掘削用のプラットフォームで見
つかって以来、多くの石油掘削施設で確認されるようになっています。石油掘削
用プラットフォームはタグボートに曳航されて操業位置を変えたり、ドックに運
んで修理されたりすることがあり、付着したイボヤギの分布拡大に大きな役割を
果たしているようです。メキシコ湾の石油掘削施設では、まだわずかな記録です
がイボヤギと同属のナンヨウイボヤギTubastraea micranthus(インド洋~西部
太平洋が本来の分布域)もみつかっています。
 南大西洋のブラジル沿岸でも、1980年代末にリオデジャネイロ州沖合いに設置
された石油掘削用プラットフォームに付着しているイボヤギと、その近縁種であ
るTubastraea tagusensis(東太平洋のガラパゴス諸島沿岸が本来の分布域)がみ
つかりました。その後、両種の分布域は急速に広がり、現在はブラジル沿岸の20
00 kmを超える範囲で確認されるようになりました。熱帯域にあるバイア州のサ
ンゴ礁域の生物保護区では、生息環境の重なるMycetophyllia hispidaというブラ
ジル固有種のイシサンゴを駆逐してしまうのではないかと心配されています。
 カリブ海や大西洋のイボヤギのように、人間の活動によって本来分布していな
かった場所に住むようになった生きもののことを外来種と呼びます。現代の人間
の活動に伴い、世界のいたるところで数多くの外来種が知られるようになってき
ました。海の博物館では、2月9日から5月6日まで、房総の海と川でみられるさま
ざまな外来生物を紹介するマリンサイエンスギャラリー「水辺の外来生物-房総
の海と川から-」を開催します。この機会に、私たちの身近で見られるさまざま
な外来生物をご覧いただき、その生態系に及ぼす影響などをぜひ考えてみてくだ
さい。期間中、上で紹介したイボヤギやナンヨウイボヤギの展示も行う予定です。

(主任上席研究員 立川浩之)

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│★海の博物館周辺の情報
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●「2019 かつうらビッグひな祭り」
 2月22日(金)〜3月3日(日)に、「かつうらビッグひな祭り」が開催され
ます。
 開催期間中、勝浦市芸術文化交流センター「Kuste(キュステ)」をはじめ、
市内各所に約30,000体のひな人形が飾られます。遠見岬(とみさき)神社では
、60段の石段一面におよそ1,800体の人形が飾られ、夕暮れ時からライトアッ
プされます。
 期間中は、盛りだくさんのイベントが行われます。

   詳しくは以下のホームページをご覧ください。
   http://www.katsuura-sanpo.com/facilities/event/post-449/

●かつうら海中公園で「ちっちゃいひな祭り」を開催
 かつうら海中公園では勝浦「ビックひな祭り」に伴い「ちっちゃいひな祭り」
を開催し、皆様の手作りひな人形を展示します。
 展示期間は2月22日(金)〜3月3日(日)で、手作りひな人形の応募締切は2月
15日(金)です。

   詳しくは、かつうら海中公園のホームページをご覧下さい。
   http://www.katsuura.org/

 勝浦観光の詳しい情報は、勝浦市観光ポータルサイト「かつうら潮風散歩道」を
ご覧ください。
http://www.katsuura-sanpo.com/

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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうございました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
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