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海からのたより 第170号
配信日時:2019/04/01 10:00
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第170号
                          2019年4月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/

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 平成最後の海からのたよりです。
 海の博物館は新しい体制で新年度を迎えます。
 本年度も、どうぞ宜しくお願いいたします。

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│目次
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★マリンサイエンスギャラリー「水辺の外来生物 -房総の海と川から-」開催中!
★4月、5月前半の行事案内
★研究員ノート −水辺の外来生物-ワカメ-
★職員の異動
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│★マリンサイエンスギャラリー「水辺の外来生物 -房総の海と川から-」開催中!
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 今年度の企画展示、マリンサイエンスギャラリー「水辺の外来生物 -房総の海と川から-」が開催中です。

 もともとその地域にはすんでいなかったのに、人間によって他の地域から持ち込まれた生きものを「外来生物」と呼びます。この展示では、房総の海や川でみられる外来生物の種類や生活、生態系に及ぼす影響などについて紹介します。

 会期は5月6日までです。お見逃しなく!

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│★4月、5月前半の行事案内
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 詳しくはウェブサイトをご覧下さい。

【観察会】 *2週間前までに事前申込、保険料50円
 5月4日(土・祝)「海藻を観察しよう」
 5月5日(日・祝)「ウミウシを観察しよう」

【磯・いそ探検隊】 *当日先着順、保険料50円
 研究員の案内で博物館前の磯で生きものを観察します。
 4月20日(土) 10:30〜11:30
 5月6日(月・振休) 11:00〜12:00

【博物館探検隊(バックヤードツアー)】 *当日先着順
 ふだん見ることのできない博物館のバックヤードを、研究員の案内でめぐり
ます。
 4月28日(日) 11:00〜11:30、13:30〜14:00
 5月3日(金・祝) 11:00〜11:30、13:30〜14:00

【海の体験コーナー】
 体験交流員といっしょに、海にまつわるさまざまなメニューにチャレンジす
る行事です。
 4月13日(土)「オリジナルオブジェを作ろう」
 4月27日(土)「オリジナルオブジェを作ろう」
 5月11日(土)「微小貝を探そう」

