千葉県立中央博物館メールマガジン バックナンバー
★ ちば中央博メール 2020年6月号 ★
配信日時:2020/06/10 08:00
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    ちば中央博メール 2020年6月号(2020年6月10日発行・第164号)
        http://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/

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目 次
1.お知らせ
2.中央博の窓-129
3.イベント情報
(1)中央博物館本館・生態園
(2)大利根分館
(3)大多喜城分館
4-1.トピックス 天然記念物とはなにか①
4-2.トピックス チバニアンはどうすごいのか①
5.研究室から-102 「時の裏側」
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1.お知らせ
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◆博物館の再開館について
 千葉県立中央博物館は新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から令和2年3月3日
(火)より休館していましたが、5月22日(金)の県新型コロナウィルス感染症対策本
部会議での決定を受け、感染防止対策を講じた上で5月26日(火)より再開しておりま
す。
 本館・生態園ともに10:00~16:30の開館とします。
 年間パスポートの期限延長を行っています。くわしくはホームページをご覧くださ
い。↓
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/NATURAL/contents/1584073375870/index.html#年間パスポート


◆現在休止中の展示・サービス
・講堂、研修室を含む1階ホール
・「たいけんのもり」を含むハンズオン展示
・オリエンテーションハウスおよび野鳥観察舎(生態園)
・団体受付(学校および一般団体)
・イベントおよびミュージアム・トーク
・音声ガイド貸出
・図書閲覧サービス
・学習キットの貸出

◆新型コロナウィルス感染拡大防止のため休館していた、春の展示「うめ・もも・さ
くら」を6月28日まで、チバミュージアムフェスタ2020~千葉県立美術館・博物館展
覧会~ 「オリンピック・パラリンピック」と千葉のスポーツ史を8月31日まで会期を
延長して開催しています。
※開館日をご確認の上ご来館ください。開館日カレンダー↓
  http://www2.chiba-muse.or.jp/www/NATURAL/contents/1517539269054/index.html#kaikanbi

なお、感染拡大の状況などにより変更が生じる場合がございます。ご了承くださるよ
うお願いいたします。

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2.中央博の窓-129 「大多喜藩の弓」
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 大多喜城分館では、収蔵資料展「大多喜藩の弓」を開催します(7月9日~10月18日)。
 天下泰平の世といわれた江戸時代。武器を使った戦(いくさ)はなくなりましたが、
武芸は武士の嗜(たしな)みとなり、「武芸百般」と称されるほど多くの武芸が普及し
ました。ところで、上総国大多喜藩には、兵学・軍法、弓術、馬術、剣術、槍術など
の武芸が伝えられたとされています。しかし、現存する資料に乏しいことから、ほと
んどの武芸の実態が分かっていません。そんな中、大多喜城分館では、弓術流派の一
つである日置流(へきりゅう)雪荷派(せっかは)の師範として大多喜藩に仕えた森家旧
蔵資料を所蔵しています。資料は日置流弓術系図、弓術の技を伝える弓術伝書などの
古文書をはじめとして、当時使用した弓、矢、矢尻など多彩なものばかりです。大多
喜藩に伝わった弓術をどうぞ御覧ください。
 でも、ちょっと危険です。皆さんの心を射貫いてしまうかもしれないからです。
(大多喜城分館 渡辺善司)
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3.イベント情報
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博物館での行事については、本館・生態園の臨時休館・休園などで実施できない場合
もございます。中央博物館トップページでご確認くださるようお願いします。

■春の展示 「うめ・もも・さくら」
開催期間:~6月28日(日)
会場:本館 第2企画展示室
内容:日本人にはなじみ深い、春を代表する植物です。今回の展示では、似ているよ
うでちょっとずつ違うこれらの植物について、標本や浮世絵を使い、科学的・文化的
側面から紹介します。

