千葉県立中央博物館分館海の博物館メールマガジン バックナンバー
海からのたより 第193号
配信日時:2021/04/01 09:00
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  千葉県立中央博物館分館 海の博物館メールマガジン

 『海からのたより』 第194号
                          2021年4月1日発行

                 千葉県立中央博物館分館 海の博物館
                 http://www.chiba-muse.or.jp/UMIHAKU/
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 海の博物館は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、1月9日から臨時休館
しておりましたが、感染防止対策を講じた上で3月23日(火)から再開館しま
した。令和2年度マリンサイエンスギャラリー「ウミカラ -海の生きものの
殻の話-」も同日から開催しています。
 4月を迎え海の博物館は新しい体制で始動します。本年度もどうぞ宜しくお
願いいたします。

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│目次
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★マリンサイエンスギャラリー「ウミカラ -海の生きものの殻の話-」
★令和3年度主催行事のご案内
★研究員ノート -温暖化で勝浦の海藻がなくなる?-
★職員の異動
★海の博物館周辺の情報

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│★マリンサイエンスギャラリー「ウミカラ -海の生きものの殻の話-」
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「ウミカラ -海の生きものの殻の話-」開催中

海には、貝類やカニ・エビ類、ウニ類をはじめ、殻を持つさまざまな生きもの
たちが暮らしています。海の博物館の令和2年度マリンサイエンスギャラリー
「ウミカラ-海の生きものの殻の話-」では、海の生きもののいろいろなグル
ープにみられる殻のつくられ方や特徴を比較するとともに、多様性に富んだ殻
を持つ海の生きものたちを紹介します。

 会期は5月5日(水・祝)までの予定です。

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│★令和3年度主催行事のご案内
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令和3年度の主催行事については、新型コロナウイルスの感染状況によっては、
中止となる場合があります。

【観察会】研究員の解説を聞きながら、自然の中で生きものをじっくりと観察
する行事です。
対象は小学生以上(小学生は保護者同伴)、定員は各回10名となっています。

「海の生きもの観察ツアー」  講師 海の博物館研究員
海の博物館の前の磯を歩き、さまざまな海の生きものについて解説します。
時間:約1時間
開催日時:
5/15(土)11:30~  5/16(日)13:00~  5/27(木)11:00~
5/28(金)11:00~  6/12(土)11:00~  6/15(火)13:00~
6/25(金)10:30~  6/26(土)11:00~  7/10(土)10:30~
7/11(日)11:00~  7/13(火)12:30~  9/8(水)11:00~

「鵜原理想郷 花と歴史散歩」  講師 斎木健一
鵜原理想郷の遊歩道をめぐり、咲いている花と周辺の歴史的景観、自然景観を
解説します。
時間:約2時間
開催日時
4/25(日)9:30~  9/26(日)9:30~

【講座】研究員がスライドやビデオを使って、海の生きものや自然を紹介する
行事です。
対象はすべて中学生以上で、定員は8名となっています。

「磯で見られるウミウシを知ろう」  講師 立川浩之
海の博物館前の磯で見られるウミウシを紹介するとともに、探し方や観察する
コツも解説します。
日時:7/18(日)13:30 ~ 14:30

「イカを調べよう」  講師 柳 研介
イカの体のつくりを実際に解剖等を行いながら調べます。(令和3年度収蔵資
料展関連講座)
日時:8/1(日)13:30 ~ 15:00

「図鑑の使い方入門」  講師 斎木健一
○植物や昆虫図鑑の使い方を、図鑑で生きものを調べながら学びます。
日時:8/14(土)13:30 ~ 15:00

「 海の博物館の魚類標本が出来るまで」  講師 川瀬裕司
○海の博物館には約15,000 点の魚類標本が収蔵されています。これらの標本
がどのように収集され、標本として整理・保管されていくのかを紹介するとと
もに、その活用のされ方や意義について解説します。
日時:12/11(土)13:30 ~ 14:30

「アサクサノリの話」  講師 菊池則雄
○古く江戸時代から養殖され、乾海苔の代名詞として有名でありながら、今
や絶滅危惧種となっているアサクサノリという生きものについて紹介します。
日時:令和4. 2/26(土)13:30 ~ 15:00

