千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第185号
配信日時:2020/07/01 09:00
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第185号
                          2020年7月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
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 海の博物館は、十分な新型コロナウイルス対策を実施し、6月9日から通常の
営業時間で開館しています。ただし、各種行事については引き続き全て中止し
ています。事前申込制行事の受付も休止しておりますので御注意ください。

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│目次
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★大収蔵資料展「海博・お宝大集合!」が始まります(7/18~)
★夏休み期間中の臨時開館について
★新型コロナウイルス対策について
★観察会等の実施状況について(当面中止)
★当館研究員らが執筆した論文が"Zoological Science Award"を受賞しました
★研究員ノート -オシャレカクレエビの学名-
★海の博物館周辺の情報

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│★大収蔵資料展「海博・お宝大集合!」が始まります
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 平成31年3月に開館20周年を迎えた海の博物館。この20年間に収集された海の
生きものに関する貴重な資料=海博のお宝の数々を一挙公開します。ご期待く
ださい!
当館ウェブサイトでは順次展示情報を更新します。
●予告 令和2年度収蔵資料展 大収蔵資料展「海博・お宝大集合!」
(当館ウェブサイト)
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/UMIHAKU/contents/1592614955346/index.html

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│★夏休み期間中の臨時開館について
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 夏休み期間中は以下の日を臨時開館します。
 臨時開館日: 7月27日(月)・8月3日(月)・8月11日(火)・
               8月17日(月)・8月24日(月)・8月31日(月)
※7月21日(火)~9月6日(日)の間は無休です。

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│★新型コロナウイルス対策について
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 海の博物館は6月9日から通常の営業時間で開館しています。利用にあたって
は以下のお願いをしています。博物館では各種ガイドラインに則り十分な感染
防止対策を行っておりますが、皆様におかれましても引続き新型コロナウイル
ス感染拡大の防止に御協力をお願いいたします。

【入館に際してのお願い】
・状況に応じて博物館施設及び展示室への入場制限を行う場合があります。
・入館前に検温、体調等の確認をさせていただきます。
・入館にあたっては、入館確認票の御記入をお願いしています。
・入館確認票は事前に記入してお持ちいただくことも可能です。ウェブサイト
からダウンロードできます。
●入館確認票PDF形式(海の博物館ウェブサイト)
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/UMIHAKU/contents/1590451843661/simple/%E5%85%A5%E9%A4%A8%E7%A5%A8.pdf
・マスクを着用し、咳エチケットを心がけてください。
・こまめな手洗い、入口での手指の消毒をお願いします。
・他の方との距離を2メートル程度あけて御観覧ください。
・展示物、展示ケースにはお手を触れずに御観覧ください。
・館内での飲食はできません。

 【休止している主な展示・サービス】
・展示物に手を触れて利用するハンズオン展示
・研修室におけるマリタイムシネマの上映 
・顕微鏡等、目が接触する恐れのある展示
・団体受付(学校団体及び一般団体)
・当面の間の展示解説や観察会等の主催行事
・学習キットの貸出

【その他の感染防止対策】
・館内の椅子等について、一部利用を制限しております。
・入場券売場等に感染防止用バリアを設置しております。
・スタッフがフェイスガードやマスクを着用しております。
・館内をアルコール消毒しています。

なお、感染拡大の状況などにより変更が生じる場合がございます。
御了承くださいますようお願いいたします。

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│★観察会等の実施状況について(当面中止)
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 新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、当館主催行事ならびに団体か
らの依頼による磯観察等の行事は全て当面の間中止しています。それに伴い、
事前予約制の観察会等の行事の申込受付も休止中です。
 再開についての指針が定まりましたら、別途ウェブサイト等でご案内いたし
ます。
 磯のシーズンを楽しみにしていた皆様には大変申し訳ありませんが、再開は
今しばらくお待ち下さい。

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│★当館研究員らが執筆した論文が"Zoological Science Award"を受賞しました
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 Zoological Science Awardは、日本動物学会が発行する学術雑誌「Zoological
 Science」に掲載された論文のうち、 特に優れた研究に対して贈られるもの
です。
●Zoological Science Award(日本動物学会ウェブサイト)
https://www.zoology.or.jp/about/ohters/treatise