■チバミュージアムフェスタ2020~千葉県立美術館・博物館展覧会~
『「オリンピック・パラリンピック」と千葉のスポーツ史』
日時:~8月31日(月)
会場:本館 第1企画展示室
内容:オリンピック・パラリンピック大会と千葉県の文化に関連した資料を展示し、
千葉県との関わりについて紹介します。過去に日本で開催された大会についてだけで
なく、自然環境の移り変わりや競技会場でみられる生き物、スポーツ競技を支える県
内企業の技術力についても紹介します。

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 (1)中央博物館本館・生態園
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 ※開館日をご確認の上ご来館ください。開館日カレンダー↓
  http://www2.chiba-muse.or.jp/www/NATURAL/contents/1517539269054/index.html#kaikanbi

◆【講座・観察会】詳しくはこちら↓
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/NATURAL/contents/1520009714819/index.html

◆【ミュージアム・トーク】(研究職員による展示・資料解説) 
詳しくはこちら↓
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/NATURAL/contents/1520012270143/index.html

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(2)大利根分館 http://www.chiba-muse.or.jp/OTONE/ 電話:0478-56-0101
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 ※開館日をご確認の上ご来館ください。開館日カレンダー↓
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/OTONE/contents/1583194620541/index.html
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(3)大多喜城分館 http://www.chiba-muse.or.jp/SONAN/ 電話:0470-82-3007
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 ※開館日をご確認の上ご来館ください。開館日カレンダー↓
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/SONAN/contents/1582331048099/index.html


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4-1.トピックス 天然記念物とはなにか①
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 文化財課で、文化財行政に携わった時のことです。業務の引継ぎで、前任の方から
、「天然記念物ってわかる?」って聞かれました。「えっ?」と耳を疑いました。し
かし、改めて、天然記念物について勉強すると、自分が、何も知らなかったことに気
づかされました。天然記念物というのは、自然のものの中の貴重なものということに
は間違いがないのですが、文化財の一つであるということの認識がなかったのです。
「天然記念物は有形文化財なのか無形文化財なのか」でまじめに悩んだくらいですか
ら。
 文化財には、「有形文化財(建造物や美術工芸品)」「無形文化財(演劇・音楽・
工芸技術等)」「民俗文化財」「記念物」と「文化的景観」、「伝統的建造物群保存
地区」の6つの分類があり、天然記念物は「記念物」のなかに3つあるカテゴリー「
史跡」、「名勝」そして「天然記念物」の一つなのです。そして、その指定や取り扱
いについては、国でいえば文化財保護法、そして、県や市では文化財保護に関する条
例で決められています。天然記念物というのは、価値観というより、法令で決められ
ているものなのです。
 「〇〇地域にある××の大木がなくなりそうなので天然記念物として保護してほし
い」という声を聴くことがあります。かつては、私も「天然記念物などの指定によっ
て、生物や環境が護られる」という考えを持っていましたが、文化財行政を経験する
と、これは本末転倒であることに気づきます。ある時、文化財課の先輩が「文化財は
護るものではなく、護られるべくして護られるのだ」といった言葉が印象的です。名
勝(庭園や景観)や天然記念物(あるいはその他の文化財でも)の指定事務において
は、指定要件として、学術的価値のほか、保存の在り方が強く求められます。「護り
たい」ではなく、指定の際にすでに「護られている・護られる仕組みができている」
ことが重要です。天然記念物は保存のために指定するというより、国民や地域住民が
重要と考え、護られるものが、指定されるということです。だから、「このままでは
護られないので指定する」という考え方は成り立ちません。(ただし、指定から時間
がたって、保護できなくなった文化財もあり、文化財担当者はその保護に日々頭を悩
ませているのですが)
 文化財課で文化財行政に携わってから、旅行で各地の名勝や天然記念物をめぐるこ
とが楽しくなりました。(有形文化財もそうですが)行ってみると、「ほほう!」
「なるほど!」と唸るものがほとんどです。
 最近、千葉県で指定された「養老川流域田淵の地磁気逆転地層」は、「チバニアン
」という時代の名称が注目される一方、見ただけではその地層の価値はわかりかねる
のが正直なところです。しかし、世界中で、ほとんど海の底にあるはずの新しい時代
の地層が、千葉県の大地の急激な隆起によって、目の前(しかも丘陵地の中)にあり
、そこで地磁気逆転という地史に残る出来事があったということを理解すれば、「な
るほど!」という感じも出てくるのではないでしょうか。幸い、市原市や地域住民の
努力もあって、現地の保存体制は整ってきています。今後は、「チバニアン」という
地質時代の名前のついた場所というだけでなく、養老川周辺の地質的な魅力も含めて
、天然記念物としての価値の発信が期待されるところです。
(主席研究員兼教育普及課長 平田 和弘)