「勝浦の甲殻類」  講師 奥野淳兒
○房総丘陵から勝浦海底谷まで、これまでに勝浦の川と海から収集された甲
殻類について紹介します。(令和3年度マリンサイエンスギャラリー関連講座)。
日時:令和4. 3/12(土)13:30 ~ 14:30


【観察会・講座の申込方法】
ひとつの行事ごとに、以下を明記の上、開催日2週間前必着で、海の博物館
あてにハガキ・FAX・電子メールのいずれかでお申し込み下さい。
※博物館ロビー受付でもお申し込みいただけます。
・記入事項(希望者全員の情報を記入)
1.氏  名
2.住  所
3.電話番号
4.年  令
5.ご希望の行事名と日時

【お申し込み・お問い合わせ先】
千葉県立中央博物館分館海の博物館
〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
電話 0470-76-1133 FAX 0470-76-1821
電子メール umihaku@chiba-muse.or.jp

※野外で行われる観察会は、保険料としてお一人50円が必要です。
※荒天等の事情により、中止または日程や内容が変更となる場合があります。
※新型コロナウイルスの感染状況によっては、中止となる場合があります。

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│★研究員ノート -温暖化で勝浦の海藻がなくなる?-
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 世界でも最も海藻の豊富な地域のひとつである日本には、1,400種以上の海
藻の生育が知られています。そして千葉県沿岸からはその3分の1以上にあたる
500種以上の海藻が記録されています。千葉県の太平洋沿岸は北から流れてく
る冷たい親潮と南から流れてくる暖かい黒潮の両方の影響を受け、全国でも海
藻が豊富な地域のひとつなのです。海藻がたくさん生えている場所は「藻場」
と呼ばれて、海にすむ動物たちにとって、住みかやエサ場、産卵場などとして
非常に重要な場所となっています。

 近年、日本全国の藻場が衰退し、ごく小型の海藻を除いてほとんどの海藻が
なくなってしまう現象が起き、漁業などに深刻な影響を及ぼしています。「磯
焼け」と呼ばれる現象で、大規模な磯焼けが起きると藻場を生活の場としてい
る動物たちもいなくなってしまいます。実際に、海藻をエサにしているアワビ
やサザエが全く獲れなくなってしまった海域もあるそうです。磯焼けの発生や
持続には、様々な要因が考えられますが、環境要因として最も懸念されている
のが温暖化です。温暖化によって海水温が上昇すると、もともと高温に弱い海
藻は弱ってしまいますし、水温が上がると海藻を食べる魚などの動物の摂餌活
動が活発になり、さらにたくさんの海藻を食べてしまうことで海藻が少なく
なってしまいます。その他にも温暖化による降水量の増加に伴って、洪水が増
え、沿岸域の濁りが増加して太陽の光を遮ってしまうなど、温暖化を元とした
海藻が減少する要因がいくつも考えられています。

 過去にも2007年9月の本メールマガジンのコラムに、「地球温暖化と海藻」
と題して、磯焼けの話を書いていますが、その中では、「千葉県ではまだはっ
きりとした磯焼けが確認されたという報告は見当たりません」と書いていまし
た。その頃に千葉県南部の館山市で見られた現象として、海底に小規模な磯焼
け状の場所が発生していることや、場所によってはコンブの仲間のアラメとい
う海藻の葉の部分が藻食魚に食べられて茎の部分のみとなった現象が見られる
ことが報告されていましたが、北海道や西日本などで見られる大規模な磯焼け
は認められていませんでした。また、海の博物館のある勝浦沿岸では、当時、
そのような状況は確認されておらず、コンブの仲間のカジメという大型の海藻
が群がって生える海中林が発達していました。勝浦は館山よりも親潮の影響を
受けておりますので、水温もやや低く、最近までこのような磯焼けに相当する
現象は確認できていませんでした。