 この度、2019年度に掲載された論文に対して選考が行われた結果、2019年12
月に掲載された当館共同研究員で東京大学大学院の泉貴人氏(現琉球大学・
日本学術振興会特別研究員)と当館の柳研介主任上席研究員、鹿児島大学国際
島嶼教育研究センターの藤井琢磨博士、美ら海博物館の東地拓生氏、国立科学
博物館の藤田敏彦博士らによる論文「Redescription of Synactinernus flavus
 for the fist time after a century and description of Synactinernus
 churaumi sp. nov. (Cnidaria: Anthozoa: Actiniaria). Zoological
 Science 36: 528-538」の受賞が決定しました。
●2020年度 Zoological Science Award 授賞論文の決定について(日本動物学
会ウェブサイト)
https://www.zoology.or.jp/news/zoological-science-award-2020

 この論文のなかで新種として発表されたチュラウミカワリギンチャク
 Synactinernus churaumiは、美ら海水族館で飼育が行われていた個体に基づい
て記載されたものです。新種を発表する際には、近縁種等と比較して、これま
でに知られているどの種とも異なることを確かめる作業を行います。 しかし、
これらの近縁種が新種として発表されたのが19世紀終わりから20世紀初頭にか
けてであり、当時記された形態学的な特徴だけでは種を識別することが難し
かったこと、これらが深海に生息する種類であり追加標本を採集することが困
難だったことなどから、その分類は大変混乱していました。 そのため、チュラ
ウミカワリギンチャクが新種であることを確認するためには、これまでの既知
種についてDNA解析を含めた詳細な検討が必要でした。当館研究員は、過去に新
種として発表された近縁種のタイプ標本(新種発表に使用された標本)につい
て、それらが所蔵されているウプサラ大学進化博物館・ルンド大学動物学博物
館(スウェーデン)やロンドン自然史博物館(英国)、コペンハーゲン大学動
物学博物館(現デンマーク自然史博物館/デンマーク)などに赴き、これらの
形態学的な特徴を再検討するとともに、それらが当時採集された場所において
積極的に調査を行い、タイプ標本と形態が一致する標本の採集に努めました。
このような研究によって、正確に同定された生きた状態の標本に基づいてDNA
解析を行うことが可能となりました。その結果、チュラウミカワリギンチャク
が含まれるグループ(ヤツバカワリギンチャク科)の分類を再整理したうえで、
本イソギンチャクを新種として発表することができました。新種の検討に使わ
れたタイプ標本の一部は、当館に所蔵されています。
 なお、チュラウミカワリギンチャクは現在、沖縄県の美ら海水族館で飼育展
示されている様子を見ることができます。
●美ら海水族館お知らせ欄 (美ら海水族館ウェブサイト)
https://churaumi.okinawa/topics/1591664946/
 
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│★研究員ノート -オシャレカクレエビの学名-
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 新型コロナウイルス感染拡大を予防するための対策により、私たちの生活は
一変しました。当館も令和2年3月3日から6月2日まで臨時休館し、職員が在宅
勤務をする期間もありました。その臨時休館中、当館の刊行物である海の生き
もの観察ノートシリーズの15号として『千葉県でみられるカクレエビたち』が
出版されました。カクレエビの仲間は、かつてテナガエビ科カクレエビ亜科と
いう分類群にまとめられていましたが、現在は分子系統学的解析から主に淡水
産の種類で構成されていたテナガエビ亜科と識別することができなくなり、そ
れぞれの亜科を認める体系はなくなっています。旧カクレエビ亜科のエビ類は、
イソギンチャクやウニ、ヒトデなどの海産無脊椎動物に共生する種類が多く、
千葉県の浅海にもさまざまな種類がみられるため、それらを一堂に会したのが
本書です。以下の当館ウェブサイトからダウンロードすることができます。
●観察ノートNo. 15「千葉県でみられるカクレエビたち」(PDF 3MB)
http://www2.chiba-muse.or.jp/www/UMIHAKU/contents/1521849666827/simple/note15.pdf