   (当日申込み。定員6名。先着順)
 ※入場料のほか、材料費50円/人が必要です。
 
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│★研究員ノート −水辺の外来生物-ワカメ-−
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 2月9日(土)から企画展示「マリンサイエンスギャラリー 水辺の外来生物-
房総の海と川から-」が始まりました。私が主担当として企画・準備した企画展
示です。私の専門分野は海藻ですが、数年に一度の割合で回ってくる企画展示の
主担当を海藻をテーマにしたものだけでは乗り切れないので、地元で見られる淡
水生物の保全などにも関わってきている関係から、海だけでなく淡水の生物も含
めた「水辺の生きもの」というくくりでの企画展示を、何度か企画・開催してき
ました。「外来生物」というテーマを意識したのは、そのような淡水生物の保全
活動の中で、外来生物によるいくつもの問題が発生していた現状を見てからです
。最近、テレビなどでも外来生物が頻繁に取り上げられていることからも、「外
来生物とはどのようなものなのか?」を知っていただく機会としてはちょうど良
い時期にも当たったかと思っています。
 「外来生物」というと「外国から人間によって日本に持ち込まれて問題を起こ
している生物」という認識が一般的かと思われますが、実際は、目に見えるよう
な問題をほとんど起こしていない古い時代に持ち込まれた外来生物がいたり、ま
た、日本の別の地域から持ち込まれた「国内外来生物」がいたり、はたまた、逆
に日本にもともといる「在来生物」が、外国に持ち出されて彼の地で外来生物に
なったりしている例もあり、「外来生物」にもいろいろあります。詳しくはぜひ
展示を見ていただくとして、ここでは、私の専門の海藻の中で、日本などから外
国に持ち出されて外来生物になり、彼の地で問題になっているワカメについてご
紹介します。
 ワカメは言わずと知れた日本の代表的な食用海藻のひとつで、海の博物館前の
海にもたくさん生育します。原産地は日本や韓国などの東アジアです。1970年代
に貝のカキの稚貝を養殖目的でヨーロッパに輸出したときに、それにワカメなど
の海藻がくっついて行ってしまったらしく、彼の地で広まってしまったのです。
その後、1980年代後半以降には、オーストラリア、ニュージーランド、北アメリ
カ、アルゼンチンなど、世界中に広まりました。これらは、船体に付いたり、船
の安定を保つために船底に入れる「バラスト水」に入ることによって広まったと
考えられています。世界中に広まったワカメを調べた研究結果では、ニュージー
ランドやオーストラリア、また北米には、日本や韓国の複数の場所から何回かに
渡って移入し、南米へはニュージーランド・オーストラリアから二次的に広まっ
たとの推測がされています。
 私が2008年にニュージーランドを訪れたときにも、首都ウエリントンの海岸に
はたくさんのワカメが見られました。ニュージーランドは、外来生物の侵入に対
して大変厳しい政策を行っていますが、そのような中でもワカメは増え続けてい
るようです。ニュージーランドの研究者によると、彼の地の風習や拡大を防ぐ政
策などもあって、増え続けるワカメを採取して食用にすることはまれで、スープ
などで食べるワカメは日本や韓国からの輸入ものを使用するそうです。近年、ワ
カメが大量に発生した地域などでは、その量のコントロールのためなどもあり、
許可を得て、採取・加工して販売する例も見られるようになってきたようですが
、もともとワカメの生えていなかった海岸で、今では見渡す限りにワカメが繁茂
している場所もあるようで、もともとの生態系に大きな影響を与えていることは
確実です。とは言え、ワカメの駆除については、なかなか厳しい状況があるよう
です。
 日本では多くの外国からの外来生物が知られていますが、なぜか海藻について
は、ワカメのように日本から外国にもたらされたものばかりで、外国から日本に
持ち込まれて外来生物になっているケースはほとんど知られていません。「キラ
ー海藻」の名で知られる緑藻類イチイズタの変異種は、地中海などで大量に繁茂
して問題になっていますが、一度日本に持ち込まれたケースがあったものの、結
局は定着はしなかったようです。外国から日本に持ち込まれた外来海藻は、その
例があるくらいのようで、なぜ、外国から日本に持ち込まれた外来海藻がほとん
どないのか、その理由はよくわかっていないようです。
 私たち日本人にとってなじみ深く、しかも重要な食用海藻であるワカメが、海
外で厄介者として駆除の対象となっている現状については、海藻研究者としては
、何となく寂しい思いを抱いてしまいます。逆に、日本で外来生物が悪者として
目の敵のようにされていることについて、もしかしたら、その生きものの原産国
の人にとっては、複雑な思いがあるのかもしれません。いずれにしても人間が関
与して生じる外来生物ですので、人間の手によって、少しでも良い方向にして行
かないといけないと考えます。この企画展示が、外来生物について少しでも考え
てみる機会になりましたら、担当者として大変嬉しい限りです。

(主任上席研究員 菊地 則雄)

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│★職員の異動と31年度の海の博物館の職員の専門分野
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★職員の異動
 3月31日及び4月1日付けで、海の博物館の職員の異動がありました。
 新職員の自己紹介は次号に掲載します。

【転入・採用】
 副主幹   近藤 佳純(安房拓心高校より)
 上席研究員 吉田 真照(中央博物館大多喜城分館より)
 体験交流員 山田 池永子(新規採用)

【転出・退職】
 分館長   新 和宏(退職)
 副主幹   所 甚一(退職)
 体験交流員 原田 佳世子(退職)

【昇任】
 分館長   立川 浩之(主任上席研究員)

★31年度の海の博物館の職員の専門分野
 31年度に在籍する職員の専門分野は次のとおりです。海の生きもの等に関す
る質問があるときに参考にしてください。

 分館長     立川 浩之【刺胞動物イシサンゴ類(海洋生物学)】
 主任上席研究員 川瀬 裕司【魚(魚類行動学)】
 主任上席研究員 奥野 淳兒【エビ、ヤドカリなど(甲殻類学)】
 主任上席研究員 菊地 則雄【海藻(藻類学)】
 主任上席研究員 柳  研介【イソギンチャクなど(刺胞動物学)】
 主任上席研究員 村田 明久【フジツボなど(動物行動学)】
 主任上席研究員 本吉 正宏【歴史(史学・博物館学)】
 上席研究員   吉田 真照【学校連携】

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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうございました。

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    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
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