 しかし勝浦でも、2019年の夏に、カジメの葉の部分がなくなり茎だけになっ
てたくさん生えている光景が、漁業者によって確認されました。これは、伊豆
半島あたりから西では、海藻を食べるアイゴなどを主とした魚によって引き起
こされる現象(アイゴの食害)であることが知られています。アイゴは東北か
ら沖縄までの主に暖かい海にすむ魚で、勝浦周辺でも網にかかったりしていま
すが、これまでカジメが茎だけになるような食害を及ぼしていることは確認さ
れていませんでした。また、2019年も実際にアイゴの食害が原因なのかどうか
は不明でした。

 そして、昨年10月。展示用の魚を採集しに近くの漁港へ行った私は、見慣れ
ない小魚の群れが、波打ち際の岩についた小さな海藻を盛んについばんでいる
光景に出会いました。何の魚かと思って網ですくってみると、実際に見たこと
はありませんでしたが、どう見ても図鑑で見るアイゴの幼魚。そのまま磯を歩
いてみると、海岸線沿いに点々とアイゴの幼魚の群れが見つかり、盛んに海藻
をついばんでいました。そもそも勝浦で9~10月頃に磯に行ってアイゴの幼魚
を見たことなどなかったので、びっくりしてしまいました。これらの幼魚が全
て成魚まで成長したとしたら、勝浦の海藻は相当の打撃を受けると思われま
す。また、多数のアイゴの幼魚が生まれるには周辺にそれなりの成魚が生息
していると考えられますので、2019年のカジメが茎だけになった光景の原因は
やはりアイゴなのか?と思いました。

 アイゴの幼魚がたくさん見られた原因として考えられることは冬が暖かかっ
たことです。2019年から2020年にかけての冬は、勝浦近辺は記憶にないほど暖
かく、気象庁による観測データを見ますと、2020年1月と2月の月平均気温は、
2001年からの20年間では最も高くなっていました。水温のデータの比較は行っ
ていませんが、水温も高かったのではないかと推測されます。暖かい海に多い
アイゴは実験では10~13℃程度で死んでしまうことが知られています。少なく
とも10年くらい前までは、勝浦周辺で冬季に水温が13℃以下に下がる日が頻繁
に記録されていたことから、通常、アイゴは冬には死んでしまっていたのだと
思われますが、冬の水温が高まれば生き残る率も高くなり、卵を産む機会も増
えると考えられます。今後、気温・水温の変化とアイゴの幼魚の出現を毎年確
認して行くと、関係性がわかるかもしれません。

 いずれにせよ、勝浦のカジメが茎だけになった現象の要因がアイゴの食害と
なれば、温暖化の影響と思われる現象がはっきりと確認できたことになります
ので、大変衝撃的でした。少なくとも今後の推移を継続的に確認していく必要
があるものと思われます。しかし、磯焼けの対策は簡単にできるものではなく、
長期的な視点での取り組みが必要となります。さらにその原因が温暖化となる
と、とても一朝一夕に何とかなるものではありません。果たして私たちに何が
できるのか? 大変難しいことではありますが、常に対策を考えて行かないと、
勝浦周辺でも温暖化で海藻がなくなってしまったということが起きてしまうか
もしれません。

(主任上席研究員 菊地則雄)

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│★職員の異動
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転入 庶務: 宇津木規之
退職 庶務: 近藤佳純,高木慎哉(2月末退職)

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│★海の博物館周辺の情報
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【観光情報】
・勝浦朝市は通常どおり(6時半頃~11時頃・水曜休み)開催されています。

↑最新情報を確認して追加項目があれば加筆します
↓最新情報を確認して必要に応じて修正します

・GoToトラベルキャンペーンの停止について
現在キャンペーンは停止中です。再開のスケジュールについては今後の発表等を
御覧ください。勝浦市内のGoToキャンペーン(トラベル・イート)参加施設は以
下のサイトでご確認いただけます。
勝浦市観光協会GoToキャンペーンサイト https://www.katsuura-kankou.net/goto/

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 今月も、海の博物館メールマガジンを最後までお読みいただきありがとうご
ざいました。

発行  千葉県立中央博物館分館 海の博物館
連絡先 〒299-5242 千葉県勝浦市吉尾123
    電話:0470-76-1133 FAX:0470-76-1821
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