 本書では掲載した各種に最新の学名を適用するなど、研究の新知見が盛り込
まれています。そのうちの一つが、オシャレカクレエビという種類の学名
を Cuapetes tenuipes としたことです。このエビは、カクレエビの名を冠し
ながら他の無脊椎動物とは共生せず、浅い海の岩陰などにくらす自由生活のエ
ビです。千葉県では安房郡鋸南町や館山市など、房総半島南部の東京湾側で見
つかっています。長い間、本種の学名には Cuapetes platycheles が使用され
ていました。しかしながら、色彩は違うのに形態のよく似た種類がいくつかい
るため、分類学的には問題ありとされている種類でした。分類学的な混乱が生
じた場合、確実な解決方法の一つは学名を担うタイプ標本など、過去の研究者
が実際に使った標本そのものを調べ直すことです。オシャレカクレエビの場合
、二人のイギリス人研究者の使った標本が再調査の対象となります。まずは動
物学者のボラダイルという人が1898年にパプアニューギニアから新種として記
載した Periclimenes tenuipes という学名の基準となる標本(ホロタイプ
)です。候補となる学名のうち最も古いものがこれです。次に、イギリスの植
民地だった時代のインドで甲殻類を研究したケンプという動物学者が 1922年に
P. tenuipes として報告した、インド洋のアンダマン諸島で採集された標本で
す。ケンプの記載はおよそ100年前の記載とは思えないくらいとても詳しく、
のちに多くの甲殻類研究者がこれを基準に P. tenuipes を認識していました。
 ボラダイルの研究した標本群は現在、ケンブリッジ大学動物学博物館に保管
されています。タイプ標本の再調査には標本を借り受けて調べる方法がありま
すが、同館のコレクション管理のポリシーとして、海外にタイプ標本を貸し出
さないことにしています。私は東京湾産のエビやカニのうち、個体数の激減
(地域個体群によっては絶滅)してしまった種と、かなりの個体数が生き残っ
ている種を把握するための研究をしています。昨年11月中旬から12月初旬にか
けて、日本学術振興会科学研究費(いわゆる科研費)の助成を受けて、主に明
治時代の東京湾産エビ・カニ類の標本を保管するドイツとイギリスの自然史博
物館を訪れました。その際、東京湾の甲殻類相を構成するひとつであるオシャ
レカクレエビの学名をはっきりさせるため、Periclimenes tenuipes のホロタ
イプを調べにケンブリッジまで足を運びました。古い大学都市を堪能すること
なく、研究室に閉じこもって標本の計測やスケッチを行った結果、オシャレカ
クレエビに適用すべき学名はボラダイルの Periclimenes tenuipes、現在は属
位を変えて Cuapetes tenuipes とすべきことが明らかになりました。
 また、ケンプの使った標本の一部はロンドン自然史博物館に保管されていま
す。古いコレクションが充実した分類学の殿堂とも言えるこの博物館には、明
治時代に横浜で採集されたエビやカニの標本が数多く保管されています。
今回、これらの標本を調査する合間にケンプの記載した標本も調べたところ、
何とケンプがこと細かに記載した標本は真の P. tenuipes ではなく、別種で
あることが確認できました。本来ならば、オシャレカクレエビの分類学的混乱
が氷解した今回の経緯をきちんと学術論文として公表した後に観察ノートに引
用すべきですが、先行してオシャレカクレエビの学名を正しいものに変更しま
した。
 千葉県は黒潮の影響を強く受けており、その原流域である熱帯アジアの海洋
生物と共通する種が少なくありません。地域の自然史博物館として動植物相を
調べる場合、今回学名を変更したオシャレカクレエビの例のように、まったく
別の場所から報告された証拠標本を調べ直す必要性が今後も出てくることで
しょう。また、今回の経験を元に、100年以上前の標本を大切に保管し、必要
に応じて調べることができる体制を保つことが自然史博物館の重要な使命であ
り、世界のスタンダードであることをさまざまな方面でPR していかなければ
ならないと強く思いました。
(主任上席研究員 奥野淳兒)

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│★海の博物館周辺の情報
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【観光情報】
・今シーズンの市内海水浴場(勝浦中央・鵜原・守谷・興津)は全て開設中止
となりました。博物館の前の海岸も含め監視所・ライフセイバーが配置されて
いない海岸での遊泳は非常に危険です。遊泳はお控えください。なお、勝浦以
外の千葉県内の海水浴場は全て開設中止が決定しています。
・市内飲食店でテイクアウト&デリバリー「STAY HOME #おうち時間 おうち
で勝浦の味を楽しむ」が始まっています。
●勝浦市観光協会ウェブサイト「勝浦のグルメ」
https://www.katsuura-kankou.net/%E9%A3%9F%E3%81%B9%E3%82%8B/
・勝浦朝市は通常通り(6時半頃~11時頃)開催されています。※水曜日と元
旦以外原則毎日開催。

【祭典情報】(前月号に引き続き掲載します)
鵜原大名行列(7月第4土曜日): 本年度は中止が決定しました。
勝浦大漁まつり(9月中旬): 本年度は例年二日目に行われている各地区の
神輿が揃う「合同祭典」の中止が決定しました。

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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうご
ざいました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
    http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU
お問い合わせはこちらへ umihaku@chiba-muse.or.jp
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