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4-2.トピックス チバニアンはどうすごいのか① ~日本の地学史に残る快挙
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4月より資料管理研究科に配属された奥田です。昨年まで地学研究科に在籍し、チ
バニアンの申請業務に携わってきました。当コラムでは数回に分け、『チバニアン』
とはいったい何で、どうすごいのかについて、なるべく分かり易く解説します。
 チバニアンをひと言で語るなら、「地球の時代のひとつに対し、初めて正式に付い
た日本語の名前」です。『正式に』とわざわざ断っているのは、非公式なニックネー
ムであれば「松山逆磁極期(まつやまぎゃくじきょくき)」というものがすでにある
からですが、専門的な言い方をするならば、「地質時代の命名権の一つを始めて日本
が得た」と言えるでしょう。では、それはどのくらいすごいのか。5年ほど前、ニホ
ニウムという新元素の発表があったことを覚えておられる方は多いかと思います。
2016年に理化学研究所が周期律表で113番目にあたる元素の合成に世界で初めて成功
し、新元素の命名権を得てニホニウム(Nh)としたのですが、あれと同じくらいすご
い成果がチバニアンです。ニホニウムが日本の化学史に残る偉業だとすれば、チバニ
アンは日本の地学史に残る快挙だと言えるでしょう。
 ところで「松山逆磁極期」とは、77万年前から258万年前までの地質時代につけ
られた名前です。世界で初めて地磁気逆転の理論を唱えた京都帝国大学の松山基範
(まつやまもとのり)教授を記念したもので、地質学上の正式名称というよりはニッ
クネームに近い点がチバニアンと異なりますが、どちらも磁場逆転という現象に深く
関係したものである点が同じです。
 なお、チバニアンと松山逆磁極期はどちらも、千葉県内の同じ場所で見ることがで
きます。市原市の田淵というところにある川沿いの崖です。一見、何の変哲もない崖
に見えますが、この崖がどうすごいのかについては、次回にお話いたしましょう。
(資料管理研究科 主任上席研究員 奥田昌明)
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5.研究室から-102「時の裏側」
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 大多喜城分館で受託していた資料に「大河内(おおこうち)正質(まさただ)寄贈掛時
計」があります。大多喜藩最後の藩主だった大河内正質が郷里の大多喜小学校へ贈っ
た掛時計です。振り子の蓋の「分陰須惜(分陰すべからく惜しむべし)」と題した四
言律詩に、子どもたちに対する正質の熱い思いを感じることができます。ある日のこ
と。時計を修理するため町の職人さんがやって来ました。何気に文字盤を外し、ヒョ
ロッとひっくり返すとそこには日付と時計屋さんの名前が。職人からすればそこに文
字があるのが当たり前なのでしょう。名前を見ながら「おっ、これは俺の親父だ」と
か「これはだれだれだ」はたまた「これは誰だかわかんねーな」とぶつぶつ呟く職人
さん。文字盤の裏からは、城下町として繁栄していたかつての大多喜町の様子をうか
がうことができましたが、やっぱり私の一番の感動は、時計職人は修理すると文字盤
の裏にその履歴を残すという「時の裏側」を知ったことでした。
(大多喜城分館 渡辺善司)
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●発 行
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 電話:043-265-3111 FAX:043-266-2481
 URL:http://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/
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